Web Syllabus(講義概要)

平成22年度

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マクロ政治経済学 II 小島 祥一
選択  2単位
【経営】 10-1-1110-0210-15A

1. 授業の内容(Course Description)
 世界経済危機はひと休みしているが再燃するリスクが大きい。日本経済は90年代にバブル拡大・崩壊・長期低迷を経験した後回復し始めていたが、輸出依存だったため再び危機に陥った。世界経済、日本経済が危機を脱して新たな成長を目指すためには、国民1人1人が、世界経済、日本経済はなぜ危機に陥ったのか、どうすれば脱出できるのか、危機を繰り返さないためにはどうすればよいのか、考えを深める必要がある。
 特に今回の世界経済危機は、経済のことは経済にまかしておけばいいんだ、政治は経済から手を引けばひくほどいいんだ、という市場原理至上主義が破綻したことが大きな特徴である。かといって、政治が経済に介入しすぎればしすぎるほど、経済はゆがめられ非効率性が高まることは、日本も世界各国もすでに経験してきた。マクロ的にみて政治と経済の関係はどのような姿が望ましいのか、この問題に取り組むことが、世界経済危機からの脱出に避けては通れない道である。アメリカはオバマ大統領のもとで、その道に踏み出している。自民党支配が崩壊した日本では、民主党政権が同じ問題に取り組まねばならない。
 このようなマクロでみた政治と経済の関係について理解を深めるため、この授業では、民主党政権の政策を小泉改革と対比して取り上げ、民主主義のもとで、マクロの経済政策を妨げるような政官財癒着の構造、1党支配の構造、総論賛成・各論反対の構造が働いているメカニズムを解明する。そしてマクロの経済政策が国民全体の利益につながるためには、民主主義がどのように機能する必要があるか分析する。この授業では、特に総論賛成・各論反対を認めることにより政策決定が不可能になる、民主主義の矛盾について焦点を当てる。さらに、政策決定の分析手法として、ゲームの理論、コンピュータ・サイエンス、進化生物学、複雑系の最新の理論も応用してみる。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 政治が経済の問題をマクロ的にどう解決するか、新たな分析手法を理解して、より自由に自分の意見を言えるようになること。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 期末テスト100%。
 テストは、授業をまじめに受け、家で勉強し、最低限の知識(MR)を身につけ、自分で考える力(自分流)を身につけたかどうかをみる。
 欠席・遅刻・早退、教室にいても授業不参加・ケータイ・マンガ・ゲーム・寝る・喋る・立ち歩く・飲み食いするでは、単位はとれない。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキスト:朝日新聞編『失われた20年』(岩波書店、2009年2月)
 参考文献:小島 祥一『なぜ日本の政治経済は混迷するのか』第4章、第5章(岩波書店、2007年1月)
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 経済と政治のマクロ的な関わり合いを理解し、自分でも意見を主張し、行動を起こせるようになることを望む。それが社会人としての条件につながる。
6.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 第4章 民主党政権の政策
  1.民主党政権の歴史的位置づけ
【第2回】
  2.民主党政権の政策体系    
【第3回】
  3.民主党政権の財政政策
【第4回】
 第5章 公益対私益の対立
  1.民主党の政策体系と小泉改革の比較
【第5回】
  2.総論賛成・各論反対のパラドックス
【第6回】
  3.公益対私益のマトリックス表示
【第7回】
  4.民主主義のはらむ矛盾
【第8回】
 第6章 政策決定のさまざまなメカニズム
  1.問題先送りでは解けなくなる…巡回セールスマンの問題
【第9回】
  2.最善の選択をして最悪の結果に
    (1)囚人のジレンマ
【第10回】
    (2)経済への応用
【第11回】
  3.遺伝子に学ぶ
   ①公共選択と遺伝子進化
【第12回】
   ②遺伝的アルゴリズム(GA)による巡
    回セールスマン問題の解き方
   ③GAの政治・経済・安全保障への応用
【第13回】
 第7章 マインドを変えよう
  1.停滞から飛躍へ
【第14回】
  2.他のプレーヤーの役割
【第15回】
  3.民主主義の試行錯誤に日本も加わろう