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授業の概要(ねらい) |
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国際的な精神疾患の診断基準となるDSM-5が刊行されたが、インクルーシブな社会において障害の有無は連続体をなし、その線引きには困難が伴うこと、診断する側とされる側は相互規定的な関係(相互に影響を及ぼし合う関係性)にあることを臨床現場に携わる専門家は熟知しておく必要がある。 本授業では、前期には、「情緒」「感覚」がシステムとして構築される通常の発達過程について学ぶ。 後期には、発達障害に焦点を当て、当事者の手記を手掛かりに、彼らの「感覚」「情緒」が環境要因によって影響を受けやすく安定したシステムとして機能しにくいことや程度の差はあれ、一般にも通ずるものでもあることを学ぶ。これらの考察を通して、心理の専門家としてどこにどう注目して支援することができるかを整理する。 授業は、主に演習方式で進める。グループワークを取り入れながらテキストを読み進め、履修者全員でディスカッションすることにより、各自の問題意識を明確化していきたい。
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授業の到達目標 |
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発達障害を理解する上で最も困難であると言われる「感覚」「情緒」の問題について、発達的観点をもとに理解を深めることを目標とする。
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成績評価の方法および基準 |
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テキストの理解・発表・グループディスカッションへの参加を40%、まとめのテストを60%として、評価する。
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教科書・参考書 |
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テキスト:須田治(1999)『情緒がつむぐ発達』新曜社 綾屋 紗月、熊谷 晋一郎(2008)『発達障害当事者研究―ゆっくりていねいにつながりたい (シリーズ ケアをひらく)』医学書院
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準備学修の内容 |
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1)授業計画に沿って、予習する。 2)発表では、最近の統計資料を調べ、動向を把握する。 3)授業に関して、参考文献を紹介するので、各自取り寄せて読むこと。
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その他履修上の注意事項 |
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テキストの講読は、担当者を決めて発表しながら、検討点を吟味する、といった流れで進める。 章ごとにグループディスカッションを行う予定である。ディスカッションでは、積極的・主体的な参加が求められる。
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各回の授業内容 |
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【第1回】 | 講義方針・発達障害の知識や経験の交流 | 【第2回】 | DSM-5に記述された自閉症スペクトラム障害 ICF モデル | 【第3回】 | 1「情緒がつむぐ発達」の輪読 | 【第4回】 | 世界とのじょうずな適合―情緒調整をとらえる | 【第5回】 | 検討点のグループディスカッション | 【第6回】 | 個人と生態とのあいだでの調整の理論 | 【第7回】 | 検討点のグループディスカッション | 【第8回】 | 乳児とのやりとりと情緒的リズム | 【第9回】 | 検討点のグループディスカッション | 【第10回】 | 表明された乳児の意図 | 【第11回】 | 検討点のグループディスカッション | 【第12回】 | 幼児たちのコーピング行動と、社会との適合 | 【第13回】 | 検討点のグループディスカッション | 【第14回】 | 体験をとらえなおす精神的作業 | 【第15回】 | 検討点のグループディスカッション・小テスト | 【第16回】 | 2「発達障害当事者研究―ゆっくりていねいにつながりたい」 1章 体の内側の声を聞く | 【第17回】 | 検討点のグループディスカッション | 【第18回】 | 2章 外界の声を聞く | 【第19回】 | 検討点のグループディスカッション | 【第20回】 | 3章 夢か現か | 【第21回】 | 検討点のグループディスカッション | 【第22回】 | 4章 揺れる他者像、ほどける自己像 | 【第23回】 | 検討点のグループディスカッション | 【第24回】 | 5章 声の代わりを求めて | 【第25回】 | 検討点のグループディスカッション | 【第26回】 | 6章 夢から現へ | 【第27回】 | 検討点のグループディスカッション | 【第28回】 | 7章 「おいてけぼり」同士でつながる | 【第29回】 | 検討点のグループディスカッション | 【第30回】 | 心理専門職の役割・小テスト |
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