1. |
授業の内容(Course Description) |
|
「開発経済学I」では、この学問分野が実践的な性格を持つことを強調した。これに対し「開発経済学II」では、持続する貧困状態そのものを、さらに、貧困状態から脱し豊かな経済社会へと発展する経済の動きを、簡潔なモデルによって一般化したうえで分析しうることを、複数の先行研究を参照しながら説明する。貧困状態から容易に脱しし得ない状況はどのような図式として描けるのか、そしてその図式から逃れるためにどのような方策があるのかについて説明する。つぎに、停滞を続ける経済であっても、一定のレベルに達すれば発展の持続プロセスに移行できるものと想定し、このレベルを若干なりとも超えるまでに外部からまとまった資金を注入して押し上げるという開発戦略モデルについて説明し、その現実妥当性について説明する。また、経済発展を工業部門における資本蓄積として捉え、それは農業部門からの工業部門への労働移動によって実現されると想定するモデルについても、経済学の分析用具がどのように活用されるかを説明する。また、新古典派理論モデルを応用した世銀、IMFの構造調整モデルの構造とその現実妥当性についても検討を加えることとしたい。こうした講義内容を踏まえ、開発の経済理論が貧困の現場でどのように応用されているのか、春学期の講義内容と重ね合わせてみたい。
|
2. |
授業の到達目標(Course Objectives) |
|
「貧困」という経済現象を、簡単な図式や数式で表すことの面白さを感じてもらいたい。いったん図式や方程式体系に表すことができれば、そのどこを操作すれば望ましい結果を導くことが可能になる。受講生には是非、アカデミックな分析が、ドロドロした現実を改革するのに役立つか、貧困削減という事例を解して学んで欲しい。
|
3. |
成績評価方法(Grading Policy) |
|
期末テスト、出席などの平常点によって総合的に評価する。
|
4. |
テキスト・参考文献(Textbooks) |
|
高梨 和紘編著『開発経済学−貧困削減から持続的発展へ』慶應義塾大学出版会、2005. 山形・黒崎共著『開発経済学−貧困削減へのアプローチ』日本評論社、2003. 速水 佑次郎著『開発経済学−諸国民の貧困と富』創文社、2000.
|
5. |
学生への要望・その他(Class Requirements) |
|
問題意識をもって、受講して欲しい。
|
6. |
授業の計画(Course Syllabus) |
|
【第1回】 はじめに:開発経済学の系譜 【第2回】 学際分野における途上国の把握 二重経済論①:ブーケ 【第3回】 二重経済論②:ファーニバル、フランケル 【第4回】 アジアの貧困:ミュルダール 【第5回】 ヌルクセ「貧困の罠」:需要面① 「均斉成長論」 【第6回】 ヌルクセ「貧困の罠」:供給面② 「潜在的貯蓄」 【第7回】 ハーシュマン:「不均斉成長論」 【第8回】 経済発展の2部門モデル ルイス、レイニス=フェイの発展モデル 【第9回】 ビッグプッシュ開発モデル: ネルソン=ライベンシュタイン 【第10回】 経済成長モデル①:ハロッド=ドーマー 【第11回】 経済成長モデル②:ソロー=スワン 【第12回】 構造調整モデル①:世界銀行 【第13回】 構造調整モデル②:国際通貨基金モデル 【第14回】 グローバリゼーションの功罪 【第15回】 まとめ:国際機関先導型国際援助政策の展望
|