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授業の概要(ねらい) |
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臨床心理学的支援を行う場合に知っておくべき法律と行政的な施策、必要となる倫理について、この授業で議論する。たとえばカウンセラーとクライエントとの間で結ばれる相談契約は、法律的にはどう位置づけられるであろうか。このような法的知識を知ることで、私たちは初めて相談行為の社会的位置づけを知ることとなる。 児童虐待が疑われ対応が必要なのに、児童虐待防止法を理解していなければ、基本的な対応でミスをしてしまいかねない。いじめに対しては、いじめ防止対策推進法を知り行政の動きを知っていなければ、大きな不備が生じるであろう。 この授業では、臨床心理学的支援を行うものが必ずしっておくべき法律と行政的な仕組みについて学習する。また支援を行う上での倫理についても、取り上げる。生や死に関する難しい判断が支援者に求められることも多い。臨床心理学に関連する専門職の高度な専門性や倫理性、コンプライアンス、それらを維持向上するための研修や職能団体の役割等にもふれる。倫理的な答えを求めるのではなく、倫理的にどのような課題が沸き上がっているのか、そしてそれらにどう向き合っていくのか充分に議論していきたい。
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2. |
授業の到達目標 |
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1)臨床心理学的支援と関連する法律の概要を理解する 2)心の支援に関する諸政策の展開を行政の動きも含め理解する 3)心の支援に関する倫理的課題について論点を学ぶ。 4)法律や行政論、倫理の学びが、臨床現場での判断をどう有効に導くか議論する
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3. |
成績評価の方法および基準 |
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授業内発表60%、レポート40%
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4. |
教科書・参考書 |
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テキスト:『心の専門家が出会う法律』 津川律子・元永拓郎編 誠信書房 『心理臨床における法と倫理』津川律子・元永拓郎編 放送大学教育振興会 参考文献:『心理臨床の法と倫理』伊原千晶編著 日本評論社 『臨床心理学の倫理を学ぶ』金沢吉展著 東京大学出版会
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5. |
準備学修の内容 |
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テキストの次回授業範囲について充分に読み込み、授業で提示した学習課題に目を通し、自分自身の意見を記述して授業に臨む必要がある。授業内で学んだことをふまえ、用意した記述からどう考えが深まったかを、レポートとしてまとめることもある。
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6. |
その他履修上の注意事項 |
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臨床心理士として社会で活動する上で、関連する法律の知識と行政が行う施策の理解は必須のものとなる。また臨床心理士の倫理について、具体的な事例や局面でどう考え判断すればよいか考えぬくことは、よい臨床家になるために不可欠な体験である。 臨床心理学の見立て(アセスメント)や介入(サイコセラピー)を充分に学ぶことはもちろん大切であるが、法律や倫理を体系的に学ばなければ、社会から遊離した役に立たない心理職となってしまう。さまざまな職種の専門家とよきチームを作り動いていくための基本的知識として、法律および倫理を位置づけることも可能であろう。
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7. |
各回の授業内容 |
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【第1回】 | ・ガイダンス ・法律と倫理の総論 | 【第2回】 | ・心理臨床における難しい倫理的判断 | 【第3回】 | ・いのちと関係する法と倫理 | 【第4回】 | ・子どもの支援と法と倫理 | 【第5回】 | ・家族支援と法と倫理 | 【第6回】 | ・勤労者の法と倫理 | 【第7回】 | ・高齢者の法と倫理 | 【第8回】 | ・教育領域の法と倫理 | 【第9回】 | ・医療・保健領域の法と倫理 | 【第10回】 | ・司法・矯正領域の法と倫理 | 【第11回】 | ・コミュニティにおける法と倫理 | 【第12回】 | ・精神障害に関する法と倫理 | 【第13回】 | ・心理臨床研究における倫理 | 【第14回】 | ・日本と世界の心理臨床に関する資格の歴史と現状 | 【第15回】 | ・まとめと展望 |
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