Web Syllabus(講義概要)

平成22年度

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宗教文化研究 II 冲永 荘八
選択  2単位
【日本文化】 10-1-1310-0126-04

1. 授業の内容(Course Description)
 秋期では、科学と宗教との関係を考察する。世界に存在するものはすべて原子の集合離散から説明できるといった科学的世界観が浸透した結果、科学の発達とともに宗教はやがて消えると見なされたこともかつてはあった。しかしそうした予測とは裏腹に、宗教の影響は現代の世界においても衰える気配はない。ここには、科学が宗教の真理をくつがえすという位置にあるのではなく、ふたつは根本的に異なる次元の問題を対象にしていることが、その理由のひとつとして考えられる。
 この授業では、科学の問いと宗教の問いとが重なっているように見えながら、実は根本的に異なる次元のものであることを示す具体的な事柄をいくつか取り上げ、両者の問いが持つ性質の違いを明確にしたい。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 適宜資料を読みながら講義を進め、まずはその正確な把握力と論理的な思考力をつけることを目指す。その上で、宗教的な問いの次元がどこにあるのかを理解することを目的とする。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 学期末に試験を行う。出席は基本的に毎回とる。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 プリントにて配布する。
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 特に予備知識は必要としないが、単位の取りやすさを期待した受講は慎んで頂きたい。
6.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】~【第3回】
 西洋近世以後における科学と宗教との関係。天動説対地動説、創造論対進化論、唯心論対唯物論などの構図の説明。これらにおける、科学的な問いの対象領域と宗教的な問いの領域との区別の必要性。唯物論論争における不可知論の必然性。
【第4回】~【第6回】
 進化論の再吟味。進化論の中に見られる目的論的側面と機械論的側面の素描。ダーウィニズムに関するデネット、ドーキンズなどの見解。生物進化における利己的側面の徹底化と、それに対するマクグラスの批判。目的論対機械論という構図の無意味さ。
【第7回】~【第9回】
 現代宇宙論と人間原理。近代において機械論的決定論の下に説明された宇宙と、そうした宇宙が生じたことの説明不可能性との断絶。宇宙に人間が生じた驚異的偶然性を説明するための方法としての人間原理。目的論的宇宙観の復活とその問題。
【第10回】~【第12回】
 魂の所在。人間の精神が脳に還元された場合、かつて魂と考えられたものはどう考えられるか。心身問題における心と物質との対応問題と、一般に出来事の因果的説明がそれ以上の説明を許さない地点にいつも接している、という問題との類縁性。これらの類縁性が私たちの知の根本的な宿命であることの理解。
【第13回】~【第15回】
 合理的説明と非合理性。改めて科学的な問いの守備範囲としての合理性と、そうした問いに入り得ない領域としての非合理性との区別。合理性は非合理性に基づけられ、合理性は自らの根拠については説明できないことの確認。