1. |
授業の概要(ねらい) |
|
近年文献史学と考古学、加えて民俗学や図像資料相互の交流と協力関係が密になり、総合歴史学といった傾向を強めている。そのため歴史学の基本資料である古文書に加え、金石文・木簡等の出土文字資料・考古資料・絵画資料・史跡・景観等を含む文化財・文化遺産をよく理解し、その保護に十分な注意をはらい、活用に努める必要が高まっている。このための知識と技術の体系が「文化財学」であり、本講義では歴史資料という側面を重視しつつ文化財について学ぶ。まず文字資料の種類とそれぞれの特徴を理解し、次に考古資料や文化財の特質を理解し、総合歴史学構築のためにこれら2種類の資料からの協働が行われた具体例について講義する。甲斐黒川金山の研究は文献史学と考古学・文化財学の協力が理想的な成果を生み出した事例であり、日本の初期貨幣の研究は、それらが矛盾対立する結果を生んだ事例である。
|
2. |
授業の到達目標 |
|
歴史学の十分な理解の上に、基本資料である文化財の種類と重要性を認識し、その保護・管理、活用を行うための実践的知識と技術を獲得し、歴史の研究教育・博物館・社会教育関係の職場において働ける能力を養う。
|
3. |
成績評価の方法および基準 |
|
レポート。授業の早い段階で課題を与える。
|
4. |
教科書・参考書 |
|
奈良文化財研究所『文化財と歴史学』2003年 文化庁文化財部記念物課『発掘調査のてびき』2010年 雑誌『月刊文化財』 今村啓爾『戦国金山伝説を掘る』平凡社1997年 今村啓爾『富本銭と謎の銀銭』小学館2001年
|
5. |
準備学修の内容 |
|
歴史の現場である史跡や博物館等に所蔵されている文化財に積極的に触れるよう心がけ、机上の勉強に終わらないようにすること。
|
6. |
その他履修上の注意事項 |
|
とくに文献史学を専攻する学生には、歴史の現場である史跡を実見する癖をつけ、博物館等に所蔵されている関連文化財に積極的に触れ、多角的な勉強をこころがけてほしい。
|
7. |
各回の授業内容 |
|
【第1回】 | 文献史学と総合歴史学、さまざまな歴史観 | 【第2回】 | 先史時代と歴史時代、世界の文字の歴史と解読 | 【第3回】 | 文字史料の種類と形、出土文字史料 金石文、木簡、竹簡、墨書土器、漆紙文書、封泥 | 【第4回】 | 編纂歴史書と非編纂史料 | 【第5回】 | 日本古代に関する中国と日本の歴史書のなりたち | 【第6回】 | 魏志倭人伝と考古学 | 【第7回】 | 郡評論争など日本書紀の信頼性をめぐって | 【第8回】 | 文字史料と非文字史料(物質資料、図像資料、口碑・伝説、景観) | 【第9回】 | 文献史学と考古学の協働 黒川金山(1)遺跡の現場から | 【第10回】 | 文献史学と考古学の協働 黒川金山(2)古文書から | 【第11回】 | 文献史学と考古学の協働 黒川金山(3)技術の展開 | 【第12回】 | 校外学習 古代武蔵国中枢の史跡探訪 | 【第13回】 | 文献史学と考古学の衝突 日本初期貨幣の研究(1)和同開珎より古い貨幣の発見 | 【第14回】 | 文献史学と考古学の衝突 日本初期貨幣の研究(2)和同開珎銀銭・銅銭の意味 | 【第15回】 | 文献史学と考古学の衝突 日本初期貨幣の研究(3)文献記録の新解釈 |
|