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授業の内容(Course Description) |
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マクロ経済学とは、一国の経済の状態を診断し、それに処方箋を書く、いわば「国のお医者さん」的学問である。医者が聴診器や血圧計やレントゲンなどを使って、患者の健康状態を調べるように、マクロ経済学では、GDP、物価水準、消費、投資、失業率、貨幣量、利子率、輸出、輸入などのマクロの指標から国の健康状態を計測する。 「国の健康状態なんか知って、何が楽しいの」と諸君はいうかもしれない。確かに、この知識が最も有用なのは、政府や官庁に勤める人々である。しかし、彼らばかりではなく、我々の社会生活にとっても欠かすことのできない知識なのである。それはなぜか。社会人になると、多少の蓄えができる。そのおおよそは銀行預金にするが、一部は株や投資信託などで増やそうと考える。 このとき、物価や利子率の動向を予測するのは大切で、それは景気の先行きと密接な関係を持っている。また、家庭を持って子供ができると、いずれ住宅を購入する。現金で買える人は少ないので、たいていはローンを組むだろう。このとき、利子率の動向を予見したり、自分の職業の将来を見据えるのは、大切な態度である。このような「経済の見通し」を作るには、マクロ経済学の知識はなくてはならないものなのである。 マクロ経済学は、おおまかにいって、「経済成長理論」と「景気循環理論」から成るが、本講義では「景気循環理論」のほうを講義する。景気循環とは、短期的に経済のパフォーマンスが変化することであり、とりわけ所得の低下や失業などがテーマとなる。現在のサブプライムローンに端を発した金融危機からの世界同時不況を理解するには、金融部門の役割と仕組み、金融面と実物面との関連を理解することが肝要である。それには、このマクロ経済学の講義は最適であろう。 そこでこの講義では、主にケインズの理論を中心に景気循環の基本を学習する。前期に、投資と貯蓄の関係のみから、有効需要の理論を使って、景気の問題を説明し、不況対策としての財政政策の原理を与えた。それを受けて、後期では利子率や貨幣などにまつわる金融部門の問題に発展させることにしよう。具体的には、株・債券と利子率の関係、貨幣の保有動機とマネーサプライの影響、それを総合するものとしての金融政策の意義について理解するのを最終目標とする。 いくぶん数理的であるが、使う数学は、中学生の「連立方程式」程度である。
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授業の到達目標(Course Objectives) |
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金融部門における貨幣の役割を知り、それと実物経済との関連を理解することを目標とする。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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講義内の問題演習を抜き打ちで4~5回実施し、出席ボーナス点を与える(計30点程度)。それに期末テスト(70~80点満点)の点数を加えて評価する。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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テキスト:小島寛之『容疑者ケインズ』プレジデント社
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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必ず出席して、課題をこなして、ボーナス点を獲得すること。データから見て、出席回数の少ない学生は高確率で単位を落としている。あまり出席しないつもりの学生(特に4年生)は、履修しないで欲しい。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 講義ガイダンス~講義の内容、単位取得方法などを説明 【第2回】 前期の復習~国民総生産の三面等価、消費関数、有効需要の理論による所得の決定 【第3回】 金融市場とはいったい何をしているところか 【第4回】 二種類の金融~直接金融と間接金融 【第5回】 株と債券~株、債券とは何か 【第6回】 貨幣の役割~貨幣の3つの機能 【第7回】 貨幣の定義と貨幣供給~日銀による貨幣供給 【第8回】 貨幣量のコントロール~日銀による貨幣量の3つのコントロール法 【第9回】 貨幣需要~ケインズの流動性選好 【第10回】 ケインズの貨幣需要関数 【第11回】 利子率はどう決まるか~ケインズの考え方 【第12回】 LM曲線 【第13回】 IS-LM分析 【第14回】 比較静学と金融政策 【第15回】 講義の遅れに対する調整またはケインズ理論の総括
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