Web Syllabus(講義概要)

平成21年度

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言語文化講読 I 冲永 荘八
選択  2単位
【日本文化】 09-1-1310-0126-01

1. 授業の内容(Course Description)
 この授業では心が抱える哲学上の問題について扱う。哲学上の問題とは、自然科学的な問題とは区別される。例えば、特定の光の刺激に対して脳のどの部分が興奮するのか、またはある精神的な疾患がどのようにすれば治療できるか、という問いは自然科学的である。それらへの答えを立証する有意味なデータが存在するからである。しかしなぜ脳の特定の部分が興奮すると、見えるという感覚が生じるのか、もしくはなぜこの意識が存在するのか、という問いは哲学的である。それらに答えるためのデータがないからである。しかし心はこうした哲学的な問いに常にさらされている。心は確実にあると思われる一方で、それを見ることも確かめることもできないからである。前期セメスターでは因果と自由意志の問題を扱う。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 心の哲学的な基本問題を解説した、わかりやすい日本語テキストを用いながら授業を進める。そのテキストを精確に読み、内容を理解し、何が問題なのかを把握する力を養うという、極めてオーソドックスことが目標である。日ごろからひたすら読んで考えるという、スポーツで言えばランニングのような基礎トレーニングの積み重ねを行い、学問の底力をつけてゆくことを目標とする。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 期末に試験またはレポートを課す。出席は基本的に毎回とる。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 プリントにて配布する。
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 授業は理解しにくい面もあるかもしれないので、根気よく、粘り強く受講して頂きたい。
6.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】・【第2回】
 心の哲学の基本問題についての概観。クオリア問題、自我存在、自由意志、他我問題と独我論、心身問題など。
【第3回】~【第7回】
 心的因果の問題について。因果は存在しないとするヒュームの学説を確認、ヒューム『人間本性論』の抜粋を講読。
【第8回】~【第12回】
 自由意志は存在するか。決定論と自由意志の立場に関する歴史的な概観。特にカントの現象界における決定性と、叡智界における自由との区分。
【第13回】~【第15回】
 サールにおける自由意志論。志向性との関係で。選択的自由と非選択的自由との相違に対する、意志的な自由と非意志的な自由との相違の関係。