Web Syllabus(講義概要)

平成21年度

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法政策学A 八木 欣之介
選択  2単位
【法律】 09-1-1210-0682-11

1. 授業の内容(Course Description)
 皆さんには、この法政策学という学問は、いささかなじみの薄いものかと思われる。これまで、大学の法学部で開講されている法律科目のほとんどは、憲法・民法・刑法等の、既に存在する法律について、その解釈や運用を論ずるものであった。それに対し、法政策学は、既にある法律について考えるのではなく、これからどのような法律を作るべきかを論ずるものであり、立法の過程や、法政策の立案の方法、立法の内容・表現のあり方等について研究するものである。
 このような法政策学というものは、あまりにも広範囲でつかみどころのない話のようにも思われるだろう。また、法律学を学んでいる諸君にとっても、自分たちの問題ではなく、政治家や官僚たちのしごとと思っている向きもあるかもしれない。
 しかし、法は、必ずしも、既につくられたものあるいは上から与えられるものではない。近年話題になっている地球温暖化への対応や、ごみ処理やリサイクルの推進、年金改革や少子化問題、教育再生やいじめの問題、食の安全や食糧自給の問題など、どれをとっても、われわれ国民の一人ひとりに直結する身近な問題である。このような問題の解決に当たって、政策を立案するためには、何らかの法令の制定や改正が必要であるが、こうしたことを、すべて政治家や官僚まかせにすることはできない時代になっている。
 今の時期は、戦後60年続いた我が国の法制度の変革期に当たっている。これまで行われてきたさまざまな法律が機能不全を起こし、抜本的な改革が求められている。このような時期に、若い皆さんが既存の法についての解釈を学ぶのみでなく、立法の現状を認識し、新しい法制度の設計のため、立法政策のあり方について学ぶことの意義は大きいものと思われる。
 今学期の法政策学Aでは、まず、立法の現状や、立法の過程、政策立案の手法などの立法学の基礎的な問題についてその概要を学ぶとともに、受講者各自が関心を有する個別の政策課題について、具体的な法制度の設計を試みることとしたい。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 とりあえずの目標として、法令の立案ということを、私たちに身近な問題としてとらえることができるようになってほしいと思う。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 成績評価は、授業への参加状況とレポートにより行う。期末試験は行わない。
 毎回の授業において、その授業内容に関連する質問を出して回答を求めることにより、授業への参加の状況を把握する。
 一定以上欠席した者には、単位が認められないので、あらかじめ注意しておく。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 毎回配布するレジュメ・資料等に基づいて授業を行う。
 最近、法政策学あるいは立法学に関する書物がかなり出版されているが、この授業に有用な参考文献については、授業において紹介する。
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 履修者は、毎週、必ず始業時間に遅れないで、授業に出席すること。
 この授業は、一般の学生諸君には、あまりなじみのない内容のものであろうと思われるうえに、適当な教科書も存しない。また、その習得に体系的な知識の積み重ねを要求される性質のものである。そのため、授業内容を理解し、法政策学を習得するためには、毎週出席してまじめに受講することが必要である。
 毎回の授業への理解程度と出席状況の把握のため、授業中に簡単な課題を出し、意見の提出を求める予定である。
6.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 イントロダクション―法政策学と立法学
【第2回】
 立法の現状(1)―立法の量的拡大
【第3回】
 立法の現状(2)―立法の質的変化
【第4回】
 立法の機関
 ―国会・政党・内閣・官僚・NPO・国民等
【第5回】
 立法の過程(1)
 ―内閣提出法案の立案の過程
【第6回】
 立法の過程(2)
 ―議員立法と国会審議
【第7回】
 立法の過程(3)
 ―立法過程の実例分析
【第8回】
 立法過程の改革
【第9回】
 法令の体系
【第10回】
 法令の立案(1)―法令立案の流れ
【第11回】
 法令の立案(2)―法令立案の留意事項
【第12回】
 法制度設計の試み(1)
【第13回】
 法制度設計の試み(2)
【第14回】
 法制度設計の試み(3)
【第15回】
 総括的検討