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授業の内容(Course Description) |
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現代の精神医学においては、医療経済的要請に基づいた実証研究が隆盛しており、我々はその表面的とも見える知見を追うことに捉われざるを得ない。このため「人間」やその「精神病理(病的心理)」についての深い論考は蔑ろにされざるを得ない傾向がある。 本講義では、最近の日本の精神病理学界を牽引してきた著者の比較的平易な言葉で著された「臨床学」に関する深い体系的な論考を読み、熟考し、討論する事を通して、自分自身を含めた人間理解を深める事をめざす。
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2. |
授業の到達目標(Course Objectives) |
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系統講義では得られない生き生きとした臨床精神病理学的考え方の概略をつかみ、自分自身を含めた人間理解を深めると同時に、発表、レジュメ作成、討論などを通じて、更なる社会人基礎力の養成をめざす。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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発表、討論への義務としての参加、レポート(レジュメ)で60%とし、そのほか、自主的な討論頻度(1回の発言につき5%評価をあげる予定である)、内容、態度などを組み合わせ、総合的に評価する。演習形式の講義なので出席を重視する。半分以上欠席した場合は単位を認定しない。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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テキスト:『精神科臨床とは何か―日々新たなる経験のために』 (単行本) 内海 健 (著)星和書店
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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適宜池田のHP(http://appsv.main.teikyo-u.ac.jp/~m-ikeda/index.htm)を参照すること。 真剣に学ぼうとしている他の履修者に迷惑をかけないこと(私語、携帯電話、発表者・討論者など担当した役割の無断放棄など)。 創造的、主体的な参加が望まれる。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 指定したテキストあるいは文献の分担=発表者と討論者を決める。発表者は、事前に十分に内容を理解するよう努力して、それを要約したレジュメや参考文献、参考資料を準備し、A4で2~3枚程度にまとめ、当日は他の履修者が内容を理解できるように発表をする。討論者には、質問と討論の中心となることが求められる。発表者はこうした質問や討論に対応できるだけの準備が求められることになる。他の履修者も、事前にテキストの該当部分を読んで出席し、積極的に討論に参加することが求められる。概ね以下のような予定で進めるが、日程や進行具合で適宜調整する。 【第2回】~【第15回】 発表と討論 第1講 「精神」の扉を開く 1.生命史を読む 2.人類は自然に逆らって進化した 3.脳は畸型臓器である 第2講 脳と心 1.脳と心の関係について-先人たちはどのように考えてきたのか 2.心の創発 3.自由の発見 第3講 「私」が立ち上がるとき 1.鏡の中の私 2.2つの自己が立ち上がる 3.「ほら、僕よ」-まなざしの力 4.純粋な贈与 第4講 言葉への道 1.人間は言語をどうとらえてきたのか 2.フォルト/ダー 3.A=Aということ 第5講 臨床的他者論―患者とどう向き合うか 1.他者とはどのような存在なのか 2.他者が先にいた 3.臨床場面における他者 4.了解と受容-その起源 第6講 精神科面接の基礎 1.面接を始める 2.話す、放す、離す-語りのダイナミズム 3.面接を展開する 4.正常な自分をちょっとのあいだ脇に置いておく 第7講 治療と文化―臨床をとりまくもの 1.Sick roleについて 2.臨床の外側の現実 3.Sick roleのゆくえ 第8講 精神科臨床のゆくえ 1.「人間」の概念について 2.統合失調症のゆくえ 3.うつ病のゆくえ 4.精神科臨床の今後
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