Web Syllabus(講義概要)

平成21年度

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社会保険法B 中江 章浩
選択  2単位
【法律】 09-1-1210-0382-02

1. 授業の内容(Course Description)
 生殖を行い、個体数を増やすのが生物の基本であると考えられてきましたが、現在、ほとんどの先進国で、出生率が2を割り込み、人口減少社会になっています。特に、日本の出生率は、1.3前後で低迷しています。しかも、明治維新以来、人口急増社会が1世紀半も続いてきたため、社会構造のすべてが人口増を前提に作られていますので、制度と実態のミスマッチが、深刻な問題を生み出しています。人口減少が一概にいけないとは言えないとは思いますが、発展という見地から考えれば、極端な人口減少は、食い止めなければならないことだと思います。人口減少を食い止めるためには、少子化の真の原因は何かを、歴史的・社会的にじっくり考える必要があります。そこで、本講座では、子供に関する法律や仕事上の病気回復(労災保険)のあらましを学習します。また、内容は中江ゼミ(総合法学特講)に直結し、全学部の方が受講できますので、ふるってご参加ください。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 児童福祉と労災の概要と問題点について理解する
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 中間レポート、期末レポートで評価
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 『21世紀の社会保障』(中江章浩著 第一書房)、『社会福祉エッセンス(第2版)』(中江章浩他著 自由国民社)、『トピック社会保障法(第2版)』(中江章浩他著 不磨書房)、『日本のNPOシステム』(中江章浩著 エヌピ−通信社)、『どうなる年金こうなるくらし』(中江章浩著 長崎出版)、『日本のなおし方』(中江章浩著 信山社)など
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 授業は自分なりに誠心誠意やるつもりですが、わざわざ聴講する程の価値があるとは思えませんので、出席はとりません。遅刻・早退も自由です。ただし、考えるための道具として法律の条文を使いますので、出席する場合は関連条文を持参してください。
6.
授業の計画(Course Syllabus)
○クリニックは会社と同じく一人で作れるが税金が高く、福祉施設は一人では作れないが税金が安いのはなぜか
 ―キーワード―
法人 民法改正 一般法人法 公益認定法、中間法人と営利の意味 商法改正 会社法 持分会社 一人法人 法人税率 公益法人 公共法人 公益事業 特定医療法人 特別医療法人 特許 許可 認可 認証 届出 自由設立主義 官の仕事 役所と法人の関係、
○福祉施設を経営する事業は、国の仕事か
 ―キーワード―
救護施設や更正施設 法定受託事務 自治事務 機関委任事務の廃止 地方分権推進法 一部負担金減免の可否 相談業務 社会福祉協議会 民生委員 代表権 第一種社会福祉事業 障害者更正施設
○福祉の理念は欧米ではどのように作られてきたか
 ―キーワード―
黒死病 教区委員 慈善組織協会 貧困線 ベバリッジプラン マーケットバスケット方式 エリザベス救貧法 社会調査 ナショナルミニマム ビスマルク ベバリッジ報告 米社会保障法
○福祉の理念は日本ではどのように作られてきたか
 ―キーワード―
無告の窮民 人足寄場 方面委員 反射的利益 GHQ 恤救規則 救護法 国民皆保険 福祉元年 社会福祉基礎構造改革
○福祉を所管する厚生労働省・県庁はどのような仕組みで動いているのか
 ―キーワード―
社会福祉事務所 社会保険事務所 社会福祉主事 民生部 保健福祉センター 社会福祉協議会 民生委員 代表権 第一種社会福祉事業 身体障害者更正施設 社会福祉法人 社会福祉法 特別法人 三位一体 補助金と負担金 厚生保険特別会計 財政投融資 財政法と会計法
○福祉施設をいつまでたっても作らない県を相手に裁判を起こせるか
 ―キーワード―
不作為 立法不作為 行政事件訴訟法と行政不服審査法 住民訴訟と抗告訴訟 訴願前置主義
○医事法:臓器移植のために、臓器を求めて、世界を駆け巡るジャパンマネーは正しいか
 ―キーワード―
人工移植(implant)、生体移植、和田心臓移植事件、角膜及び腎臓の移植に関する法律、臓器の移植に関する法律、臓器提供意思表示カード、15歳未満の子供の脳死後の臓器提供、移植年齢の下限を15歳から12歳に緩和、患者の意思が不明でも家族が同意すれば、移植施設、
○医事法:脳死は本当に人の死なのか
 ―キーワード―
