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授業の内容(Course Description) |
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現代の社会は個人主義・自由主義の社会であり、個人の自由な活動や個人の権利が最大限に尊重される社会といえます。この自由主義は、現代を生きる私たちにとっても欠くことのできない行動原理ですが、そこにはいくつかの問題点が含まれているように思われます。たとえば現代社会では、個人は法に触れないかぎり、私的領域での自由を保証されていますが、私的領域での自由が増大することは、他者とのつながりを希薄化させ、相互に対する無関心の傾向を増大させることがあります。また個人が多様な価値を自由に選択し追求することは、幸福の実現のために必要であるとはいえ、自己の属するコミュニティへの帰属意識を失わせ、他者と共有できる共通の価値観を見失わせることにもつながります。このような自由主義の陥穽は、近代以降の社会が個人の自由や権利を至上の原理とみなし、自由のもつ本来の意味や役割を十分に位置づけてこなかったことに原因があるように思われます。 講義では、以上の趣旨のもとで、西洋の思想家たちの自由についての思想を紹介し、現代人にとっての自由の意味やその問題点について考えていくことにします。(講義の順番や内容は、若干変更することがあります。)
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授業の到達目標(Course Objectives) |
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・現代人にとって、自由のもつ意味や問題点を考えることができる。 ・現代社会についての問題意識をもち、既存の知識を整理・統合しながら、問題に対する自分なりの見解を論理的に表現することができる。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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2、3回に1回ほどの割合で、授業の内容について各自の見解を書いてもらい、それを平常点とする。その平常点と講義の最後に課すレポートの点数によって、総合的に評価する。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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教科書:なし 参考文献: 佐伯啓思 『自由とは何か』(講談社現代新書) 藤原保信 『自由主義の再検討』(岩波新書) 齋藤純一 『自由』(岩波書店)
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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大学は自ら主体的に学ぶ場です。さまざまな物事について興味や問題意識をもち、関連する資料を自分で収集して深く考え、自分なりの物の見方や考え方を確立できるように努めてください。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 講義の概要 【第2回】 現在リベラリズムの問題 ― 現代の自由主義のいくつかの特徴を示し、現代人にとっての自由の意味とその問題点について考える。 【第3回】 自由とは何か ― バーリンの『自由論』に即しながら、消極的自由(~からの自由)と積極的自由(~への自由)との違いについて考察する。 【第4回】 自由と孤独 ― フロムの『自由からの逃走』を読みながら、近代における自由の二面性について考察する。 【第5回】 自由と自律 ― カントの道徳哲学に即しながら、自由と自律との関係について説明する。 【第6回】 自由と他者危害 (1) ― ミルの『自由論』に即しながら、自己決定、他者危害原則としての自由について考察する。 【第7回】 自由と他者危害 (2) ― 喫煙の問題に即しながら、自己決定と愚行権との関わりについて考える。 【第8回】 自由と他者危害 (3) ― 中絶や性の商品化の問題に即しながら、他者(親しい人々)とのつながりにおける自由の意味とその限界について考察する。 【第9回】 自由と所有 (1) ― ロックの「自然権」(自己の生命・自由・財産に対する所有権)と自由との関わりについて考察する。 【第10回】 自由と所有 (2) ― 「私のからだは私のものである」という意味での身体の自己所有権とその問題点について考察する。(e.g. 臓器売買、性の商品化) 【第11回】 自殺の問題 ― 西洋における自殺論の系譜を概観し、自殺という行為の倫理的意味について考える。 【第12回】 安楽死の問題 ― 安楽死における 「死の自己決定権」の意味とその問題点について検討する。 【第13回】 自由と平等 ― 市場における自由競争のと問題に即しながら、自由と平等との関係について考える。 【第14回】 自由と共同体 ― 現代の自由主義の問題点を改めて確認する。 【第15回】 講義のまとめ
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