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授業の内容(Course Description) |
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化学の基本はものを作り出すことであり、化学の発展によって膨大な種類の化学物質が合成され、それらは人間生活の向上に貢献してきた。しかし、化学物質の中には、人間やその他の生物および地球環境に影響を及ぼすものがあり、我々は様々な環境問題に直面している。したがって今日(こんにち)では、単に人間生活に便利さと豊かさをもたらすために化学物質をつくるのではなく、地球とそこに棲息する生物の安全性を考慮する化学、または生物、地球環境そして宇宙までも含む自然を認識する化学が求められている。このような現状をふまえ授業では、「化学物質による地球規模の環境問題の現況とその改善策」、「生体に及ぼす化学物質の影響」、「化学物質と生体防御」などについて講義する。
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2. |
授業の到達目標(Course Objectives) |
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この講義を通じて、現在われわれが直面している地球環境問題を認識し、その改善策を考える。さらに、化学物質が生体に入ったあとの代謝(分解経路)や生体への影響について学ぶ。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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学期末の定期試験(100%)で評価する。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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教科書:『生命と環境の化学』 三浦 洋四郎 著(八千代出版) 参考書:『沈黙の春』 カーソン 著(青樹 簗一訳)(新潮文庫) 『地球環境報告』、『地球環境報告II 』 石 弘之 著(岩波新書) 『奪われし未来』 コルボーン・ダマノスキ・マイヤーズ 著(長尾力訳)(翔泳社)
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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現在我々が抱えている地球規模の環境問題、例えば、最近よく話題になっている地球温暖化現象、石綿(アスベスト)などの化学物質の生体へ及ぼす影響、生体防御の仕組みになどに興味のある学生の聴講を歓迎する。環境問題を引き起こしている化学物質の性質や、なぜ合成されたかなど背景についてもわかりやすく講義するので、高校で化学を履修しなかった学生にとっても理解しやすいと思われる。授業に出席しないと期末試験の合格は難しいので、毎回授業に出席することが肝要である。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 レイチェル・カーソンと沈黙の春、化学物質と環境問題 【第2回】 日本の公害の歴史(1) 足尾鉱山鉱毒事件、イタイイタイ病、水俣病 【第3回】 日本の公害の歴史(2) 新潟水俣病、四日市喘息、川崎喘息など 【第4回】 フロンの種類とその用途、フロンによるオゾン層の破壊の仕組み 【第5回】 オゾン層破壊と健康被害、オゾン層の保護対策、フロンの代替物質の開発 【第6回】 酸性雨の原因、被害状況およびその防止 【第7回】 温室効果ガス(二酸化炭素など)による地球温暖化、その影響およびその防止 【第8回】 ポリ塩化ビフェニル(PCB)による環境汚染、カネミ油症事件、コプラナーPCBとPCDF、PCBの処理 【第9回】 ダイオキシンによる環境汚染、ゴミ焼却とダイオキシン、有機塩素化合物、トリハロメタンによる水道水の汚染 【第10回】 石綿(アスベスト)の用途および疾病との関連、石綿による環境汚染とその防止 【第11回】 内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の種類と用途、野生動物およびヒトへの影響 【第12回】 化学物質の排除と生体防御機構、免疫機構と解毒機構 【第13回】 スーパー酵素であるシトクロムP−450の諸性質(分子多様性、触媒作用、誘導現象、基質特異性) 【第14回】 シトクロムP−450による化学物質の酸化および発ガン物質の生成、喫煙と肺ガン 【第15回】 シトクロムP−450による内在性基質(脂肪酸、プロスタグランジン、胆汁酸、ステロイドホルモンなど)の代謝
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