Web Syllabus(講義概要)

平成21年度

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近代文学研究 I 堤  玄太
必修  2単位
【日本文化】 09-1-1310-0365-11A

1. 授業の内容(Course Description)
 【文化テクストとしての「ニッポンの詩」 I】
 「<日本の近現代詩>とは何か?」ということを考えていこう。目標は以下のとおり。
 1.明治・大正から現代に至るまで、それぞれの時代を飾った詩作品を実際に読み、詩のうたわれた背景に目を向けることで日本近代詩史の流れを浮き彫りにすることを目指す。
→近現代文化史入門として。
 2.単に詩作品に限定しないで<詩的>な表現をしたさまざまな創作――詩・散文はもちろん、映像作品・音楽(歌謡曲・J‐pop)・コミック等――まで視野に広げて鑑賞・解釈を試み、<詩>がどうして生まれるのか、というところまで踏み込んで考えてみることを目指す。
→近現代日本表現芸術に対する理解。
 3.詩作品の背後に潜む詩人の<主観>を窓にして、時代時代の色やにおいまでも感じ取ることができることを目指す。
→詩的感受性の養成。社会史・思想史へのまなざしの拡張。
 ※以上の三点を極めることは、人文社会系の諸分野を考えるための一助となることを保証する。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 ・1年次として最低限必要な読解力・資料整理の技術・論述の作法などを身につけて、2年次以降の準備とする。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 出席点(50%)+レポート(又は試験)の点(50%)で算出。
 平常点も加味する。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 プリントを配布する。
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 二年次に小説・歌詞作品の授業を開講しているものの、この一年間はまず詩とおつきあい願います。高校までの間に教科書を通じて詩作品が好きになった人はもちろん、詩がわからず嫌いになって現在に至ってしまった人にも何かが残る授業にしたいと考えています。質問・提案などなど意欲的な参加を期待します。また、詩や文学に限らず、何かを創作している人/したい人(ex 歌・音楽・バンド・舞台・絵画・造形・書・写真・映画・演出・番組制作等々)の参加も待っています。単位認定に関係しては便覧規定に従うものの、他学部聴講も大歓迎であります。
6.
授業の計画(Course Syllabus)
 ☆以下の4点についてご了承下さい。
  ・授業計画はあくまで概説なので不明な点もあるかと思いますが、詳細は教室で解決できるのでお待ちください。
  ・教室の理解度に応じて、授業の進度が多少変動することがあります。
  ・講義改良のため、予告なく授業内容を変更する場合があります。
【第1回】
 はじめのいっぽ
 この四年間のガイダンスである。具体的には、大学での授業の受け方、勉強の仕方、施設の活用法など学生としてどのように大学や授業にコミットしていけばよいのか、ということについて概説したい。また、履修の方法などカリキュラムに関しての質問なども受け付ける予定である。
【第2回】
 一年間のガイダンス
 ぼつぼつ本題に入っていくことにする。この一年間、我々はどのように射程を広げて問題にあたっていけばよいのかを解説したい。具体的には、教科書で見てきたような文学作品としての詩のほかに、書作品や絵本のような絵画詩、ヒット曲などのの歌詞、ストリートポエムなどといったさまざまな詩的についてまでまなざしを広げてゆきたい。
【第3回】
 ≪詩≫って何さ?
 現在、我々が普通に「詩」と読んでいるものは、今から約百年前に「新体詩」という名称のもとで誕生した。明治時代に欧米から多くの文化が流入してきたなかで、まったく新しいジャンルの文芸がどのように生まれたのであろうか?検証してゆきたい。
【第4回】
 『新体詩抄』の成立
 明治15年、欧米の詩作品の翻訳を中心とした詩集『新体詩抄』が世に問われた。この詩集について、①どういう点が新しかったのか、②どういう部分に問題が残ったのかという二つにポイントを絞って、当時の証言などを援用しつつ、検証していきたい。
【第5回】
 漢詩(?)古詩(?)訳詩(?)
 春学期の中で一番のヤマ場に入る。『新体詩抄』の主要作品を実際に解読し、鑑賞までこぎつけよう。当時の詩人たちが直面していた問題点が実感できればしめたものである。また、明治期の文語文読解トレーニングも併せて行うこととする。しんどいところであるが、何とか乗り切ってもらいたい。
【第6回】
 訳詩の抱える問題点
 ちょっと一休み。ここで視野を現代にまで広げてみよう。明治初期の翻訳詩が抱えていた問題は、決して現代でも解決してはいないのである。具体的に戦前の小学唱歌、戦後以降の洋楽カバー曲の歌詞などを検討してゆくこととしたい。
【第7回】
 ジャパンオリジナル!!
 明治初期の詩人たちが欧米の詩をまず翻訳して作品化していたのを横目でみつつ、いよいよ第二世代が登場する。即ち、自分の感情や思想をゼロから日本語で組み立てて完全なオリジナル詩作品を創作する詩人たちである。ここでは、自由民権運動の闘士でもあった北村 透谷、後に作家としても大成する島崎 藤村の二人に焦点を当ててゆくことにしたい。文学史で言えばこの時期は浪漫主義文学の始発期にあたり、透谷と藤村は雑誌「文学界」で活躍している。
【第8回】
 恋を恋する恋愛詩(?)
 引き続き浪漫主義初期に光を当てる。今回は島崎 藤村の『若菜集』を読むことにする。この詩集には、恋愛を歌った作品が多く収録されている。江戸時代まで、言葉として存在しなかった<恋愛>という感覚を当時の男性たちはどのようにうけとめていたのか、そしてここで歌われている<恋愛>の感覚は現在のわれわれの持つ意識とどこまでつながっているのか、考察してみることにしたい。
【第9回】
 〈彼女〉が恋を歌ったら…
 浪漫主義文学の流行していた時期は、一面では恋の季節であったと言っても過言ではない。今回は、赤裸々に自分の恋愛を歌った歌人与謝野 晶子を取り上げることとしたい。彼女の夫与謝野 鉄幹とともに支えていた雑誌「明星」にも言及しつつ、彼女の作品が男性の手による作品と意識の上で何が違うのかということについても、考えを深めてゆきたい。
【第10回】
 「明星」から「スバル」へ
 明治末期になると、文学の流行にもひとつの変化が訪れる。詩に関しては、それまで覇権を握っていた「明星」が絶対的な存在とはなくなる一方で雑誌「スバル」が創刊されるにいたる。この顛末について整理して考えていきたい。詩では、北原 白秋・石川 啄木 作品を読むこととしたい。
【第11回】
 明治《音》の風景
 再び気分転換。今回は視点を変えて、ここまで見てきた詩の流れとは別の水脈ををおさえることとしたい。具体的には、①当時の街中で口コミで伝播していった俗謡・流行歌、②料亭や遊郭のお座敷で夜な夜な歌われていたであろう小唄など、③国内各地に設立されたキリスト教教会を中心に流通した邦訳賛美歌、④文部省主導で全国に流布した小・中学唱歌などなど…。歌詞という視点でみればこれらも立派な氏なのである。
【第12回】
 春学期のまとめ
 この約十回の間に学んだ内容を実際に文学史の表を使いつつ、立体的なイメージで各自のアタマに定着させることを目指す。同時に夏期に課するレポート内容の発表、およびレポート執筆の方法論などもお伝えできれば、と思っている。
【第13回】・【第14回】
 進度調整のための予備時間
【第15回】
 まとめ