Web Syllabus(講義概要)

平成21年度

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社会保険法A 中江 章浩
選択  2単位
【法律】 09-1-1210-0382-01

1. 授業の内容(Course Description)
 私−中江章浩は、厚生省で長らく仕事をしていましたが、外交官や国際機関職員などとして外から日本社会をみる経験が多かったことから、日本の将来に危機感を持つとともに現在の官僚機構のあり方に限界を感じ、その打開のためには、一挙に全国規模でものを考えるのではなく、一定の地域から社会変革を進めていくしかないと考え、ある自治体の首長選挙にチャレンジして失敗し、はからずも教鞭をとらせていただいている者です。本講座では、このような私の個人的な体験をもとに、社会保障・福祉などについての裏話を披露させていただき、受講者が物事の裏面を見抜ける人間になることを目標にします。また、内容は中江ゼミ(総合法学特講)に直結し、全学部の方が受講できますので、ふるってご参加ください。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 医療・介護の概要と問題点について理解する
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 中間レポート、期末レポートで評価
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 『21世紀の社会保障』(中江章浩著 第一書房)、『社会福祉エッセンス(第2版)』(中江章浩他著 自由国民社)、『トピック社会保障法(第2版)』(中江章浩他著 不磨書房)、『日本のNPOシステム』(中江章浩著 エヌピ−通信社)、『どうなる年金こうなるくらし』(中江章浩著 長崎出版)、『日本のなおし方』(中江章浩著 信山社)など
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 授業は自分なりに誠心誠意やるつもりですが、わざわざ聴講する程の価値があるとは思えませんので、出席はとりません。遅刻・早退も自由です。ただし、考えるための道具として法律の条文を使いますので、出席する場合は関連条文を持参してください。
6.
授業の計画(Course Syllabus)
○30兆円を超える国民医療費の配分を決める中医協はなぜ伏魔殿と言われるのか
 ―キーワード―
70年代3Kの今 コメ・国鉄と健保 自主流通米と国鉄民営化 これからの医学(オーダーメイド医療)と医療経済 封建統制と官僚統制 ルネサンス期のイタリア農民 保険診療の歴史は半世紀 官僚統制と医療 最後に残った統制経済と利権
○医院は何故法人になるのか
 ―キーワード―
医療法人 中間法人法・法人擬制説・理事長・法人税率・許可主義 中間法人 公益法人等 特定非営利活動法人 人格のない社団等 普通法人 社団法人、財団法人、宗教法人、学校法人、社会福祉法人 課税対象 組織解散時の残余財産の帰属 社員脱退時の持分払い戻し 事業年度終了後の剰余金の分配 監督
○医院をトヨタが経営してもよいか
 ―キーワード―
民法総則の法人との関連 権力と法人設立の歴史・許可認可特許届出・病院診療所の設立・法人税率 許可認可特許の違い・独立行政法人・医療法人は公共法人でない 法人とは何か・配当禁止・医師のみ管理者 法人ごとの設立・金(法人税・配当)・組織の表 医療施設・医療計画・医療マンパワー
○医師と薬剤師が対等の関係で仕事を分担するという医薬分業は何故なかなか進まないのか
 ―キーワード―
薬学部6年制 薬師の歴史 日本薬局方 製薬会社の経常利益 薬剤師と花嫁修業 麻薬取締法 医薬部外品と化粧品
○医者が増えると医療費も増加するから、医学部の定員はあまり増やさないほうがよいという意見は正しいか
 ―キーワード―
医師免許制+自由開業制 行政計画(医療計画・地域福祉計画・老人保健福祉計画・医学部定員削減)による機能分化・供給量管理 独立行政法人化という民営化 単なる予防から健康増進へ 徳州会と地元医師会 医師養成と私学助成金 医療における需要供給関係
○医者でないビジネスマンが病院のトップになれるか
 ―キーワード―
アメリカの病院経営 組織の盛衰 技師長と事務長 ジンギスカンの軍隊 技術と管理 ラインとスタッフ ドイツ参謀本部 人格権 財産権 管理権 私権 自然人 公法人 公益法人 営利法人 法人本質論 法人否認説 法人実在説 医療法人 行為能力 権利能力 法人の組織 理事 定款 寄付行為 管理 解散 監督 法人の不法行為責任 代理
○医療サービスはどんなときにどんなものが受けられ、その値段はどう決まるのか
 ―キーワード―
一部負担 高額療養費 金銭給付 差額負担 健康保険 診療報酬点数表 薬価基準 支払基金 老人保健制度 国民医療費 保健事業
○救急医療を充実させるにはどうしたらよいか
 ―キーワード―
自動体外除細動器(AED) 人工呼吸器 休日夜間医療 救急医療体制 広域救急患者搬送体制 救急救命士制度 大学付属病院の使命 救急医療情報センター 災害医療 僻地医療
○交通事故にあってしまった時、自賠責と医療保険のどちらを使うのが得か
 ―キーワード―
自賠責と健保の違いから考える医療保険の本質、交通事故の際の損得、医師会VS朝日新聞、健保組合VS保険会社、点数表1点の値段、傷病手当金、一部負担金、支払い上限
○情報化・高齢化・国際化の進展の中で、医療福祉政策は30年後どうなっているか
 ―キーワード―
