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授業の内容(Course Description) |
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この講義では、古代から戦国時代に至る日本の社会史を、支配的な身分や政治様式、宗教や家族のあり方などの変遷を中心に概観する。古代律令制と貴族政治、日本の天皇と中国皇帝との比較、武士団の勃興とそのエトス、武家法の発達、郷村の成長と戦国大名の成立、宗教と政治の相克と癒着などを扱う。長い時代を扱うので、細かい史実を追うよりも、長期的にみた場合に明らかになる日本社会の特徴は何かを、ヨーロッパや中国などと比較しつつ検討する。
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授業の到達目標(Course Objectives) |
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東アジアの東端に位置する日本は、中国や朝鮮からの影響を受けながら独自の社会や文化を発達させた。古代天皇制にみられる二重統治、武士という軍事貴族による支配権の掌握、長子単独相続制の普及などはその特徴をよく示す。これらは徳川支配下の幕藩体制の歴史的前提となっている。こうした独特な日本社会が成立してゆく過程について、正確な理解をもつことをめざす。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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定期試験(80%)。期末試験の欠席者は0点の評価となるので注意すること。 平常点(20%)。毎回の講義で出欠をとり、平常点の評価に反映させる。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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教科書はない。毎回講義に出席して、よく注意して聞いて欲しい。 主な参考文献は初回の講義であげる。また各回の講義で、その主題に関連するものを適宜紹介する。
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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毎回、講義の冒頭で出欠をとるので遅刻しないこと。私語しないこと。質問の機会を与えるので、講義で分からない点は遠慮なく質問すること。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 講義の趣旨説明、参考文献の紹介。「日本」とは何を意味するか。また「社会史」とは何を意味するかについて論ずる。 【第2回】 大化前代の社会構造。「ウジ」「カバネ」「ベ」「トモ」などに関する諸学説を紹介し、幾つかの氏族をとりあげて、その社会的な存在形態を検討する。大化前代における社会発展の概略を跡づける。 【第3回】 大化の改新と東アジア世界。大化の改新へと至る政治過程をたどり、当時の王権のあり方を探る。また天皇権力の強化である改新が、どのような大陸情勢(朝鮮半島の政治情勢を含む)と対外的危機感の中で遂行されたかを検討する。 【第4回】 古代日本の祭政一致構造( I )。漢字の「祭事」と「政事」は古代日本ではともに「まつりごと」と訓読される。それがどのような祭祀と政事の構造を背後にもっているか、またその伝統が中国律令制の受容にあたり、どんな変容をもたらしたかを検討する。 【第5回】 古代日本の祭政一致構造(II)。I でみた祭政一致の構造がその後の日本歴史を通じて、二重統治の構造として伝統化してゆく経緯、及びその社会的連関を検討する。 【第6回】 古代中国の政教一致構造。中国の皇帝は天をまつる天子として、最高の政治権力者であると共に道徳的聖人として民を教化する存在とされた。こうした政教一致の理念がどんな社会構造を背景にしているかを、日本との比較の視点から検討する。 【第7回】 武士団の勃興と武士のエトス。古代末期以後、私的な武装勢力として武士団が成立し、中世以後の歴史で大きな役割を果たす。「武士」とは何かに関する諸学説を検討するとともに、武士団の構造や生活習俗、規範意識などを論ずる。 【第8回】 武家法の発達。13世紀の前葉、執権政治下の鎌倉幕府は、京都朝廷の律令法とは別に、幕府の御家人を対象とした「御成敗式目」を制定した。それが立脚している法共同体の意識について論ずる。 【第9回】 鎌倉新仏教の成立とその社会的意味。古代社会から中世社会への変化は政治権力のあり方を変化させただけでなく宗教意識の変容をも伴った。南都北嶺に対抗して現われた鎌倉新仏教のもつ特質を、宗教社会学な観点から分析する。 【第10回】 南北朝の動乱。14世紀のこの動乱は、皇室・公家・武家を問わず支配層を二つに分裂させ、長期にわたって日本を内乱状態に導いた。この動乱がどのような社会的条件に起因するのか、当時の所領や相続のあり方と関連づけて検討する。 【第11回】 郷村の成長。中世には「惣」とよばれる村落が自治的共同体として成長した。惣村がどのようにして成立し、その秩序がいかに保たれていたか、領主や隣村との関係はどうであったか等を検討する。 【第12回】 一向一揆の社会史的意味。浄土真宗は蓮如(15世紀)の指導下に飛躍的な発展をとげた。15世紀末から約90年間、加賀の門徒衆が領主を追放してその国を自治したように、一大勢力として現われた。そうした結集を可能にした組織原理を検討する。 【第13回】 守護大名から戦国大名へ。応仁の乱(15世紀後半)を経て室町幕府の権威が地におちる。それにつれて各地の大名は領国を形成し、領国法を発布し「公儀」と称するようになる。その権力基盤は軍事的経済的実力にあった。こうした大名の変容を論ずる。 【第14回】 キリシタンの渡来。戦国時代は、日本が西洋とはじめて直接に接触した時期であり、それは軍事的にも文化的にも大きな意味をもった。とくにキリシタン運動が日本の精神史上もった意味について論ずる。 【第15回】 織豊政権による天下統一。武士政権による天下統一は、公家や寺社に対する武家の優位を決定付け、またキリシタン禁教、兵農分離などの政策を伴っていた。こうした統一が、その後の日本社会の発展や近代化のあり方に対してどのような意味をもったか。この問題に関する諸学説を検討する。
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