Web Syllabus(講義概要)

平成21年度

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観光資源論B 石井 昭夫
選択必修  2単位
【観光経営】 09-1-1130-0035-04

1. 授業の内容(Course Description)
 産業における「資源」とは、生産活動のもとになる有形無形の必要物を指します。そして、この資源問題こそ、観光産業が特異な産業であることを示す要素です。観光産業では、他産業では全く経済的価値を生まない、ただの砂浜や山岳地、絶海の孤島までが観光資源になり得ます。昨今では地吹雪ツアーとか零下40度の極寒の世界、はては都市のスラムとか宇宙までもが観光の対象として価値を生みつつあり、極端に言えば、観光資源になり得ないものはないといってもいいくらいです。
 また、他産業なら、他の目的で占有されている土地や空間は使用できませんが、観光では、農地や工場、歴史的建造物や町並みなど、すでに使用されている土地や空間を観光資源として活用することも可能です。ただし、実際にそれらを観光資源として利用するためには、人に認知されることが必要であり、そこに至るアクセスやそこでの滞在を可能にする宿泊その他の諸サービスが整備されなければなりません。
 こうした特性から、観光資源とは何かを考察し、いかにして資源を発掘し、認知させ、観光商品として有効活用するか、といった資源論は、そのまま観光開発論、観光振興論、観光マーケティング論へと展開せざるを得ません。
 したがって「観光資源論A B」を通じ、観光現象の独特のメカニズムを解説し、「観光資源」という視点から、広く観光政策論、観光公共事業論、観光開発と環境保護、観光振興論について論じます。ただし、観光マーケティングは同じ教員が「観光マーケティングA B」という別の講義を担当するので、マーケティングに係る議論はそちらに譲ります。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 観光資源論Bでは、主として観光資源の開発の効果と影響についてとりあげます。現在の観光開発論の最新の展開を紹介し、観光開発と経済、観光開発と自然環境、観光開発と文化社会環境との関係を学びます。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 定期試験80%、平常点(主として出席状況)20%の配分で評価します。出席確認は、2回に1回程度不定期に行なう小テストによります。この小テストは出席確認のみならず、講義に関連するテーマを随時取り上げて講義内容を補い、かつ、受講者とのコミュニケーションを目的に実施するものです。小テストの成績自体は成績評価と関連しませんが、一部平常点に加味することがあります。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 *テキスト:適宜プリントを配布します。
 *参考文献:授業において適宜紹介します。
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 小テストの末尾の「教師への通信欄」に質問やコメントを積極的に記入することを奨励し、これが授業の改善やディスカッション(質疑)につながることを期待します。
6.
授業の計画(Course Syllabus)
 「観光資源論B」では、観光資源は、観光が発展するにつれて劣化しやすいという観点から、「観光開発の理論」とサステイナブル・ツーリズムに力点をおいて、先進的な理論を紹介します。
 授業の流れはおおむね以下のとおりですが、進行の状況によって変更することがあります。
【第1回】
 *授業の方針と講義の概要
 *観光開発概論
【第2回】~【第4回】
 *観光開発の効果と影響、観光地の評価方法
【第5回】~【第7回】
 *サステイナブル・ツーリズム(1):
  ・観光開発論の系譜:ドフェールとクリスタラー
  ・プロッグ、バトラー、ジャファリ、など
【第8回】~【第10回】
 *サステイナブル・ツーリズム(2):
  ・観光開発と自然環境
  ・自然環境への影響を緩和する方法
  ・キャリング・キャパシティ
  ・変化の許容限界(LAC)
【第11回】~【第13回】
 *サステイナブル・ツーリズム(3):
  ・観光開発の成長管理
  ・観光分野のエコラベル
  ・観光産業のためのアジェンダ21
【第14回】
 *途上国の観光開発、観光分野の国際協力
  ・観光地の健康診断と処方箋、など
【第15回】
 後期総括と定期期末試験案内
 *前期同様、講義テーマに即した事例を取り上げ、映像等を利用して理解しやすいよう配慮する。