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授業の内容(Course Description) |
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【文化研究への招待 ―― 近代文学作品を窓として――II】 ●文学者の言説を窓にして… 萩原 朔太郎は一般的には口語自由詩の完成者としてしられている。が、これは彼のほんの一面に過ぎない。音楽・映画・舞台・哲学・宗教・社会学など多くの分野にわたって非常に興味深い言説を残している。彼を総体として論じることは、近代文学史はもちろん、社会・文化史まで展望できる足がかりを獲得することにつながるだろう。 ●二つのテーマ ここでは特にキーワードを《個人主義》と《近現代日本人の恋愛観》という二つに絞って考えていくこととしたい。秋学期では、前期の内容を踏まえつつ、この120年間の間に変動した男女の関係性の磁場について考えていくこととしたい。具体的には、明治大正期から現代にかけての恋愛詩、或いは恋愛を扱った歌詞作品を横断的にみていくことで、その社会的な背景についてを探ってみることにする。前期同様に当時の資料や文献、そして実際の学術論文にも多数に当たって資料収集・整理法・論の組み立てといった研究の方法論にまで言及することも行いたい。
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授業の到達目標(Course Objectives) |
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・文献を窓にして当時の文化・社会状況を探る姿勢を身につけることを目標とする。くわしくは教室で。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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出席点(70%)+レポート(or試験)など(30%)で算出。私語など他の学生の迷惑となる行為・無断中途退出には厳正に対処するのでそのつもりで。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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プリントを中心とする。詳細は授業中に発表する。
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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例年通り、わからないことは遠慮なく質問してほしい。それが次の授業をくみたてるときのヒントになるので。ただ聴講するだけでなく、ともによい授業を作っていけたら、と思う。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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☆以下の3点についてご了承下さい。 ・授業計画はあくまで概説なので不明な点もあるかと思いますが、詳細は教室で解決できるのでお待ちください。 ・教室の理解度に応じて、授業の進度が多少変動することがあります。 ・講義改良のため、予告なく授業内容を変更する場合があります。特に後期授業の展望は、通常では前期授業終了の段階で明確に見えてくるものなので、ここに記された内容はあくまでも昨年の内容に基づいた骨子に過ぎないことをあらかじめお断りしておきます。 【第1回】 ●後期ガイダンス(授業の進め方) 【第2回】 ●前期の復習 提出されたレポートの内容を紹介しつつ、前期の復習を行い、後期の準備とする。レポートの書き方についても実戦指導する。 【第3回】 ◎第二詩集『青猫』の問題 前期に引き続き、朔太郎の特に女性への憧れを歌った作品に注目していきたい。当時の文化風俗(遊郭や芸者など)へも映画作品を見ながら言及したい。参考作品『吉原炎上』(五社 英雄)、『あなたの知らない世界』(相原 コージ)など。 【第4回】 ◎第二詩集『青猫』の問題 『青猫』の中心テーマである「宿命論」について考えてみたい。人生は意志で動くのか…。それとも宿命が全てを決めるのか…?哲学者ショーペンハウアーにも言及する。 【第5回】 ◎『青猫』作品の転換 詩作品すべてに作者の実生活を重ねて論じることは多少問題があるのだが、『青猫』作品には朔太郎の生活と連動するものが多い。研究論文に当たりつつ検証しよう。 【第6回】 ○《意思》の覚醒《情緒》の別れ それまで内向的だった朔太郎の意識が外部に向けて《怒り》を放つほどに変化する。この変化のありさまを『青猫』以降の作品から見ていくことにする。昨年は、長渕 剛、イースタンユースにも言及した。 【第7回】 ○《乙女》を歌った詩の行方 この意識の変化と同じころ、朔太郎の女性を歌う作品にも大きな転機が訪れた。当時の女性雑誌の記事創刊当初の『婦人公論』などに基づき社会的背景まで見通すこととしたい。 【第8回】 ◎昭和初期の恋愛詩について 朔太郎のこの時期の恋愛詩だけでなく、大正末期から昭和初期の詩人の書く恋愛詩全体を見ながら、男女の置かれた状況を考えてみることとしたい。 【第9回】~【第11回】 ◎現代の恋愛詩について①~③ 前回考えた問題は、現代のヒット曲にも地続きのものである。今回と次回は現代詩・歌詞すべてに視野を広げてその全貌をとらえることとしたい。 昨年言及した詩人とクリエイターを参考までにあげておく。 詩人:島崎 藤村 高村 光太郎 萩原 朔太郎 伊東 静雄 立原 道造 クリエイター:小田 和正 吉田 美和 花*花 トータス 松本 槙原 敬之 川本 真琴 矢井田 瞳 aiko 大塚 愛 根本 要 小林 武史 櫻井 和寿 稲葉 浩志 【第12回】 ●学年末のまとめ 朔太郎の晩年の思想を読みつつ、この一年間別々のテーマとして扱った問題を統一して整理してみることとしたい。個人主義・キリスト教・男女の社会的磁場の問題・昭和初期の日本の右傾化・・に対して彼はどのような意識を持つにいたったのか?ここでの問題は、現代の日本でも決して解決されずに持ち越されているということに自然に気づけば、この一年の全体の内容はかなり深く理解できたはずである。ご苦労様でした。 【第13回】・【第14回】 進度調整のための予備時間 【第15回】 まとめ
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