Web Syllabus(講義概要)

平成21年度

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総合法学特講D 中江 章浩
選択  2単位
【法律】 09-1-1210-0382-08

1. 授業の内容(Course Description)
 リーガルマインドという言葉をよく耳にしますが、これは実社会という公道に自分の人生を乗り入れるための自動車免許のようなものです。いわば、実りある社会生活を送るためのパスポートといえ、「論理」+「論理を超えた洞察」という2面性を持っています。具体的には、論理性・抽象性(一般化できる能力)・実利性(現場重視)・システム性を持って物事を判断する能力のことで、物事を体系的に理解し、断片的な知識にあまりこだわりすぎないということを意味すると思います。このリーガルマインドのポイントは、様々な事件を同じものさしで解決すること(法的安定性)と、どの事件も皆が納得する結論になっていること(結果の妥当性)のバランスをどうとるかでしょう。そこで、本講座では受講者が、対立しあう利益を調整し問題解決への筋道をつけるための「法的安定性」と「結果の妥当性」のバランスのとり方を考えながら、公務員試験・行政書士試験などの各種資格試験問題を様々な角度から研究し、それに合格することを目標にします。全学部の方が受講できますので、ふるってご参加ください。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 警察官・消防官・法科大学院・国家公務員・県庁・市役所・行政書士・司法書士・社労士試験などに合格する
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 シラバス例題、テーマ研究、過去問研究の討論で評価
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 授業は自分なりに誠心誠意やるつもりですが、わざわざ聴講する程の価値があるとは思えませんので、出席はとりません。遅刻・早退も自由です。ただし、考えるための道具として法律の条文を使いますので、出席する場合は関連条文を持参してください。また、受講希望者はホームページ(http://nakaezemi.blog50.fc2.com)を見てゼミの雰囲気を知った上で、今までの勉強方法の反省点をamazonia@nifty.comに送信してください。希望者多数の場合は、これで合格者を決めます。
6.
授業の計画(Course Syllabus)
【9月第4週】
■憲法(人権)
○介護労働者が足りないのでインドネシアからケアワーカーを受け入れることは正しいか
―キーワード―
移民の是非、基本的人権の原理 基本的人権の限界 包括的基本権と法の下の平等 賦課方式 税と保険料 裁判所 国籍法と出入国管理法 日本人と地球人 グローバル化 情報革命、アファーマティブアクション、外国人の人権、
【10月1第週】
■憲法(統治)
○月3万円の国民年金しかない老人から介護保険料を取ることは正しいか
―キーワード―
租税法定主義 条例と告示 保険者機能 効率と公平 基礎年金水準 介護保険の減免3原則 外形標準課税 非営利法人と課税 生活保護基準以下 ワーキングプア
【10月2第週】
■行政法(組織)
○自治体に依頼していたフリーターからの年金保険料徴収を自ら行い始めた社会保険庁の徴収率が大幅に低下したのはなぜか
―キーワード―
国と地方の関係 機関訴訟 法定受託事務 法律と条例の関係 国家行政組織法 歳入庁構想 強制徴収 保険料免除 社会保障と官民分担 地方事務官 3層構造 自治事務 機関委任事務の廃止 地方分権推進法 一部負担金減免の可否
【10月3第週】
■行政法(補償)
○厚生労働省の認可した血液製剤「フィブリノゲン」の投与で、C型肝炎に感染した人は、誰にどんな責任を追及できるか
―キーワード―
官僚の個人責任 国家無責任原則 国家賠償法 費用負担者 損失補償法 自己責任 代位責任 公権力の行使 公務員 職務行為 典型的行政処分 違法性 故意・過失 予見可能性 回避可能性 公権力の不行使 独立行政法人 公の営造物 管理の瑕疵 費用負担者、過失構造論、旧過失論、新過失論、新新過失論
【10月4第週】
■国際法(国籍)
○第二次大戦中、軍需工場で働くため日本につれてこられた朝鮮人の孫は生活保護を受けることが出来るか
―キーワード―
外国人の人権、血統主義 生地主義 定住外国人の地方参政権 特別永住者 サンフランシスコ平和条約 二重国籍 国籍と市民権 無国籍問題 帰化申請 国際結婚 ワイマール憲法と在日朝鮮人 塩見訴訟 被爆者補償 反射的利益
