Web Syllabus(講義概要)

平成22年度

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バイオサイエンス II 益子 計夫
3群  2単位
【三群】 10-1-1607-0487-02

1. 授業の内容(Course Description)
 それぞれの生物は、種、集団および個体を基本単位として固有の形態的、生理的、生態的特性をもって生存している。これらは、共通の祖先種(集団)が、その遺伝的連続性(時間的つながり)を保ちながらも、さまざまな方向へと多様化した結果によるものである。、ヒトという生物種も、この「生命の糸」の延長上にあることを忘れてはならないだろう。このような連続性と多様性の背景をなすものが、遺伝子として書き込まれた情報の伝達と、その過程で生ずる遺伝的変異である。
 この講義では、春期(前期)のバイオサイエンス I の履修を踏まえ、量的形質の遺伝や生物集団を単位とする遺伝現象への理解をすすめてゆく。それを通して、「時間軸上の存在としてのヒトや自然生物集団」への認識を深化させる契機としたい。
 なお、以下の授業計画の進め方は、受講者の基礎的知識の如何によっては多少変更することがある。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 生命のありようについて幅広く理解を深め、たとえば,「人種」間の遺伝的差異とその要因、自然生物集団の遺伝的多様性、あるいはヒトの遺伝的疾患に医療はどのように対処すべきかなどの問題を自分自身の言葉で考えられるようになること。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 期末試験(成績評価上のウエイトとして、おおよそ70%)および出席状況や課題提出物等(同30%)により総合的に評価する。なお、受講者数等の状況によっては、レポート等による評価に代える場合もある。その場合には講義中に指示する。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキスト:『人間の遺伝学』S. シンガー 著(関谷 訳)、東京化学同人
さらに、随時配付されるプリント資料を教材として活用する。
 参考文献:『現代進化学入門』C. パターソン 著、岩波書店
『生物進化を考える』木村資生著、岩波書店(新書)
『遺伝学概説』J. F. クロー著、培風館
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 特記事項はバイオサイエンス I に同じ。さらに、この講義は同一担当者のバイオサイエンス I を履修した後に、もしくは、それに相応する知識のあることを前提とする。受講にあたっては、多少の数理的素養があることが望ましい。簡単な四則計算のできる卓上計算機を準備してくること。規定回数の出席は必須である。
6.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 はじめに
  講義の概要と留意事項の説明を行う。
【第2回】
 量的遺伝形質(1)
  ヒトの身長や体重など、個体間の差異が量的に発現する形質は、そのままではメンデル理論が適用されない。しかし、複数の遺伝子座の累積効果を組み入れることにより、取り扱いが可能となることを概説する。
【第3回】
 量的遺伝形質(2)続き。
【第4回】
 遺伝率の推定(1)
  遺伝率の理解をはかるための予備知識として、分散、共分散、回帰、相関などいくつかの基本統計量を概説する。
【第5回】
 遺伝率の推定(2)
  形質発現における遺伝作用と環境作用の相対的効果を区別する基本概念としての遺伝率を解説する。
【第6回】
 遺伝率の推定(3)
  実際に遺伝率を計算してみる。
【第7回】
 生物集団の遺伝(1)
  集団レベルで遺伝や進化現象を扱う場合の基礎となる遺伝子型頻度および遺伝子頻度の考え方を説明する。
【第8回】
 生物集団の遺伝(2)
  集団レベルで遺伝現象を扱う際の基本原理としてのハーデイ・ワインベルグの法則を理解する。
【第9回】
 生物集団の遺伝(3)
  遺伝子頻度を変化させる要因としての突然変異、集団間の移住を説明する。
【第10回】
 生物集団の遺伝(4)
  自然選択はいかに遺伝子頻度を変化させるか解説する。
【第11回】
 生物集団の遺伝(5)
  自然選択はいかに遺伝子頻度を変化させるか解説する(続)。
【第12回】
 生物集団の遺伝(6)
  遺伝子頻度を変化させる要因としての遺伝的浮動を説明する。
【第13回】
 突然変異と分子進化
  いわゆる分子レベルの進化に関する中立説を概説する。
【第14回】
 遺伝子重複
  進化的変化をひき起こす要因としての遺伝子重複を説明する。
【第15回】
 まとめ、および試験(予定)