脳・心臓・肺すべての機能が停止した場合(三兆候説)、脳幹機能の停止、「植物状態」「植物人間」、経管栄養、脊髄自動反射、長期脳死、
○医事法:末期癌の父親の様子があまりにも苦しそうなので、直る見込みも無いからと思って、人工呼吸器を医師にはずしてもらったら罪になるか
 ―キーワード―
違法性 客観的違法性 実質的違法性 結果無価値 違法性阻却 正当行為 正当防衛 緊急避難 被害者の同意 有効な同意 同意の有効要件 同意暴行 推定的同意 危険の引受け 実質的違法性阻却 嘱託殺人 自殺幇助 消極的・間接的・積極的安楽死 尊厳死 オランダ安楽死法 生涯医療費 高瀬舟 ラマ教 脳死 存在そのものの意義 コスト意識
○医事法:明治期に作られた伝染病予防法と平成になってから作られた感染症予防法は何が違うのか
 ―キーワード―
人権保障 北里柴三郎 コレラ ペスト コッホ 1類感染症 検疫感染症 ウイルス性出血熱 ウイルス肝炎 キャリア C型肝炎 事前対応型行政 検疫所 港湾衛生業務 予防接種 健康被害救済制度 国立感染症研究所
○仕事をくびになったらどうするか
 ―キーワード―
雇用保険 求職者給付 給付日数 高齢者雇用継続給付 雇用保険3事業 中野サンプラザ 育児休業・育児給付と介護給付 育児給付の増額
○児童:インフルエンザの予防接種で、たまたまアレルギーにより急死した3歳児は、誰にどんな請求ができるか
 ―キーワード―
予防接種禍事件:過失の推定、国賠法、損失補償、谷間の救済、賠償・保障・補償、違法無過失の取り扱い、自賠責、刑事補償、損失補償、責任保険・損害保険・社会保障の関係、賠償・補償・保障・保証の関係、
○児童:受験勉強がつらくて発作的に自宅に火をつけた結果、寝ていた両親を焼死させてしまった中学生は牢屋に入るべきか
 ―キーワード―
非行少年 刑事処分 家庭裁判所 審判 刑事処分相当 検察官送致 起訴 違法性 責任 刑の適用と執行 起訴 非行少年 国家賠償法 不法行為責任 児童福祉法 付添人
○児童:女性の社会進出が進むと出生率は低下するか
 ―キーワード―
少子化対策、社会保障の意味:投資・負担・社会統合、『福祉資本主義の三つの世界──比較福祉国家の理論と動態』 エスピン=アンデルセン 、育児休業法、ワークシェアリング、ワークライフバランス、児童手当、相関係数の変化、
○児童:中国人未婚の母の子は、日本人である父親の認知で、日本国籍を取得できるか
 ―キーワード―
児童扶養手当法:認知の効果、認知後の手当打ち切り、国籍と認知、遡及効と認知、国籍法2条・3条、最高裁の判例変更、生地主義と血統主義、
○児童:繁盛している駅前の無認可保育所に補助金を出してもよいか
 ―キーワード―
保育所とバウチャー、公金支出制限と公の支配、婚外子の相続とPACS、需要と供給から見た官民グラフ、憲法89条、少子化対策基本法、
○児童:世の中を悪くしているのは官僚であると思いつめて、厚労次官を襲撃してしまった中学生は牢屋に入るべきか
 ―キーワード―
非行少年 犯罪少年・触法少年・虞犯少年、児童相談所 少年法 違法性 責任 刑の適用と執行 起訴 国家賠償法 不法行為責任 児童福祉法 付添人 刑事処分 家庭裁判所 簡易送致、仮出獄、保護観察、刑事処分相当 検察官送致、逆送 刑務所 少年院、少年鑑別所、保安・保護処分、保安処分についての一元主義・二元主義の根拠
○労災:うつ病で自殺した会社員は、労災の給付を受けられるか
 ―キーワード―
うつ病自殺、会社に対するテロによる負傷、日本人全体に対するテロによる負傷、本人の大ポカによる負傷、附則64条、自賠責、刑事補償、損失補償、責任保険・損害保険・社会保障の関係、賠償・補償・保障・保証の関係、地下鉄サリン事件、
○労災:懲らしめてやろうと殴りつけたところ、偶々動脈瘤があったため、打ち所が悪く相手が死んでしまった場合、どんな罪になるか
 ―キーワード―
結果的加重犯 結果無価値 新過失論 因果関係 相当因果関係説 折衷的相当因果関係説 不作為犯の因果関係  疫学的因果関係 因果関係中断論 条件説 賠償すべき範囲
○労災:障害年金がもらえる場合、労災の給付どうなるか
 ―キーワード―
損益相殺:障害厚生年金と労災の優劣、政府の求償権、故意犯と給付制限、三共自動車事件、代位取得、保険代位、求償権、責任保険、
○労災:通勤途上で病院で診察を受けても、その後は、また労災の適用を受けられるのはなぜか
 ―キーワード―
通勤災害の要件・逸脱中断・日常生活上必要な行為・駅伝部に顔を出す行為、労災法7条の適用、単身赴任と通勤、業務災害、給付基礎日額、療養補償給付、休業補償給付、傷病補償年金、支給制限、費用徴収、労働福祉事業、特別加入、通勤災害の逸脱中断の具体的適用、請求権の競合、
○労災:仕事で怪我をしたり、死んだりしたらどうするか
 ―キーワード―
労災保険と医療保険、特別加入、通勤災害、1973年改正、療養補償給付、因果関係、客観的帰属、業務の遂行性と起因性、アスベスト被害補償