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授業の内容(Course Description) |
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近年の生命科学(先端医療)技術の進歩発展は、人間の生と死の現象への人為的介入を可能にしたが、その結果、多くの今日的課題を残してきた。たとえば、生をめぐっては、体外受精‐胚移植(IVF-ET)、男女産み分け、出生前診断と胎児治療、遺伝子診断と遺伝子治療などに対する「人間の尊厳」とは何かという新たな問いである。 また、死をめぐっては、脳死・臓器移植、持続的植物状態、ホスピス・緩和ケア、安楽死、自然死(尊厳死)など、現代人はかつてなかった「新たな死」の意味を再考する時にきている。 この授業では、私たちが常識としてなんとなくわかっているようでも今までつきつめてこなかった「人の死とは何か、生とは何か」という永遠なる命題を、身近な医療・臨床現場での問題とつき合わせて、生命倫理(バイオエシックス)の視座から問い直していきたい。通年にわたり、生命の誕生(秋期)から終焉(春期)にいたるまでの先端医療における社会的倫理的問題についてとり扱う。なお、今期授業では、「終末期医療」の具体的事例を取り上げ、ビデオ教材を使いながら、「いのちの問題」を掘り下げ考えていく。理解をより深めるために、通年の受講(ライフサイエンスII)が望ましいが、半期受講でも歓迎する。
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授業の到達目標(Course Objectives) |
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生命科学技術の現状を理解するとともに、基礎的知識を身につけ、生命倫理的課題について考える力を養うこと。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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定期本試験を80%、平常点として数回の10行程度の簡単なレポート(VTR感想文)提出等を20%として総合評価する。なお、毎回出席はとらないが、本試験は出席を前提とした内容(VTR感想文を書かせる問題など、試験は資料等持込不可)を出題する予定である。出席と授業への取り組みをもっとも重視する。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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とくに購入指定のテキストはなく、毎回配布する授業内容プリント(レジュメ)がテキストになる。授業中に「生命倫理・医療倫理」関連の参考文献リストを配布するので、自習に役立ててほしい。以下、推薦図書をあげておく(購入は強制しない)。 ・医療倫理Q&A刊行委員会 編『医療倫理Q&A』(太陽出版、2003) ・星野 一正 著『医療の倫理』(岩波新書、1991)
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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1.毎回授業に配布資料、ノートなどを持参すること。 2.ほぼ毎回ビデオ教材を用いて、レポート(感想文)提出を行うため、極力欠席・遅刻は控えること。とくに初回には、授業の進め方や評価方法など詳しく説明するので必ず出席すること。 3.授業中の「マナー」を守ること(私語、授業に関係のない行為、途中退室などは厳禁)。 ※この授業は、春期・秋期の通年受講が望ましいが、単位認定になんら影響しない。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 はじめに―授業の進め方や評価方法などの説明。 概論1―バイオエシックス(生命倫理)とは何か。 *以下に予定するテーマ及びビデオ内容は進行により変更する場合がある。 【第2回】 概論2―バイオエシックス誕生の歴史:人体実験に対する倫理的問題(「タスキギー事件」「ウィロー・ブルック事件」「ユダヤ人慢性疾患病院事件」)→患者の人権運動(1960年代米)→「患者の自己決定権」、「インフォームド・コンセント」。原理・原則:ビーチャム&チルドレス、エンゲルハート、J.Sミル。 【第3回】 概論3―患者の権利「インフォームド・コンセント」「自己決定権」。 Case Study―「エホバの証人輸血拒否問題」:QOL(生命の質)・SOL(生命の神聖さ)・医師の「善行の原則」(ビデオ:「生命倫理を考える―終わりのない8編の物語―」(丸善)1995 ②「花のプレゼント」)。 【第4回】 終末期医療1―緩和ケア①末期がん患者へのケア:ホスピスケア・ビハーラケア(緩和ケア)。 Case Study―「いのちを見つめる」1(ビデオ:「故郷・いのちの日々~長岡西病院・ビハーラ病棟の一年」(読売)1995)。 【第5回】 終末期医療2―緩和ケア②「緩和ケア」に関する概論。日本と海外との現状比較。 Case Study―「いのちを見つめる」2(ビデオ:「ETV特集:病と死をみつめて 中川米造の遺言」(NHK教育)1997)。 【第6回】 終末期医療3―緩和ケア③「緩和ケア病棟における末期がん患者へのこころのケア」。 Case Study―「宗教的アプローチによる『スピリチュアル・ケア』の可能性とは?」(調査報告)(ビデオ:「宗教の時間―「宗教と医療の10年~人間・自然・いのち~新しい時代をみつめて」」1997)。 【第7回】 終末期医療4―安楽死①オランダの事例。「ガイドライン」の説明。 Case Study―「自己決定の主張(容認派)VS.生命至上主義、すべり坂論の主張(反対派)」(ビデオ:「安楽死がついにドキュメントされた!~依頼された死~スペースJスペシャル」(毎日)1994 【第8回】 終末期医療5―安楽死②日本の事例。「ガイドライン」の説明。 Case Study―「山内事件(62)」「東海大「安楽死」事件(95)」「国保京北町「安楽死」事件(96)」。(ビデオ:「続・安楽死スペシャル~スペースJスペシャル」(毎日)1994 【第9回】 終末期医療6―尊厳死①米国の事例。「リビング・ウィル」・「事前指示」。蘇生拒否(DNR)。 Case Study―「カレン・アン・クインラン裁判(75-76)」「ナンシー・クルーザン裁判(83-92)」。(ビデオ:「医療倫理 いのちは誰のものか―ダックス・コワートの場合」(丸善)1995前編/後編)。 【第10回】 終末期医療7―尊厳死②日本の事例。「リビング・ウィル」・「事前指示」。蘇生拒否(DNR)。 Case Study―「スズメバチ事件(92)」「京都・特養ホーム事件」(97)」。(ビデオ:「生命倫理を考える―終わりのない8編の物語―」(丸善)1995①「老人の友」)。 【第11回】 終末期医療8―脳死と臓器移植①「臓器移植法」。「脳死判定への疑問」。「低体温療法」。 Case Study―「脳死はヒトの死か?」(ビデオ:「NHKスペシャル91’脳死移植は始まるのか?」1991)。 【第12回】 終末期医療9―脳死と臓器移植②「ドナーカード」の海外事情比較。 Case Study―「日本の脳死・臓器移植の問題点」(ビデオ:「ティーンズTV・ワールドドキュメント 脳死移植~生と死の問いかけ」(NHK教育)2001)。 【第13回】 生体移植―「臓器移植」が意味するものとは? Case Study―「京大の乳児への小腸移植」。「生体臓器提供」(ビデオ:「呼吸と命~生体臓器提供が究極の愛なのか?」(丸善)2000) 【第14回】 総まとめと復習。 定期本試験の対策問題の演習。 【第15回】 まとめ・定期試験
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