Web Syllabus(講義概要)

平成22年度

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財政政策論 II 河野 惟隆
選択必修  2単位
【経済】 10-1-1110-0205-04

1. 授業の内容(Course Description)
  先進国の中で、アメリカやドイツと異なる、日本の最大の特徴は、全国的に同じ水準の道路が存在し、全国的に同じ水準の義務教育や福祉が実現されていることである。これらの実現が可能になっているのは、経済力の高い地域から低い地域へ所得再分配が行われているからである。地域間所得再分配である。これを背後で支えている考えは、公平を実現する、という考えである。アメリカやドイツと異なり、その是非はさておき、日本は、先進国の中で最も公平を重視する国なのである。
 地域間所得再分配の制度化が、国の、都道府県や市町村などの地方公共団体への補助金であり、具体的には、地方交付税と国庫支出金である。前者の地方交付税は、経済力の差異に応じて、国から補助金が交付され、その際、国では主たる税収である所得税と法人税の一定額を充当することが法定されている。地方交付税は、使途を特定されない一般財源と言われているが、事実上は、特定財源である。後者の国庫支出金は、基本的には、使途を特定され、特定財源といわれ、全国的に同じ比率で補助されるが、その財源の国税が、地域間の経済力の差異に応じて格差をつけて徴収されるので、結果として、地域間所得再分配が実現されている。国庫支出金は、地方交付税の変形であり、地方交付税を理解すれば、国庫支出金の理解は簡単である。そこで、この講義では主として、地方交付税について述べることにする。
 地方財政の地方には、東京都や神奈川県・埼玉県・千葉県の一都三県、大阪府・京都府・兵庫県そして愛知県も含まれる。又、東京23区・三鷹市・武蔵野市・八王子市・多摩市や横浜市・川崎市・さいたま市・千葉市や大阪市・京都市・神戸市や名古屋市も含まれる。結局、地方財政の地方とは、大都市と地方都市という地方でもなければ、中央と地方という地方でもなく、国=政府に対する地方公共団体という場合の地方なのである。そのような意味での地方財政について述べる。
 講義では、学界の通説を検討しながら、述べることにする。

 
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 学生の皆さんは、卒業して社会に出たとき、仕事の上において、或いは、広く人生において、様々な場面に遭遇する。それらの場面それぞれを、臨機応変に分析でき、対策を立てられるようにする。原因と結果、目的と手段などを明らかにし、対策を立てられるようにする。自分のアタマで考えられるようにする。暗記では、分析できない。様々な場面それぞれを、自分のアタマで、考えて、判断でき、対策を立てられるようにする。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 定期試験による。講義で述べたものから出題する。出欠は取らないが、出席した方が回答し易い、そんな出題を行う。例えば、文章の穴埋め問題では、出席していない人にとっては、文章がつながらないチンプンカンプンなものであろう。出席している人にとっては、普通につながるであろう。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 河野 惟隆『地方交付税と地方分権』税務経理協会。
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 日々の経済現象には、原因があり、過程があり、結果があり、それに対して、対策がある。その対策が、また、因となり、果となってゆく。このように、経済現象は、繰り返す法則として、存在する。学生の皆さんには、経済学は、何よりも、経済現象を、因果関係として明らかにし、対策を立てる、学問である、と理解してもらいたい。この講義では、日本の現実の経済の中における、地方財政の因果関係と対策について述べる。
6.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 地方交付税と地方分権
【第2回】
 地方交付税の特定財源性(その1)
【第3回】
 地方交付税の特定財源性(その2)
【第4回】
 地方交付税の劣後性(その1)
【第5回】
 地方交付税の劣後性(その2)
【第6回】
 地方交付税の大都市交付の正当性(その1)
【第7回】
 地方交付税の大都市交付の正当性(その2)
【第8回】
 地方交付税による地域間所得再分配(その1)
【第9回】
 地方交付税による地域間所得再分配(その2)
【第10回】
 地方交付税と直轄事業負担金(その1)
【第11回】
 地方交付税と直轄事業負担金(その2)
【第12回】
 地方交付税・国庫支出金と三位一体改革(その1)
【第13回】
 地方交付税・国庫支出金と三位一体改革(その2)
【第14回】
 政府系金融機関の「民営化」という改革案(その1)
【第15回】
 政府系金融機関の「民営化」という改革案(その2)