Web Syllabus(講義概要)

平成22年度

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法哲学B
(法哲学)
中江 章浩
選択  2単位
【法律】 10-1-1210-0382-10

1. 授業の内容(Course Description)
 明治の最高の秀才であった森鴎外は、ドイツに留学しました。19世紀のドイツは、法律・医学など、多くの分野で他国を圧倒する水準を持っていたからです。ドイツ文化は、現代社会の文化の形成に大きな影響を与えたわけですが、特に日本は、ドイツと国民性や発展段階が似ていたため、大きな影響を受けました。明治憲法は、プロシア憲法を研究して作られましたし、日本の民法典の章建てはパンデクテン方式と呼ばれるドイツ方式です。したがって、日本の制度や法解釈の傾向をより深く理解するためには、ドイツの制度や歴史を知ることが助けになります。そこで、本講座では、ドイツ法やフランス法の概要を学習します。また、内容は中江ゼミ(総合法学特講)に直結し、全学部の方が受講できますので、ふるってご参加ください。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 独仏法と日本法の違いを理解する
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 中間レポート、期末レポートで評価
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 授業は自分なりに誠心誠意やるつもりですが、わざわざ聴講する程の価値があるとは思えませんので、出席はとりません。遅刻・早退も自由です。ただし、考えるための道具として法律の条文を使いますので、出席する場合は関連条文を持参してください。
6.
授業の計画(Course Syllabus)
 ○Erfolgsunwelt A・Bが、連絡なしに、それぞれ、致死量の半分の毒薬をCに飲ませたため、Cは死亡した。A・Bには、どんな罪が成立するか
  ―キーワード―
   因果関係、条件説、相当因果関係説、客観的帰属、共犯理論、自然科学、疫学的因果関係、
 ○Erfolgsunwelt 悪法は法か
  ―キーワード―
   トマス・アクィナス、自然法論、全権委任法、ナチスドイツ、フランス革命、
 ○Erfolgsunwelt おとり捜査は犯罪か
  ―キーワード―
   未遂の教唆、惹起説、堕落説、共犯理論、結果無価値、行為無価値、
 ○Erfolgsunwelt 北朝鮮がテポドンに燃料を注入したら先制攻撃するのは正当防衛になるか
  ―キーワード―
   実行の着手 集団的自衛権 憲法9条の戦争放棄の意味
 ○Erfolgsunwelt 都市ガスを室内に充満させることによって、子供を道連れに無理心中をしようとした母親には、どんな罪が成立するか
  ―キーワード―
   不能犯、具体的危険犯、抽象的危険犯、結果無価値、行為無価値、人間観、法の本質、
 ○Erfolgsunwelt なぜインドでは悟りを開けば人が神になれるのか
  ―キーワード―
   因果応報、輪廻と最後の審判 仏法と達磨 胡椒貿易とヨーロッパ人の乱入 アショーカ王と達磨 仏典結集 原始仏教と大乗仏教・部派仏教 八正道と涅槃・解脱 鎌倉仏教と日本人 仏教衰退の理由 法顕と玄奘 ヒンドゥー教とジャイナ教 バラモン教とウパニシャド哲学 梵我一如とカースト制 
 ○Erfolgsunwelt なぜドイツは二度の世界大戦の敗北から立ち直れたのか
  ―キーワード―
   分析法学と歴史法学 パンデクテン法学とゲルマン法学 国法学と公法学 ドイツ観念論哲学と歴史法学 カントとヘーゲル フィヒテとサビニー 社会保険 ビスマルク 疾病金庫 保守主義 リスク構造調整 ギルド
 ○会社(届出)は銀行(特許)より作るのを難しくすべきか
  ―キーワード―
   資本主義と明治維新 特許 許可 認可 認証 届出 自由設立主義 官の仕事 役所と法人の関係
 ○なぜイスラムではマホメットの風刺画を描くことが問題なのか
  ―キーワード―
   「政教分離制度」の3類型「寛容型」・「中立型」・「否定型」、人の法と神の法 表現の自由 偶像禁止 神を冒涜する表現の自由の有無
 ○なぜフランスでは、ナポレオン法典が生まれ、動物愛護を叫ぶ人が移民排斥を叫ぶのか
  ―キーワード―
   ナポレオンとフランス革命 実存主義と構造主義・現象主義 ニーチェとサルトル フーコーとハイデガー 償還払い方式 官僚大国 ジュペプラン 社会党 EU 大統領と首相 暴力団などが仲介する売春や他の低賃金労働を「現代の奴隷制」と位置づけ 奴隷貿易禁止法成立、2元論的世界観(自然と人間の融合)、動物愛護は1元論的世界観(人間の環境支配)、アフォーダンス、
