Web Syllabus(講義概要)

平成22年度

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乳児保育 金田 利子
選択  2単位
【教育】 10-1-1330-2733-01

1. 授業の内容(Course Description)
 社会的な乳児保育を中心に家庭保育や子育て支援との連携を視野にすすめる。社会的な乳児保育は父母の労働権と親権の、そしてそれらと子どもの発達権・養育権の矛盾を、言い換えればジェンダー問題を克服する所から生まれてきた保育事業であること、それ故に常に社会の動きと関わってきたことを理解し、乳児保育をめぐる様々な論争を踏まえつつ次のような内容を取り上げる。
 Ⅰ.発達論(①乳児保育の範囲、医学的・心理学的定義とは異なり、3差未満までを含むこととその意味について、②人間発達における乳児期の意義、③発達するとはどんなことか、④0歳から3歳未満の発達の特徴と保育の関係)
 Ⅱ.保育論・保育実践論(①保育の構造、②形態、③乳児の生活と保育内容、保育実践を捉える視点・様々な保育実践とその歴史)
 Ⅲ.制度政策論(乳児保育の制度とその歴史)
 Ⅳ.家庭保育と集団保育との関係(誰が乳児を育てるのか。母子関係と集団保育をめぐる様々な論争を紹介しつつ討論も入れて考え合う。)
 Ⅴ.保育における乳児保育の位置と地域社会・子育て支援における役割
 Ⅵ.乳児保育の国際比較
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 以下の点の理解力と実践力及び考察力をつける。
 ①乳児保育は常に社会の動きとかかわりながら存在してきたことの理解
 ②3歳未満児の発達特徴を踏まえた保育方法の理解と実践力の基礎
 ③制度・政策と実践の歴史や、国際的比較から日本での今日の課題の考察力
 ④社会的乳児保育と次世代育成事業とのかかわりの理解・考察力
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 以下の諸点から総合的に行う。
 ①授業への参加姿勢を問う
 ②課題提出および自らの主体的な取り組みを問う
 ③期末試験(これまでの振り返り・まとめとして有効に活かす機会)
 自己評価や相互評価なども工夫して取り入れていきたい。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキスト:
 ①全国保育問題研究協議会編(鈴木・金田・河田・杉山・中川・浅野共著)
  『かかわりを育てる乳児保育』新読書社
 ②『新版 資料で分かる乳児の保育新時代』ひとなる書房
 参考文献:授業の中で適宜に紹介
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 保育問題の多くが乳児期の子育てから来ていると言っても過言ではない。
 ぜひ、今日の保育問題に関心を持ち、そうした課題に取り組んでいる社会的な研究・運動などにもかかわり、かつ、様々な文献に当たり、自分の頭で考え、どうしていくのがよいか、問題意識を鮮明にしてもらいたい。そしてその考察を提起し、授業に反映していくよう望む。
6.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 乳児保育とは
  ①保育界での乳児保育の対象は3歳未満児であること、その理由。
  ②社会的乳児保育の起こりと発展過程から乳児保育を概観する。
【第2回】
 発達と保育(1)発達とは何か:乳児から学ぶ-赤ちゃんを観察してこよう-
  ①人間発達における乳児期の意義と保育。
  ②発達するとはどんなことか-生涯発達を見通す中で-
【第3回】
 発達と保育(2)胎児期から0歳前半まで
  ①乳幼児期における発達過程の見通しを持つ
  ②0歳前半の発達と保育
【第4回】
 発達と保育(3)0歳後半から1歳半へ
  ①0歳後半の発達と保育
  ②ひとみしり、姿勢の変化、指さし、言葉の獲得(三項関係)と保育
【第5回】
 発達と保育(4)1歳半前後から2歳へ
  ①1歳半の節とは何か
  ②認知の発達・自我の形成と保育上の課題(選択契機の重要性)
【第6回】
 発達と保育(5)2歳から3歳へ
  ①2歳児の発達特徴と保育(自我の拡大、他者への意識、ごっこ遊びへ)
  ②1,2歳児の保育問題(「かみつき」など)から考える
【第7回】
 保育論・実践論(1)乳児保育の内容と方法の全体像
  ①その構造-生活・遊び・課業-
  ②日課をどう組むか、環境をどう整えるか
【第8回】
 保育論・実践論(2)養護と教育の統一
  ①基本的生活習慣の中でケアしつつ文化を伝える
  ②安全と発達の矛盾をどう乗り越えていくか
【第9回】
 保育論・実践論(3)具体的保育の展開
  ①睡眠・食事・排泄と諸活動の関連
  ②乳児期の遊びと課業(散歩・赤ちゃん体操他)の関連と保育技術の基本
【第10回】
 保育論・実践論(4)様々な実践の検討
  ①実践上の諸論争とその克服の歴史
  ②保育観と保育実践の方法
【第11回】
 制度・政策論-政策・法的位置・運動-
  ①政策と法―児童福祉法・最低基準・保育所保育指針
  ②その歴史と運動、今日の課題
【第12回】
 家庭保育と集団保育の関係―共働きと育児-
  ①「3歳児神話」の理論的払拭と関係者の意識の実態
  ②家庭保育と集団保育の積極面の統合-心理的拠点の形成をめぐってー
【第13回】
 保育全体における乳児保育の位置と地域社会・子育て支援における役割
  ①幼保一元化の方向と乳児保育の位置
  ②地域における子育て支援と乳児保育-一時保育・育児支援-
【第14回】
 諸外国の乳児保育―日・中・米・スウェーデンの比較から-
  ①保育政策と制度面―育児休業制度とのかかわり-
  ②保育内容面-個と集団の視点から
【第15回】
 これまでの総括
  ①振り返り、学んだこと・感じたこと・考えたことを語り、書き、交流する。
  ②今後学習・研究していきたいことについて共有する