国民皆保険 社会保険庁 医療法人 営利法人の参入 混合診療 保険免責 末期医療 ジェネリック医薬品 医薬分業 診療報酬点数表 中央社会保険医療協議会 平均在院日数 情報の非対称性 保険者機能 独立方式 政府管掌健康保険 国民健康保険 保険医療機関 税と保険料 社会保障給付費
○日本歯科医師会が自民党に献金して診療報酬の配分を変えたという汚職は、なぜ起こったのか
 ―キーワード―
政治の透明性 政治資金規正法 性悪説と献金の上限 迂回献金と天引き制度(所得税・組合費・業界団体会費) 政治資金の透明化 政党助成金 議会制度と金 業界団体の政策誘導 狭く厚い政治献金 1940年体制の是非 麻薬禁止と飲酒禁止 取締りと免疫システム お中元と田沼意次
○日本医師会の会長を長年勤めた武見太郎の呪縛は、なぜ自動車産業の規模より大きいと言われるのか
 ―キーワード―
中医協委員構成にみる統制システムの弊害 医療保険の規模 医療団体権謀術数史 診療報酬点数表の意味 開業医と勤務医 設置法改正=病院代表とチーム医療 軍部大臣現役武官制と中医協 診療側委員引き上げと保険医総辞退 弱者の恫喝とprofessional freedom 法治国家と圧力団体
○愛人を作って夫が家を出てしまったために、週5日午後1時から7時まで平均時給の7割でスーパーのレジで働く女性に対する社会保障の適用はどうすべきか
 ―キーワード―
少子高齢化 人口転換 4分の3の原則 厚生年金 国民健康保険 労働保険 国民年金の空洞化 賦課方式 個人単位 第3号被保険者 遺族年金 民法改正案 破綻主義 重婚的内縁関係 年金分割 基礎年金の国庫負担分 税と保険料の違い 国際競争力 エンゼルプラン 少子化対策基本法
○介護:家族が寝たきりになったらどうするか
 ―キーワード―
地雷と介護の類似性 介護保険法 第1号被保険者 ゴールドプラン 介護保険事業計画 サービス提供事業者 施設サービス 在宅サービス 要介護認定 ケアマネジメント 老人福祉法
○介護:自宅療養したいという脳梗塞による下半身麻痺で入院中の老人を助けるにはどうしたらよいか
 ―キーワード―
介護保険法 施設サービス 在宅サービス 居宅サービス事業者指定の更新制 予防給付 要介護認定 ケアマネジメント 老人福祉法
○介護:判断能力が衰えた老人が2人に売ってしまった土地は誰のものか
 ―キーワード―
認知症 行為能力 後見・保佐・補助 物権変動 対抗要件 意思表示 意思の瑕疵 公示力と公信力 無効と取消 成年後見制度 福祉サービス利用援助事業 精神障害者 同意 精神保健指定医の診断 保護者の同意 医療保護入院 精神病院 犯罪構成要件 法益 人身の自由を侵す罪 任意入院 措置入院 精神保健 精神障害 社会的耐性 結果無価値と行為無価値 客観的違法性と実質的違法性 違法性阻却事由
○介護:介護保険料を払わない男の妻は、それを払わないといけないか
 ―キーワード―
否認・自白・連帯保証・抗弁権 各社会保険の基礎単位の違い 被扶養者 被保険者 国民健康保険の本人と家族 老人の負担の仕方
○介護:自分で高価な車椅子の購入契約を結び代金を支払ってしまった、自由に歩ける認知障害の老人を助けるにはどうしたらよいか
 ―キーワード―
成年後見制度 福祉サービス利用援助事業 擬似市場 福祉契約 オンブズマン 小規模多機能サービス拠点 グループホーム 施設機能の地域展開 介護保険審査会 成年後見制度 福祉サービス利用援助事業 苦情解決制度
○制度:医療財政については国家の管理が強いシステムとしつつ、医療供給体制については民間中心のシステムとすることはよいか
 ―キーワード―
開業医と公衆衛生への重点配分 途上国型医療構造から成熟経済型医療構造へ 貯蓄・保険と所得再配分の渾然一体性 高齢者介護の意味 福祉の市場化
○制度:医療保険制度がドイツ型モデルから変容して国民皆保険と普遍主義への志向を持ったのはなぜか
 ―キーワード―
老人保健制度と基礎年金制度 医療保険と年金の関係 経済の二重構造と政管健保の意味
○制度:公的医療保険に加入を強制しない代わりに公的扶助を充実した方が財源の使い方としてより効率的であるという意見は正しいか
 ―キーワード―
フリーターの入る医療保険 国民皆保険の罠 オーダーメイド医療
○制度:高齢化の中で増え続ける老人の医者通いに対応するため、高齢者だけの制度をつくることにした場合、どんな問題があるか
 ―キーワード―
高齢化 予防 健康転換 キャップ制 高齢者保険制度 世代間戦争 保険証 償還払い 現物給付 傷病手当金 保険者
○制度:財政上の理由からある部分の保険適用をやめるとすれば軽い病気と重い病気のどちらがよいか
 ―キーワード―
給付スタートライン 最高給付ライン 保険免責 混合診療 日米医療の差 経済規制と社会規制 国民医療費 医療費控除 腎臓移植 人工透析
○制度:誰もがどこかの医療保険に入らなければならないが、自分の好きな制度に入れるようにした場合、どんな問題があるか
 ―キーワード―
学食とレストラン・義務教育と私立学校 加入強制の合理性 社会保険誕生の背景 ビスマルク 官のメリット・デメリット 鉄道型と学校型 赤字企業の保険料負担と納税 租税法定主義と社会保険料 強制執行 消費税と納税者番号 外形標準課税と人頭税 目的税 負担と給付の対応性 社会保障個人口座 保険者自治 社会保険庁 機会の平等 福利の平等 結果の平等 夜警国家 福祉国家
○大病院へ患者が集中するため、3時間待って3分間診療が続くのは、病院・医師への報酬の決め方に問題があるという意見は正しいか
 ―キーワード―
大学病院への患者集中 病院経営と診療頻度 一人医師医療法人