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授業の内容(Course Description) |
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この授業では言語文化講読 I に引き続き、心に関する哲学的な問題を扱う。今期は特に自我とは何かについて考察する。これは、自我の存在を前提にした上でその性質について考えるのではなく、自我とは本当に存在するのか、という問いを主なものとする。自我は当然のごとく存在すると考えられている一方、実は決して認識対象にはならないことがその問題を提起している。他方で自我は、客観的存在としては観察されないにもかかわらず、主観的にはまぎれもなく認識主体の中心であり、それ抜きには世界さえ考えられないと思われるところに謎が集約されている。この授業では、近世以後の哲学的自我論の主なものを概観し、現代の心の哲学におけるそれにまでつなげる。
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2. |
授業の到達目標(Course Objectives) |
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目指すところは言語文化研究 I と同じ。こういった地道な読解と思考の訓練には、試験に受かるためとか、何かの資格をとるため、といった直接の目的はない。しかし目的がないからこそ、こうした訓練は直接の目標を持ったあらゆる勉学の底力となることを理解して頂きたい。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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学期末にレポートまたは試験を行う。出席は基本的に毎回とる。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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プリントにて配布する。
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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何事も、成し遂げるためには継続と忍耐力とが条件となる。この授業はそうした力の鍛錬でもあると考えて、それなりの覚悟で受講して頂きたい。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】・【第2回】 近世以後の西洋哲学における自我についての代表的な考え方の概観。デカルトの自我、カントの超越論的主観、フィヒテの自我、ニーチェの主体概念。 【第3回】~【第6回】 自由意志と自我。自我存在は自由意志を定立させ、自我の非存在は自由意志を否定するという構図は、選択的自由をこの自由意志と考える場合にのみ成り立つ。 【第7回】~【第9回】 無意識と行動。無意識的行動は機械論的に決定された行動と考えてよいか。客観的には決定されていると見えるが、主観的には決定性以前にある。 【第10回】~【第12回】 自我は反省されて初めて確認される。意志の自由も反省されて初めて確認される。では反省されない領域では自由はないのか。 【第13回】~【第15回】 自我以前の意識を場所として扱う立場。場所においては自由と決定、主観と客観という二分法が消滅。場所と関係した行為的直観の領域について。
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