1. |
授業の内容(Course Description) |
|
産業における「資源」とは、生産活動のもとになる有形無形の必要物を指します。そして、この資源問題こそ、観光産業が特異な産業であることを示す要素です。観光産業では、他産業では全く経済的価値を生まない、ただの砂浜や山岳地、絶海の孤島までが観光資源になり得ます。昨今では地吹雪ツアーとか零下40度の極寒の世界、はては都市のスラムとか宇宙までもが観光の対象として価値を生みつつあり、極端に言えば、観光資源になり得ないものはないといっていいくらいです。 また、他産業なら、他の目的ですでに占有されている土地や空間は使用できませんが、観光では、農場や工場、歴史的建造物や町並みなど、すでに使用されている土地や空間を観光資源として活用することも可能です。ただし、実際にそれらを観光資源として利用するためには、人に認知されることが必要であり、また、そこへ至るアクセスや、そこでの滞在を可能にする宿泊その他の諸サービスが整備されなければなりません。 こうした特性から、観光資源とは何かを考察し、いかにして資源を認知させ、観光商品として有効活用するか、といった資源論は、そのまま観光開発論、観光振興論、観光マーケティング論へと展開せざるを得ません。 したがって「観光資源論A B」を通じ、観光の独特のメカニズムを解説し、「観光資源」という視点から、広く観光政策論、観光公共事業論、観光開発と環境保護、観光振興論について論じます。ただし、観光マーケティングについては、同じ教員が「観光マーケティング」という別の講義を担当するので、マーケティングに係る議論はそちらに譲ります。
|
2. |
授業の到達目標(Course Objectives) |
|
観光資源論A Bを通じて観光産業の特性と観光資源の特性を論じ、観光資源が経済的価値を生むメカニズムを理解します。観光資源論Aでは、主として観光資源とは何か、観光資源を生かす観光開発・観光振興は公共事業に他ならないことを観光政策の歴史などを中心に学びます。
|
3. |
成績評価方法(Grading Policy) |
|
期末試験80%、平常点(主として出席状況)20%の配分で評価します。出席確認は、2回に1回程度不定期に行なう小テストによります。この小テストは、出席確認のみならず、講義に関連するテーマを随時取り上げて講義内容を補い、また受講者の意見感想を聴取する目的で行うものです。小テストの成績は成績評価とは関連しませんが、一部平常点に採り入れることがあります。
|
4. |
テキスト・参考文献(Textbooks) |
|
*テキスト:適宜プリントを配布します。 *参考文献:授業において適宜紹介します。
|
5. |
学生への要望・その他(Class Requirements) |
|
小テストの末尾の「教師への通信欄」に質問やコメントを積極的に記入することを奨励し、これが授業の新しい展開やディスカッション(質疑)につながることを期待します。
|
6. |
授業の計画(Course Syllabus) |
|
【第1回】 *授業の方針と講義の概要 【第2回】・【第3回】 *観光資源総論(観光資源の考え方、観光資源の分類) *観光資源と観光施設・サービス 【第4回】 *観光現象のメカニズムと観光資源 【第5回】 *自然観光資源(1):アメリカの自然保護思想と国立公園の誕生、ほか 【第6回】 *自然観光資源(2):「日本風景論」の思想、日本の国立公園、日本固有の温泉利用、ほか 【第7回】 *人文観光資源(1):イギリスのナショナルトラスト、世界遺産制度の理念と歴史、ほか 【第8回】 *人文観光資源(2):神社仏閣、庭園、城址、祭りなど 【第9回】 *複合型観光資源:都市、農山漁村、歴史景観など 【第10回】・【第11回】 *観光開発政策の系譜(1) ・インバウンド振興策の系譜 ・ソーシャルツーリズムの系譜 【第12回】・【第13回】 *観光開発政策の系譜(2) ・リゾート開発の系譜 ・グリーン(ルーラル)ツーリズムの系譜 *アーバンツーリズムの系譜 【第14回】 *文化と都市と観光 ・EUの文化観光プロジェクト 【第15回】 *総括 なお、講義を補うために、できるだけ多くの事例を取り上げ、映像なども利用してケース・スタディとします。例:湯布院温泉、和倉温泉(加賀屋)、旭山動物園、北海道ニセコ・スキー場など
|