 ○なぜローマ法は現代社会に影響を与えることが出来るのか
  ―キーワード―
   法と道のローマ帝国 ローマ法学の実際的性格 ローマ法学の歴史的展開
 ○日本ではなぜ談合がなくならないのか
  ―キーワード―
   17条憲法と金権政治 政治と金 官製談合 自由主義と功利=金主義 和の政治における優劣のつけ方 冠位十二階=徳と自由主義 政治と行政の関係 
 ○日本ではなぜ天下りがなくならないのか
  ―キーワード―
   報酬後払いシステムにおける公益法人 許認可を用いた人事支配 非課税と非効率 外形標準課税と消費税 年金一元化 ハーバード卒業生の就職先 企業と国民性 二重構造の日本社会 カースト制と同和問題 中・韓の受験戦争と官僚制 現代最大の既得権 天下り先のランク 科挙と魯迅 受験勉強の害悪 東大生のメンタリティー キャリアとノンキャリア
 ○日本ではなぜ法学部出の役人が多いのか
  ―キーワード―
   元老・東大法学部と日本官僚制 法科万能の意味 科挙と高等文官試験 牧民官 先頭ランナーの舵取り 後衛と前例主義 政治と行政のあり方 日本官僚制の特色 官に頼る国民性 陪審制と参審制の歴史
 ○日本では地方の時代が始まるか
  ―キーワード―
   国と地方の歴史(廃藩置県 内務省と知事任命制 GHQと地方自治 三割自治 地方分権推進一括法 法定受託事務 自治事務 機関委任事務の廃止 三位一体 平成の大合併) 超伝導の青葉城 地方主権の具体例 中国人観光客とエコ大国
 ○日本では仏壇と神棚がなぜ一緒にあるのか
  ―キーワード―
   神仏習合とムガール帝国 対立原理調和の2類型 情報環境の違い
 ○日本で明治維新はなぜ成功したか
  ―キーワード―
   薩長同盟と国連中心主義 錦の御旗の意味 天皇制と正統性原理 歴史にみる変革の2類型 鎌倉幕府型と明治維新型 外圧による存亡の危機の有無 変革に要する時間 城壁のない都市 絶対的正義感のない日本社会 版籍奉還・農地改革と三位一体 将来への自信と展望の有無 日本的集団主義とパターナリズム 健全野党は外国 総与党体制と同質社会 外国人犯罪と島国効果 ガラパゴス諸島と進化論 帰化人と南蛮人 蛇頭とマフィア
 ○日本と世界の憲法・民法・刑法は、どう違うか
  ―キーワード―
   世界の憲法:集団的自衛権・教育権・法令審査権・公民権運動・政教分離 選択的夫婦別氏制度・皇室典範と女帝・女系・母系社会・氏と姓・イスラム法の婚姻・近親婚の範囲・家族法における取消と無効・法律婚主義・破綻主義・possesio・Gewere・意思主義・所有権の移転時期・登記の効力・対抗要件主義・公信の原則・公示の原則・危険負担・債権者主義
 ○日本の権力は弱いか
  ―キーワード―
   大蔵省と神祇官 権力の本質 徴税・治安・外交 GHQと官僚 パターナリズムの伝統とcatch up 時代の特質 「お上」の意味
 ○日本の税金は高いか
  ―キーワード―
   脱税率と節税 シンガポール方式 官僚の手数料とIT社会 天引きと郵貯・年金積立金 納税意識の欠如と腐敗の程度
 ○日本の常識は世界の非常識なのか
  ―キーワード―
   情報革命と日本の特性 農業革命と金属文化の同時到来 産業革命と民主主義の同時到来 情報革命とcatch up時代終了の同時到来 マージナルな同質社会 文明開化と武道の型 文明の衝突と弱者の対応
 ○日本の目指すべき国の形はなにか
  ―キーワード―
   アングロサクソン型・アルペン型・東アジア型・中南米型・イスラム型 多民族共存 
 ○日本はアメリカと中国のどちらと組むべきか
  ―キーワード―
   中国の将来と対中長期政策の必要性 中華思想の歴史 日清戦争と対中観 モンロー宣言とブロック経済 太秦と夷荻政策 対中政策・日米安保とアジア版EU
 ○日本は国連常任理事国になれるか
  ―キーワード―
   未来志向平和主義 アルカイダとパレスティナ 日本版CIAの必要性 憲法改正と令外官の伝統
 ○日本は太平洋戦争では間違っていたのか
  ―キーワード―
   年金協定・自由貿易協定と大東亜共栄圏 断髪令・断髪離婚と神風 辮髪と和魂洋才 西体中用 異人と外人 日韓併合 在日朝鮮人 北朝鮮と拉致問題 空港建設に見る日本の体質と対応策 40年周期説 戦略なきことを逆手に取る戦略 多神教文化と国際社会 和魂洋才 奈良の大仏と鉄砲伝来 明治維新と戦後復興
 ○日本人はなぜ本音と建前を使い分けるのか
  ―キーワード―
   コンプライアンスと令外の官 摂関政治と幕府政治の法的根拠 未成年者飲酒禁止法と行政指導 国際化による法治主義の進展