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授業の内容(Course Description) |
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金融論特講 II は、春期講義の金融論特講 Ⅰと同様に「信用代位」の高度形態としての「証券代位」に焦点をあわせ、金融市場と証券市場の関係を総合的に検討する。そのための題材として引き続き中国・東欧などの移行期経済体制を対象にするだけではなく、近代中国の封建的性格の残存する金融システム、さらに1920年代後半から30年代前半に至るアメリカ金融・資本市場の構造ついても検討する。この最後のテーマは古典的著書、ウィーン学派のF.マハループの『株式市場・信用・資本形成』(千倉書房、1970年刊)を取り上げる。資本主義の高度化と共に、証券市場とそこで機能する証券取り扱い資本の役割がますます重要となり、これらの新しい経済現象を如何にして経済学の中に体系的に包摂していくのか、が本書の課題であった。ここでは、ケインズの流動性選好説への疑問が提起されるだけでなく、証券市場の構造を実物市場と金融市場と関係付けて構造的に、また景気循環や金融政策などとの関連を踏まえて究明している。講義と輪読を併用して進める。また、事情によっては履修者の要望応じて内外の文献を加えて授業を深みのあるものにしていく。
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授業の到達目標(Course Objectives) |
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金融論特講 Iと同様に金融システムは各国固有の特殊性を有することについて、各国の経済事情を踏まえ理論・歴史・政策の観点から理解することをねらいとする。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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レポートと出席などの平常点による総合評価
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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赤川元章「近代中国とドイツ・アジア銀行」『三田商学研究』(第51巻1号、2008年4月) 赤川元章「チェコスロバキアにおけるバウチャー方式民営化の構造と問題点」『三田商学研究』(第47巻3号、2004年8月) F.マハループ著『株式市場・信用・資本形成』(千倉書房、1970年刊)
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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秋期講義(金融論特講 I)と併せて履修することが望ましい。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 はじめに(講義内容の紹介) 【第2回】 近代における中国とドイツの関係(山東半島とドイツの植民地化) 【第3回】 中国の伝統的な国内取引システム―買弁とは何か 【第4回】 外国銀行と半封建的な中国金融システム 【第5回】 バウチャー方式民営化の具体的展開と問題点―チェコスロバキアを中心に 【第6回】 脱共産主義体制とコーポレート・ガバナンス 【第7回】 チェコにおける金融市場と証券市場 【第8回】 中・東欧諸国とEU諸国の経済関係―通貨・金融システムの観点から 【第9回】 1920年代後半から30年代前半に至るアメリカ金融・資本市場 【第10回】 マハループによるウィーン学派の概念と諸問題―経済学体系と証券の関係 【第11回】 実物市場・金融市場・証券市場の構造関係 【第12回】 証券市場と景気循環 【第13回】 金融政策と景気循環 【第14回】 まとめ(1) 【第15回】 まとめ(2)
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