Web Syllabus(講義概要)

平成21年度

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アジア経済論 I B 高橋  満
選択  2単位
【国際文化】 09-1-1110-0326-21A

1. 授業の内容(Course Description)
 本学期はインド経済を対象とする。インド経済は21世紀にはいってから、BRICs の一員として、中国に次ぐ高成長国として有望視されている。最近のインド経済の新しい経済発展モデルとはいかなるものかを問題とする。
 インドは18世紀まではアジアの最も繁栄した国の一つであった。それが18世紀末からのイギリス植民地体制の下で有名な「インドの貧困」が生まれた。独立後はいわゆる「輸入代替型重工業化戦略」を採り、混合経済体制を取った代表的な途上国である。1951年から経済5ヵ年計画のもとに、鉄鋼業や重機械工業を中心とした「公共部門投資」を柱とした輸入代替型開発戦略を採った。しかし、そのため絶えず外貨危機に悩まされ、保護的な貿易政策とインフレによるルピーの過大評価は国外市場からの隔離をもたらした。さらに社会主義的規制を強め、社会主義型開発に傾斜した。そのためインド経済はハイコスト・エコノミーと呼ばれ、国際競争力を欠く、低位均衡経済に陥った。
 1991年には湾岸戦争、ソ連消滅の衝撃を受け、外貨危機をきっかけに深刻な経済危機に陥った。これを機に経済自由化政策に転換し、1990年代には徐々に成長率が高まり、90年代は6%近くに達し、21世紀には7~8%と高い成長率に達している。現在インド経済はBRICsの一員として、アジアでは中国とともに高成長地域として国際経済に影響力をもちつつある。インドの成長パターンは「第3次産業(ITソフト中心)」が成長を牽引する新しい型を示している。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 インド経済の発展モデルの特異性を理解することと同時に、他の歴史モデルとの比較を通じて、経済発展モデルの諸類型を理解すること。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 中間テスト1回(30%)と期末テスト(70%)による評価。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキスト:配布プリント。
 参考書:堀本 武功『インド―グローバル化する巨像』(岩波書店、2007年10月)
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 中国経済論 IIを受講することが望ましい。
6.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 アジア経済におけるインド経済の位相
  −インド型新経済発展モデルの形成
【第2回】
 インドの自然と社会環境
【第3回】
 インドの歴史
  −ヒンドゥイズムとコロニアリズム
【第4回】
 インド近代の始まり
  −イギリス東インド会社とベンガルの富
   輝かしいインドの繁栄の時代
【第5回】
 英領インドの植民地経済
  −脱工業化とインドの貧困
【第6回】
 インドの貧困と「富の流失理論」
  −現代低開発理論の源流
【第7回】
 独立インドの長期経済パフォーマンス
 1947~2005
【第8回】
 独立インドの経済発展戦略
  −産業政策決議体制と社会主義型社会
【第9回】
 「ソフト・ステート」の代表としてのインド国家−インドの貧困と経済停滞
  国家主導の後発型経済発展戦略の失敗
【第10回】
 インド経済構造と政治権力の癒着の構造
  −インドの政治経済学
【第11回】
 インドの農村
  −土地改革から緑の革命へ
   −1980年代農業の進歩
【第12回】
 1991年の経済自由化政策による開放体制から高成長へ−国内成長型発展
【第13回】
 日本とインドの経済交流の歴史と現在
【第14回】
 現代インド経済の課題
【第15回】
 総括:グローバリぜーションと新インド経済発展モデル