Web Syllabus(講義概要)

平成21年度

ひとつ前のページへ戻る 教授名で検索

 
地域経済論研究D II 小島 祥一
選択  2単位
【国際総合文化専攻】 09-1-1110-0210-39A

1. 授業の内容(Course Description)
 アメリカのサブプライムローンに発した金融危機は、ヨーロッパ、日本、新興国に波及し、世界各国の実体経済が同時かつ急速に縮小する世界経済危機になった。日本経済は一足先にバブル拡大・崩壊・長期低迷を経験した後回復し始めていたが、輸出依存だったため再び危機に陥った。世界経済、日本経済が危機を脱して新たな成長を目指すためには、国民1人1人が、世界経済、日本経済はなぜ危機に陥ったのか、どうすれば脱出できるのか、危機を繰り返さないためにはどうすればよいのか、考えを深める必要がある。
 特に今回の世界経済危機は、経済のことは経済にまかしておけばいいんだ、政治は経済から手を引けばひくほどいいんだ、という市場原理至上主義が破綻したことが大きな特徴である。かといって、政治が経済に介入しすぎればしすぎるほど、経済はゆがめられ非効率性が高まることは、日本も世界各国もすでに経験してきた。マクロ的にみて政治と経済の関係はどのような姿が望ましいのか、この問題に取り組むことが、世界経済危機からの脱出に避けては通れない道である。アメリカはオバマ大統領のもとで、その道に踏み出している。
 このようなマクロでみた政治と経済の関係について、この授業では、日本の経験を振り返りながら、理論的な枠組みにより分析を深める。 理論的には、①日本経済がマクロモデルで想定しているよりも複雑な動きをしたからではないか、という行動メカニズムの問題と、②マクロ経済政策が一部の利益に引っ張られて政治的に歪められたからではないか、という決定メカニズムの問題がある。
 この授業では、②の決定メカニズムの問題として、小泉改革を具体例として取り上げ、争点ずらしによる自民党支配の構造、総論賛成・各論反対で経済政策が決まらなくなる構造を明らかにし、政治が経済を歪めていることを解明する。そしてマクロの経済政策が国民全体の利益につながるためには、民主主義がどのように機能する必要があるか分析する。
 世界経済危機では、マクロの政治と経済の関係について、日本のバブル崩壊・長期低迷期と同じ議論が起こっており、日本の経験を知れば世界の今が分かるようになる。 
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 世界経済危機、日本の経済危機において、マクロの政治と経済の関係はどうあるべきか、自分の見解が述べられるようになること。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 テスト100%。
 テストは、授業をまじめに受け、家で勉強し、最低限必要な知識(MR)を身につけ、自分で考える力(自分流)を身につけたかどうかをみる。出席しなければ単位はとれない。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 小島祥一『なぜ日本の政治経済は混迷するのか』(岩波書店、2007年1月)
 小島祥一「経済政策過程における自民一党支配---争点ずらしでアロウの不可能性定理を実践」
     『帝京経済学研究』第38巻第2号所収、2005年3月
 小島祥一「経済政策過程における総論賛成・各論反対---ゲーデルの不可能性定理の視点から」
     『帝京経済学研究』第39巻第1号所収、2005年12月
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 世界経済危機、日本の経済危機について、ユニークな発想を自らも試みてほしい。
6.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 第1章 争点ずらしと自民党支配
  1.争点ずらしのメカニズム
【第2回】
  2.小渕・森・小泉内閣の争点ずらし
【第3回】
  3.不況・不良債権・デフレの争点ずらし
【第4回】
  4.小さな政府・大きな政府・第3の道の争点ずらし
  5.安保・憲法・国連の争点ずらし
【第5回】
  6.世界経済危機における政治と経済の関係
【第6回】
 第2章 総論賛成・各論反対の矛盾
  1.小泉改革の政策体系と総論賛成・各論反対
【第7回】
  2.小泉内閣以降の政策体系と総論賛成・各論反対
【第8回】
  3.総論賛成・各論反対のパラドックス
【第9回】
  4.民主主義のはらむ矛盾
【第10回】
  5.政治哲学の様々な考え方
【第11回】
  6.世界経済危機における政治と経済の関係(続)
【第12回】
 第3章 マクロ政治経済学の様々な考え方
  1.概観
【第13回】
  2.危機にならないと政策が実行されないモデル
【第14回】
  3.中央銀行行動のモデル
【第15回】
  4.世界経済危機と国際政治