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授業の内容(Course Description) |
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老人にわずかな金だけ与えて、老後の面倒は自分でみろという時代が来るように思います。それは、少子高齢化が進むのに、老後の生活を支える仕組みが、老人を若者が支える(賦課方式)ことに偏りすぎているからです。弱者保護と既得権保護が奇妙に結合する中で、人類が史上初めて長寿を持つようになった今日、老後とは何かを原点から考えなければなりません。そのために正義とは何か、その実現手段としての官民バランスは如何にあるべきか、を政治・経済・社会・科学技術を踏まえた歴史的見地から洞察する必要があります。「民で出来ることは民で」という言葉をよく耳にしますが、その意味を明らかにする一方で、官ではない公の仕事の仕方を常に用意しておく必要があります。そこで、本講座では受講者が、公とは何かという原点に戻って、官と民の守備範囲のあり方について考えることを目標にして、年金のあるべき姿について学習します。また、内容は中江ゼミ(総合法学特講)に直結し、全学部の方が受講できますので、ふるってご参加ください。
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授業の到達目標(Course Objectives) |
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年金の概要と問題点について理解する
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成績評価方法(Grading Policy) |
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中間レポート、期末レポートで評価
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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『21世紀の社会保障』(中江章浩著 第一書房)、『社会福祉エッセンス』(中江章浩他著 自由国民社)、『トピック社会保障法』(中江章浩他著 不磨書房)、『日本のNPOシステム』(中江章浩著 エヌピ-通信社)、『どうなる年金こうなるくらし』(中江章浩著 長崎出版)、『日本のなおし方』(中江章浩著 信山社)など
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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授業は自分なりに誠心誠意やるつもりですが、わざわざ聴講する程の価値があるとは思えませんので、出席はとりません。遅刻・早退も自由です。ただし、考えるための道具として法律の条文を使いますので、出席する場合は関連条文を持参してください。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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○限られた財源の中で年金・福祉・医療のどれをどのくらい優先すべきか ―キーワード― 分野=限られた資源をどこに使うか 医療福祉重点型・年金重点型・全分野重視型 「衣食住+医療福祉+雇用+住宅+教育」のうち公が責任を持つのはどの分野のどの程度までか?=社会保障の範囲 マクロ経済スライド ○公的年金と私的年金は、個人勘定・ポータビリティー・税負担・補助金・確定給付性等の点でどこが違うのか ―キーワード― 厚生年金基金 税制適格年金 国民年金基金 確定給付企業年金 確定拠出年金 個人年金 個人勘定 ポータビリティー 公的年金の代行 税負担 補助金 ○個人・企業・国から出す金のバランスは、個人口座・社会保障基金などの仕組や家族制度の強弱の中でどうするべきか ―キーワード― 少子高齢化・国民負担率・年金一元化・確定拠出年金・マクロ経済スライド・未加入未納問題・学生納付特例・学生無年金障害者・OASDHI・401K・強制貯蓄制度・社会保障総合口座・スウェーデン方式・賦課方式と個人勘定・税方式・生計維持・国民年金・年金分割・遺族年金・3号被保険者 ○産業革命期に出来はじめ情報革命期に崩壊の危機を迎えている年金制度の人類史からみた意味は何か ―キーワード― 配偶体・胞子体と年金 直立・火・道具・言葉 農業・文字・隠居 工業・国民皆保険・年金 コンピューター・情報革命と少子高齢化 人生50年と65歳・80歳問題の意味 年金とエコロジー 年金とは何か 危険分散・貯蓄・所得再配分 laboureとwork handicapの統一理論 生涯現役とhappy retirementの優劣 ○少子高齢化で崩壊しがちな年金制度は移民導入で防げるか ―キーワード― サラダボウル社会とスラム オドアケルとグリーンカード 文化の多様性と情報社会 福祉と外国人労働者 フィリピンの外貨獲得手段 3Kとインセンティブ ○貧富の差を小さくするのは年金ではなく福祉の仕事だという意見は正しいか ―キーワード― ジニ係数 パレート最適 ロールズ的正義 マクロ経済 