Web Syllabus(講義概要)

平成21年度

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法律学演習 III 小坂 紀一郎
選択  2単位
【法律】 09-1-1210-0208-11A

1. 授業の内容(Course Description)
 満男 「大学へ行くのは何のためかな」
 寅さん「決まっているでしょう、それは勉強するためです」
 満男 「じゃあ、何のために勉強するの」
 寅さん「…つまり、あれだよ、ほら、人間長く生きてりゃ色んなことにぶつかる
     だろう、そんな時に俺みたいに勉強してない奴は、振ったサイコロの出た
     目で決めるとかその日の気分で決めるよりしようがない。ところが、勉強
     した奴は自分の頭できちんと筋道を立てて、こういう時はどうしたらいい
     かなと考えることが出来るんだなあ。だからみんな大学へ行くんじゃねえか」
           ――山田洋次監督作品『男はつらいよ・寅次郎サラダ記念日』より
(1)君たちが将来どんな職業につくとしても、必ず、自分で解決しなければならない現実の問題にぶつかるでしょう。そのとき、大学で学んだことが役に立たなければ大学に来る意味はありません。法学部で学ぶ真の目的は、「法律的な物の見方・考え方」を身につけることにあると言われます。問題の本質をつかみ、色々な角度から様々な解決策を考え、その中から状況に合わせて最も適当な答を見出すこと、この過程は全ての問題解決に共通しています。
(2)「法律的な考え方」を身につけるための一番の道は、具体的な課題に取り組んでみること、それを通じて訓練を積むことです。ちょうどスポーツの練習で繰り返し体に覚えさせることによって、試合に臨むことができるように、繰り返し繰り返し、基本的な問題を考えることによって、社会に出てから応用の効く生きた知識を自分の物にすることができるのです。
(3)本当は、この訓練は、法学部の全ての科目を通じて必要なのですが、大教室での大人数の授業では難しいのが現実です。そこで、それを補うためにこの法律学演習があるのです。皆が問題を一緒に考え、議論し、答を出す少人数でしかできない授業です。
 この科目では、現に問題となっている行政の政策課題やそれに関連する法律問題を取り上げ、ディベート方式で検討することによって、考える力を養うことを目的としています。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 問題の急所をつかみ、自分の頭で論理的に考え、自分の表現で相手に伝えることのできる力が少しでもついたかな、という感じを持てるようにする。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 演習での学習態度、準備の具合、発言内容などの総合評価による。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 『行政研究事例集』(印刷教材、小坂作成)を使用する。
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
(1)行政法を履修していることが望ましい。
(2)「1.授業の目的」を理解し、積極的に学びたいと欲する学生の参加を期待する。
(3)毎回の授業のために必ず準備すること。それがなければこの授業の意味は無い。
6.
授業の計画(Course Syllabus)
 年度の前半は、ディベートを行うための準備として、論理の基礎を勉強する。
 年度の後半は、グループ対抗のディベート形式で行政の事例を検討する。
(1)教室は、模擬法廷を使う。
(2)ゼミ生は、班に分かれ、事例ごとに、賛成チーム(原告側)、反対チーム(被告側)、司会チーム、審判チームを決め、それぞれ担当する。その他のゼミ生は、審判団に加わる。
(3)司会チームの進行の下、賛成チームおよび反対チームが次の順序で討論する。
  ① 主張
  ② 質問
  ③ 反論
  ④ 結論
  ⑤ 審判団が「ディベート判定表」に基づき、判定する。
  ⑥ 審判チームが集計し、勝者を決定する。
 教授が講評・解説する。
(4)ディベート討論の課題は、次のようなものである。
 (20年度前期の例)
  ① 選挙権を18歳以上にすることに賛成か反対か。
  ② 死刑を廃止することに賛成か反対か。
  ③ 外国人単純労働者を受け入れることに賛成か反対か。
 (20年度の『行政研究事例集』から)
  ① 警察官職務質問ストレス障害事件
    警察官の職務質問が原因で心的外傷後ストレス障害(PTSD)になったとして、中学3年の女子生徒がS県を相手取り、損害賠償を求める訴訟を提起した。
    訴えによれば、平成16年11月、当時中学1年生だった原告が帰宅中、駐在所勤務の私服の巡査部長に呼び止められた。このとき、巡査部長は警察手帳を提示しなかった。巡査部長は、自転車窃盗事件の捜査中であった。生徒は変質者だと思い、追ってくる巡査部長から逃げた。
    その出来事の後、ショックが残り、眠れなくなるなどの症状を発症し、PTSDと診断され、現在も登校できないでいるという。
  ② 救急患者受け入れ拒否事件
    子供が窒息死したのは市立病院の受け入れに問題があったからであるとして、遺族がK市を相手取り、損害賠償を求める訴訟を提起した。
    平成20年8月、2歳の男児がこんにゃくゼリーをのどに詰まらせたため、その約20分後に119番で救急車の出動要請があり、約8分後に救急隊が到着し、市立病院に受け入れを要請したところ、同病院は他の小児救急患者の受け入れが決まっていたことからそれを拒否した。他に受け入れてくれる病院が無かったため、それから約10分後に再度救急隊員が同病院に連絡して、許可を受けた後に搬送したが、男児は同日夜死亡した。
    遺族は、診療拒否が無ければ、命を取り留めることができたはずであると主張して提訴した。
7.ゼミ生の感想
 20年度前期の授業についてゼミ生から次の感想が寄せられた。
  ・自分自身が実践してやれるので楽しい。
  ・チームでやることでまとまりも生まれ楽しかった。
  ・班で集まって勉強したり、個人で調べたり、有意義に過ごせた。
  ・勝ったときがとてもうれしい。
  ・調べてきたことを仲間同士で議論する楽しみを知った。
  ・面白いし、ためになった。
  ・班の人と仲良くなるし、ディベート準備の過程でも得るものがたくさんあった。