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授業の内容(Course Description) |
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本年度の春期では、現代の環境思想の流れを概観する。環境とは人間の欲求と自我の拡大という、これまで人類の「発展」と考えられてきたことに対して、根本的に矛盾する面を持っている。環境は閉じられた自我の欲求に応えるものではなく、そこへの配慮は自我の拡大という方向の抑制とそこからの転換を要求する。 そしてこの抑制は、古来どの宗教の内部においても、重要な精神的徳目のひとつとして数えられていた。したがって環境への配慮と宗教とは、重なる共通の地平を持ち、そこを考察することがこの授業の内容になる。その際には、人間における利己性の克服がどこまで可能かを探求した思想家を幾人か取り上げる。
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2. |
授業の到達目標(Course Objectives) |
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環境思想を通じて人間性について理解すること。そのための思考力を鍛錬すること。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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学期末に試験を行う。基本的に出席は毎回とる。
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4. |
テキスト・参考文献(Textbooks) |
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プリントを適宜配布する。
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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可能な限りかみ砕いて解説するつもりだが、思想の根幹の部分は妥協せず伝えたいと考えている。したがって、決してやさしくはないので、それに耐える気力のある者の受講を希望する。単位取得の安易さを見こんだ履修は厳に慎んで頂きたい。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】~【第3回】 環境思想のいくつかの区分。人間中心主義のいくつかのタイプ、非人間中心主義のいくつかのタイプ。それらの守備範囲が重なる部分についての検討。および人間の欲求変容を唱える思想について。 【第4回】~【第6回】 環境自体に価値があるという思想。レオポルドの土地倫理、ナッシュの自然が持つ権利の思想。これらが人間による経済的な価値意識から外れているとすれば、それらは何を根拠とするか。 【第7回】~【第9回】 プリマックの保全生物学。生物種が持つ経済的価値と、生物種に内在する価値との違い。生物の多様が自然の耐久性につながるという事実と、その多様性自体に価値があることとの区別。 【第10回】~【第12回】 ディープエコロジー運動とアルネ・ネスの思想。自己の拡大と利他的行為との関係。自己愛の投影と利他性との違い。道徳的義務感情と、利他的行為が自発的に行われる場合との違い。利他的行為と美しさとの関係。 【第13回】~【第15回】 エルンスト・シューマッハーの思想。何のための経済活動か、という問い直し。消費の最大化ではなく、満足の最大化という経済目標。人間存在の段階とそれに相応した欲求の段階との相関関係。全体のまとめ。
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