Web Syllabus(講義概要)

平成22年度

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税法学特殊研究B(D) 河野 惟隆
選択  4単位
【経済学専攻】 10-1-1110-0205-29A

1. 授業の内容(Course Description)
 近年、法人の合併が頻繁に行われるようになった。都市銀行は以前は13行あったのが、今や、4行になった。大手百貨店の合併があり、家電メーカーの合併もあり、重電機メーカーが複数の子会社を完全子会社にしたり、今や、合併は日常茶飯事となった。このような合併、さらに分割などを、組織再編成と言う。このような組織再編成が、租税を回避するためではなく、経済全体にとって有益に前向きに行われるように、定められた税制が、適格組織再編税制である。この適格組織再編税制が平成13年度に導入されてから、法人税法は、極端に難解になった。この導入によって法人税法の条文は量的には2倍弱になったが、難解さは10倍ぐらいになった感がある。
 法人の合併等を理解するためには、適格組織再編税制の理解が必要不可欠である。法人税法を理解するためは、適格組織再編税制の理解が必要不可欠である。適格組織再編税制が理解できれば、法人税法の基本が理解できる。院生諸君には、そういう観点から,適格組織再編税制について、研究して貰う。
 適格組織再編税制については主として適格合併を研究する。極めて難解な、それゆえに、定説が定まっていない、特定適格合併における欠損金繰越控除等を先ず研究し、次いで、それを上回って難解な、同様に定説が定まっていない、特定支配関係にある欠損等法人の適格合併における欠損金繰越控除等について研究する。
 これらの研究は、税法における、最先端の研究であるが、教師としては、ナントカなる、と考えている。事実、これまで数年にわたって、院生諸君が、修士論文をナントカ完成してきた。従って今後もナントカ可能であろう。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 院生諸君それぞれに何度も何度も、論文を見ないでその内容を発表してもらう。それは、しっかりしたプリゼンの能力を身に付けてもらう為である。実はそれ以上に、自分のアタマで考える、というクセを身に付けてもらう為である。そのための訓練を毎週行うことにする。当然のこととして、法人税法の基本的に重要な点について、毎週、自分のアタマで考える、という訓練を行うことになる。それが論文作成能力の涵養にもつながるからである。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 院生の皆さんが、将来仕事に就いた時、様々な場面に遭遇するが、その場面それぞれを、判断し、適切な処方箋を下さねばならない。即答即決しなければならない。その際に、当然のことであるが、何も見ないで、即答即決しなければならない。その為に、修士論文の口頭試問の際に、自分の書いた修士論文を見ないで、発表でき、質問に対しても、同様に、自分の書いた修士論文を見ないで、答えられるように、2年間、教育してゆく。これまで、全員が、その段階にまで達することが出来た。今後も当然可能である。御心配御無用である。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 河野 惟隆『法人税法の研究』税務経理協会、2009年。
 河野 惟隆『適格合併における欠損金額の引継ぎ(上)・(下)』「税経通信」2009年3月号・4月号。
 河野 惟隆『法人税法における所得金額と利益積立金額』税務会計研究学会「税務会計研究」第19号、第一法規出版、2008年9月。
 河野 惟隆『法人税法減価償却の新規定』「税経通信」2008年6月号。
 河野 惟隆『適格合併における欠損金繰越控除』税務会計研究学会「税務会計研究」第18号、第一法規出版、2007年9月。
 河野 惟隆『適格合併における減価償却の引継ぎ』「税経通信」2007年2月号。
 河野 惟隆『適格合併における利益積立金額の引継ぎ』「税経通信」2007年1月号。
 河野 惟隆『適格合併等における欠損金繰越控除の制限と緩和』「税経通信」2006年9月号。
 河野 惟隆『適格合併における欠損金繰越控除』「税経通信」2006年8月号。
 河野 惟隆『法人税法・所得税法の経済学』税務経理協会、2004年。
 河野 惟隆『アメリカ法人税の法定税率』筑波大学『経済学論集』2003年。
 河野 惟隆『消費税法の控除対象外と控除対象』筑波大学『経済学論集』2002年。
 河野 惟隆『法人税法減価償却の新解釈』税務経理協会、2002年。
 河野 惟隆『法人税法別表四の新解釈』税務経理協会、2001年。
 河野 惟隆『法人税法施行規則別表四の構造』税務会計研究学会『税務会計研究』第10号、第一法規出版、1999年。
 河野 惟隆『法人税法の別表四の構造と解釈』『税理』1999年7月号。
 河野 惟隆『法人税・所得税の研究』税務経理協会、1995年。
 河野 惟隆『個人所得税の研究』税務経理協会、1987年。
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 法人税法が極めて難解なのは、条文の所為でない。現実の法人の行動が複雑である所為であり、多岐にわたる所為である。その複雑多岐にわたる行動の全てを規定せざるを得ないから、条文は極めて難解にならざるを得ない。その難解な法人税法の網の目をほぐすことなくしては、法人税法の理解は不可能である。じっくり腰を落ち着けてて繰り返し条文を理解しようとすれば、何とかなるものである。又、何とかしなくては、一歩も前に進めない。理解できたときの喜びは格別である。ハウツウを暗記するのは空しいし、それではしっかりした仕事は出来ない。逆説的だが、深く理解できて初めて税務経理の技術も身に付くのである。暗記は人類の敵である!!
6.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 法人税法の所得金額(1)
【第2回】
 法人税法の所得金額(2)
【第3回】
 法人税法の利益積立金額(1)
【第4回】
 法人税法の利益積立金額(2)
【第5回】
 法人税法減価償却の新規定(1)
【第6回】
 法人税法減価償却の新規定(2)
【第7回】
 適格合併等における欠損金繰越控除(1)
【第8回】
 適格合併等における欠損金繰越控除(2)
【第9回】
 適格合併等における欠損金繰越控除(3)
【第10回】
 適格合併等における欠損金繰越控除(4)
【第11回】
 適格合併等の欠損金繰越控除の制限と緩和(1)
【第12回】
 適格合併等の欠損金繰越控除の制限と緩和(2)
【第13回】
 適格合併等の欠損金繰越控除の制限と緩和(3)
【第14回】
 適格合併等の欠損金繰越控除の制限と緩和(4)
【第15回】
 適格合併等における利益積立金額の引継ぎ(1)
【第16回】
 適格合併等における利益積立金額の引継ぎ(2)
【第17回】
 適格合併における未処理欠損金額の引継ぎ(1)
【第18回】
 適格合併における未処理欠損金額の引継ぎ(2)
【第19回】
 欠損等法人・特定支配関係による適格合併(1)
【第20回】
 欠損等法人・特定支配関係による適格合併(2)
【第21回】
 欠損等法人・特定支配関係による適格合併(3)
【第22回】
 欠損等法人・特定支配関係による適格合併(4)
【第23回】
 特定適格合併と「共同で事業を営むための合併」(1)
【第24回】
 特定適格合併と「共同で事業を営むための合併」(2)
【第25回】
 適格合併における減価償却資産の引継ぎ(1)
【第26回】
 適格合併における減価償却資産の引継ぎ(2)
【第27回】
 適格組織再編税制における減価償却資産と利益積立金額(1)
【第28回】
 適格組織再編税制における減価償却資産と利益積立金額(2)
【第29回】
 適格組織再編税制における減価償却資産と利益積立金額(3)
【第30回】
 適格組織再編税制における減価償却資産と利益積立金額(4)