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授業の内容(Course Description) |
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我が国の近代思想の様相を捉えることは、それほど簡単なことではない。第一に、近代より前に豊かに蓄積されてきた日本思想と、輸入された近代思想との、融合ないし葛藤の問題がある。思想は言葉でしか表現できないのみならず、語り手の側にアイデンティティの危機が生じているために、適確な読解は難しい。そして第二に、しかもその思想たるや、率直にいって、幕末以来の対外的な脅威に対処するため、必要に迫られて外から導入された「道具」たることを否定できない。それゆえそこには、純粋な思想の問題だけでなく、常に策論的な側面がつきまとう。語っている人物が実際に成したことを見ずには、思想の真意は掴めないのである。
このような観点から今年度は、思想家・兵学者・志士であり、松下村塾で高杉晋作や伊藤博文など俊傑たちを育てた教育者としても知られる吉田松陰の、思想の展開と実践を軸に、日本における近代思想の問題について考察したい。
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2. |
授業の到達目標(Course Objectives) |
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日本の近代思想の前提及び根本問題について、基本的な理解を身につける。十九世紀の日本人の知的・精神的世界が理解できるようになる。
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3. |
成績評価方法(Grading Policy) |
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期末の試験による。さらに、平常点をボーナス加点する。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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参考文献:海原 徹『吉田松陰 身はたとひ武蔵の野辺に』(ミネルヴァ書房)
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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I と II とで内容が繋がっているので、両方を続けて受講して欲しい。やむをえず片方だけ受講する場合は、参考文献をよく読んで補習すること。また、今年度も基本文献研究Fで松陰の著作を講読するので、関心のある人は併せて履修して欲しい。
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6. |
授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】
履修案内
【第2回】
春期の復習
【第3回】
思想の蓄積と展開
【第4回】
中華思想との対峙
【第5回】
中華思想との対峙②
【第6回】
国体論
【第7回】
国体論②
【第8回】
松下村塾での教育と草莽崛起の思想
【第9回】
松下村塾での教育と草莽崛起の思想②
【第10回】
開化攘夷と『孫子』読解
【第11回】
開化攘夷と『孫子』読解②
【第12回】
刑死
【第13回】
遺言
【第14回】
その生涯をどう捉えるか
【第15回】
期末試験とまとめ
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