経済予測 社会保障の経済的な意味 所得再配分 ○貧しい地域の人・一次産業や非雇用者という経済力の弱い人・外国人の年金は少なくても良いのか(地域・国籍・職種の差) ―キーワード― 在日朝鮮人の年金のあり方 日本国籍はないが日本で長年働いている人 裁判所 国籍法と出入国管理法 外国人の人権 日本人と地球人 グローバル化 情報革命 ○歴史的に分立しがちな年金制度はどのように一元化すべきか ―キーワード― 年金一元化の困難さ 何階建てにするべきか 程度=生活保障vs所得保障 1階2階のウェイト 生活保護との関係→基礎年金水準と生活保護基準の高低 大手と中小の差 都会と田舎の差=職域・地域年金の格差 経済の二重構造 同一労働同一賃金の原則の実態(正社員とパート 非常勤講師の給料) 定率定額負担形式 給付水準維持or負担固定 basic income ○主婦が保険料を払わずに年金をもらってもよいか(男女の差) ―キーワード― 個人・家族・正義 個人単位化(専業主婦―3号被保険者 年金分割 離婚と専業主婦 遺族年金) 正社員・補助社員のあり方 短時間労働者(パート・派遣労働者)の年金の在り方 低出生率均衡 家族の変化と貧困 脱商品化 脱家族化 母親の就業と出生率 家族主義的福祉国家 ○難しい年金問題を世界各国はどのように解決しているのか ―キーワード― 年金の3要素(官僚・家族・移民) 少子高齢化 国民負担率 年金一元化 確定拠出年金 物価スライド 3号被保険者 年金分割 未加入未納問題 学生納付特例 学生無年金障害者 生涯現役 塩見訴訟 OASDHI 401K 強制貯蓄制度 社会保障総合口座 スウェーデン方式 賦課方式と個人勘定 税方式 社会保障協定 ○年金がつぶれるので消費税を10%に上げるしかないという意見は正しいか ―キーワード― 年金債務 課税標準と課税対象 逆進性 累積債務 社会保障給付費 付加価値税と前転 課税標準と課税対象 逆進性 累積債務 社会保障給付費 付加価値税と前転 財政再計算 賦課方式 積立方式 段階保険料方式 老いのコスト 国民負担率 自助と連帯 大競争時代 公の守備範囲 医療福祉重点型 ○年金の財源は税金と保険料のどちらが合理的か ―キーワード― 社会保険の歴史的使命の終焉 税金と保険料の優劣 納税者番号 所得把握 住民基本台帳 課税最低限は高いか 強制力、無収入者の負担=負担者の数 税金(所得税+消費税+相続税)vs保険料 財源のあり方=消費税・相続税へのシフト 差のつけ方=ミーンズテストの有無 社会保険と公的扶助の違い 保険と所得再配分 賦課方式 税と保険料 加入率 ○年金の賦課方式とねずみ講はどこが違うのか(世代間の差) ―キーワード― 年金空洞化の原因と対策(損・高い・信用できない) 世代間の損得 積立方式と賦課方式の得失 給付水準維持or負担固定 給付額のスライド 「ありとキリギリス」と衆愚政治 文化大革命と世代の助け合い 在職老齢年金 支給開始年齢(平均寿命の最後の1割:平均寿命が80歳なら72歳から) 負担と給付の対応性 給付額の計算方法 IT化による保険料使途の追跡 年金空洞化-未加入未納問題 財源のあり方=消費税・相続税へのシフト ○年金は金持ち老人は少なくてもよいか(世代内の差) ―キーワード― 年金額の実態 生涯現役の実態 高所得老人への年金 諸外国の年金課税の考え方 高収入高齢者の負担 基礎年金への税金投入のあり方 相続時に国庫負担返還 カジノとアッピア街道 勲章の哲学 金持ちから金を取る方法 都会と田舎の差=職域・地域年金の格差 1階2階のウェイト・定率定額負担形式 年金分立 在職老齢年金 生活保護基準との比較 相続時に国庫負担返還 高収入高齢者の負担 年金課税 在職老齢年金 カジノとアッピア街道 勲章の哲学 金持ちから金を取る方法 ○年金は障害者になったり、生計維持者が死亡したときにはどのような保障があるのか ―キーワード― 障害年金 遺族年金 老齢厚生年金と遺族厚生年金の併給 ○年金は役所でしかできない仕事か ―キーワード― 小さな官と大きな公は可能か 年金制度の組み方(誰が 何を どのように) 誰に頼るかpublic(役所)・family(家族)・market(市場) 日本の年金制度 各国の制度 民営化・スウェーデン・シンガポール方式 老いのコスト 公の守備範囲 官民の特質 国民負担率 自助と連帯 大競争時代 福祉ミックス セクターと機能 ペストフ 企業年金 国民年金基金 効率性VS公平性 社会保障の二つの機能 リスク・情報・規範 ロールズの正義と社会保障 共同体の意味 ○年金積立金が公金無駄遣いの温床になっているという意見は正しいか ―キーワード― 年金積立金 国民負担率 補助金と負担金 厚生保険特別会計 財政投融資 財政法と会計法 多年度主義 ○年金積立金を使って国民のためのリゾートを作ったが大赤字になってしまった官僚は、個人責任を問われないのか ―キーワード― 背任 委託関係 権限濫用説 背信説 事務処理者 二重抵当 財産上の事務 任務違背行為 冒険的取引 図利加害目的 身分上の利益 穴埋め背任 詐欺罪 委託物横領 大規模年金保養基地 匿名性 無名性 無謬性 ○歴代社会保険庁長官の素顔を覗いてみよう ―キーワード― 義と利と官僚制 神官・宦官・旗本・軍部・官僚 組織のDNA 中国残留孤児 五族協和と世代の助け合い
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