Web Syllabus(講義概要)

平成22年度

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入門ミクロ経済学 II 小島 寛之
選択  2単位
【経営】 10-1-1120-0211-14

1. 授業の内容(Course Description)
 経済学の理論は大きく分けると、ミクロ経済学とマクロ経済学に分かれる。マクロ経済学が、国家単位で集計して巨視的な観点から経済にアプローチするものであるのに対し、ミクロ経済学は、一人一人の消費者や労働者、それから一つ一つの企業などに注目して、経済を営む最小単位からアプローチするものである。ミクロ経済学での大きなテーマは、マーケットにおいて価格を使って取引する「市場機構」にどんな法則が働き、どんなメリットやディメリットがあるか、ということだ。
 わたしたちは、毎日、経済に参加している。消費者として商品を購入したり、アルバイトや正規の労働者として商品を作ったり、運んだり、販売したりしている。これらがあまりに日常的なので、わたしたちは、それらの行動にどんな必然性や合理性があるかを振りかえって考えることはほとんどない。ミクロ経済学では、このようなわたしたちの日常の経済行動の背後にある理屈を掘り起こす。それは一言でいえば、わたしたちが商品に見出す「価値」とは何であり、それがわたしたちをいかなる行動に導くか、ということである。
 ミクロ経済学を学ぶメリットはたくさんある。例えば、オークションという取引にどんな法則性が働いているかがわかったり、モノを買うときどうやったら無駄なく有利になるかを知ったり、人に何かを買ってもらうにはどうすればいいかが掴めたりすることである。したがってミクロ経済学の知識は、諸君が実業界で活躍するとき、余すところなく活かすことができるだろう。
 本講義では、ミクロ経済学の基礎となるさまざまなツールを解説することにしよう。前期は、「個人の合理性」から市場機構の働きを講義したので、後期はそれを受けて、「集団の合理性」について講義する。わたしたちの経済社会は、基本的に「協力」によって成り立っている。会社で商品を生産することが、社員の「協力」によって成り立っていることはいうまでもないが、商品の売買も販売者と購買者の「協力」の結果といってもいいのだ。なぜなら、交渉によって互いの利益の一致を見て行われるからである。また、貿易も複数の国家国民の「協力」によるものだし、複数の地方自治体が共同の設備を作るときにも「協力」関係がなされる。このような「協力」の背後にどのような原理が働いているか、それを講義することにしよう。最終的に前期の講義と同じ結論にたどりつく知的興奮を味わっていただきたいと思う。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 協力ゲームのコアの理解を到達目標とする。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 講義内の問題演習を抜き打ちで3~4回実施し、出席ボーナス点を与える(計30点程度)。それに期末テスト(70~80点満点)の点数を加えて評価による。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 参考書:小島寛之『算数の発想』NHKブックス
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 必ず出席して、課題をこなして、ボーナス点を獲得すること。データから見て、出席回数の少ない学生は高確率で単位を落としている。あまり出席しないつもりの学生(特に4年生)は、履修しないで欲しい。
6.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 講義ガイダンス~講義の内容、単位取得方法などを説明
【第2回】
 社会における協力をゲームに仕立てる~協力ゲーム
【第3回】
 協力ゲームを数学的に記述する
【第4回】
 分業の利益~アダムスミスの考えを協力ゲームにしてみる
【第5回】
 投票ゲーム~選挙を協力ゲームにしてみる。
【第6回】
 環境ゲーム~環境問題を協力ゲームにしてみる。
【第7回】
 タクシーの相乗り問題~費用構造を協力ゲームにしてみる
【第8回】
 商品の売買~売買取引を協力ゲームにしてみる
【第9回】
 合理的な利益の配分その1~コアという解
【第10回】
 コアの意味~今までの例でコアの意味を検討する
【第11回】
 合理的な利益の配分その2~コアがない可能性
【第12回】
 売買取引発展編(2対2ゲーム)
【第13回】
 一物一価の法則を導く
【第14回】
 需要供給の均衡は、コアである。
【第15回】
 講義の遅れに対する調整またはシャプレー解