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授業の概要(ねらい) |
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近年文献史学と考古学、加えて民俗学の相互の交流と協力関係が密になり、総合歴史学といった傾向を強めている。そのため歴史学の基本資料である古文書に加え、出土文字資料・考古資料・図像資料・史跡など文化財・文化遺産の保護に十分な注意をはらい、その活用に努める必要が高まっている。このための知識と技術の体系が「文化財学」であり、本講義では歴史資料としての側面を重視しつつ文化財について学ぶ。制度的には日本の文化財保護制度と、近年広く注目を集めている世界遺産制度が中心になるが、これに加えて、調査と保存管理の実際にかかわる側面、資料の研究者や一般市民に向けての公開や活用、そして社会の文化財保護意識を高めることが求められ、それを推進するにあたっては的確かつ総合的な歴史の理解が要求される。文化財保護や社会教育関係の行政職員・博物館職員はいうまでもなく、歴史学・考古学の研究者全体が身につけることを要求される学識の体系である。
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2. |
授業の到達目標 |
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歴史学の理解の上に、基本資料である文化財の種類と重要性を認識し、その保護・管理、活用を行うための実践的知識と技術を獲得し、歴史の研究教育・博物館・社会教育関係の職場において働ける能力を養う。
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3. |
成績評価の方法および基準 |
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成績は第13~15回の授業での討論への参加と発言を以て評価する。ただし発言が少ない場合には同じ内容のレポートとする。
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4. |
教科書・参考書 |
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奈良文化財研究所『文化財と歴史学』2003年 文化庁文化財部記念物課『発掘調査のてびき』2010年 雑誌『月刊文化財』 文化庁文化財部記念物課『史跡名勝天然記念物重要文化的景観登録記念物指定等目録』2010年 一応上記の図書・雑誌をあげたが、毎年のように制度や新指定などの変化がある文化財に関しては、完全版といえる本が少ない、かえって文化庁やユネスコが運営するWeb siteに正確で最新の情報が盛られている。これらについてはパソコン教室で各自siteにアクセスし、どのようなsiteがあり、どのように利用できるか学ぶ。
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5. |
準備学修の内容 |
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歴史の現場である史跡や博物館等に所蔵されている文化財に積極的に触れるよう心がけ、机上の勉強に終わらないようにすること。
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その他履修上の注意事項 |
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とくに文献史学を専攻する学生には、歴史の現場である史跡を実見する癖をつけ、博物館等に所蔵されている関連文化財に積極的に触れ、多角的な勉強をこころがけてほしい。夏休みなどに海外の文化遺産に接する機会を持った学生は、授業でその体験について発表してほしい。
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各回の授業内容 |
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【第1回】 | 歴史と文化財 | 【第2回】 | 日本における文化遺産保護の思想と制度の展開 | 【第3回】 | 校外学習 多摩丘陵の文化遺産 | 【第4回】 | 日本の文化財保護法と保護制度 | 【第5回】 | 有形文化財の種類 | 【第6回】 | 無形文化財と文化財概念の拡大 | 【第7回】 | 埋蔵文化財 | 【第8回】 | 埋蔵文化財の歴史資料化 | 【第9回】 | 世界における文化遺産保護の思想と制度の展開 | 【第10回】 | 世界遺産制度の始まりと変質 | 【第11回】 | 日本にある世界遺産 | 【第12回】 | 世界文化遺産を巡る近年の傾向 | 【第13回】 | 討論1 文化遺産の活用と観光、地方活性化 | 【第14回】 | 討論2 文化遺産をめぐる国際的諸問題 | 【第15回】 | 討論3 文化遺産保護意識の高揚のために |
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