【11月1第週】
■民法(総則物権)
○登記を持たない善意の転得者・登記を持つ悪意の転得者の保護は、転得者の出現が、原権利者の詐欺理由による取消の前後で変わるか
―キーワード―
民法の精神 私的自治の意味 対抗問題 登記の公信力 ドイツ登記制度 司法書士 抵当権と登記 公示機能 物権の効力 物権的請求権 費用負担 物権法定主義 物権変動 意思主義 形式主義 物権行為独自性説 有償性の原理 相続と登記 即時取得 明認方法 占有権
【11月2第週】
■テーマ研究
○2050年における日本の公的扶助のあり方
―キーワード―
水際作戦、世界人権宣言、ミーンズテスト、反射的利益・捕捉率・恤救規則・ワーキングプア・法定受託事務・自治事務・新自由主義・弁明の機会・行政手続法・ハイエク・濫用・裁量・国家責任の原理・無差別平等の原理・補足性の原理・取消訴訟・朝日訴訟・堀木訴訟
【11月3第週】
■民法(債権)
○無謀運転をしてきた対向車を、避けようとした18歳の貧乏学生が運転する車に、通勤途上で轢かれてしまったとき、どうすれば賠償を求められるか
―キーワード―
不法行為の要件、正当防衛・緊急避難の刑民比較 立証責任の相違 過失相殺、刑法と不法行為の責任能力 監督義務者 使用者 第3者のためにする契約、医療保険 自賠責保険、労災保険、通勤災害、損益相殺、保険代位、求償権、責任保険、損害保険、社会保険、三共自動車事件、
【11月4第週】
■民法(親族相続)
○両親の猛反対にもかかわらず駆け落ちした18歳カップルの婚姻は取り消せるか
―キーワード―
婚姻の成立 婚姻の無効・取消 離婚 制限行為能力制度の趣旨 遺言する能力 能力格差対策 行為・権利・意思・責任能力と法律行為 契約と不法行為 婚姻取消事由 法律婚主義 事実婚主義 成立要件主義 効力要件主義 同意なき婚姻も、完全・有効なものとして成立することになる(昭30・4・5最判(小)・裁判集民18巻61頁・家裁月報7巻5号33頁)
【12月1第週】
■商法(商行為)
○生命保険は強制加入ではないのに遺族年金に入らないでいることは出来ないのはなぜか
―キーワード―
商法の概念 商法の特色 商人の意義 絶対的商行為 付属的商行為 営業的商行為 営業の自由 商業使用人 代理商 商号 商業登記 商業帳簿 損害保険 利益の享受 生命保険証券 法定免責事由
【12月2第週】
■刑法(総論)
○世の中を悪くしているのは官僚であると思いつめて、厚労次官を襲撃してしまった中学生は牢屋に入るべきか
―キーワード―
非行少年 犯罪少年・触法少年・虞犯少年、児童相談所 少年法 違法性 責任 刑の適用と執行 起訴 国家賠償法 不法行為責任 児童福祉法 付添人 刑事処分 家庭裁判所 簡易送致、仮出獄、保護観察、刑事処分相当 検察官送致、逆送 刑務所 少年院、少年鑑別所、保安・保護処分、保安処分についての一元主義・二元主義の根拠
【12月3第週】
■刑法(各論)
○年金積立金を使って国民のためのリゾートを作ったが大赤字になってしまった官僚は、個人責任を問われないのか
―キーワード―
背任 委託関係 権限濫用説 背信説 事務処理者 二重抵当 財産上の事務 任務違背行為 冒険的取引 図利加害目的 身分上の利益 穴埋め背任 詐欺罪 委託物横領 大規模年金保養基地 匿名性 無名性 無謬性、贈収賄、公務員職権濫用罪、国賠法、
【12月4第週】
■経済学(マクロ)
○貧富の差を小さくするのは、年金ではなく福祉の仕事だという意見は正しいか
―キーワード―
ジニ係数 パレート最適 ロールズ的正義 マクロ経済 経済予測 社会保障の経済的な意味 所得再配分、マンデル・フレミングモデル、ワルラス法則、セイ法則、サプライサイド経済学、ラッファー曲線、需要の所得弾力性、ケインズ・ヒックスモデル、グレゴリーマンキュー、
【13月1第週】
■経済学(財政)
○年金積立金が公金無駄遣いの温床になっているという意見は正しいか
―キーワード―
年金積立金 国民負担率 補助金と負担金 年金特別会計、労働保険特別会計、財政投融資 財政法と会計法 多年度主義 金利 金融国家 産業国家 貨幣の役割 貨幣への需要 貨幣供給量 利子率 現在財 将来財 財政政策 金融政策
【13月2第週】
■経済学(税制)
○年金がつぶれるので、消費税を10%に上げるしかないという意見は正しいか
―キーワード―
年金債務 課税標準と課税対象 逆進性 累積債務 社会保障給付費 付加価値税と前方転嫁(前転)、 租税政策 直接税 間接税 徴税権 国債価格 政策金利、公定歩合 直接統制 スダクフレーション