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授業の内容(Course Description) |
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日本は高齢社会をむかえ、介護保険制度などさまざまなサービスが整備されつつある。福祉や医療のサービスは、高齢者の生活を保障するものであるが、一方で高齢者の心の問題に対する取り組みはまだ不充分なものと言ってよい。 高齢者の心の問題は、その人の生きてきた道筋の影響も受け多様なものとなる。高齢になることで、退職などの社会的役割の喪失、身体的健康の喪失、さまざまな人間関係の喪失、死との直面化などを経験する。また、社会的孤立や家族の中での孤立なども経験する。 また、認知症、妄想、うつ病、心気症など、高齢者の罹患する精神医学的疾患も多い。またこれらの疾患に罹患した高齢者を介護する家族の心理的負担も大きなものがある。
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2. |
授業の到達目標(Course Objectives) |
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本講義では、このような高齢者を囲む心の問題を紹介するとともに、どのようなケアや対応がなされているか検討する。特に認知症のケアについては詳しくふれていく予定である。認知症ケアは近年大きな変革期をむかえている。医学や福祉分野のみならず、地域で多数の住民が連携してささえるあり方が議論されるようになってきている。それらの動きや最新の知見についても紹介したい。 これら動きの中で、心理的視点の重要性を強調したいと思う。高齢者の心理臨床活動は、医療、保健、福祉との連携をとりながら、これまでにない住民参加型の新しい展開を行う必要がある。それらについても本講義ではふれていきたい。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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定期試験 80%、授業内レポート 20%(予定)
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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テキスト なし 参考文献 『高齢者の心理療法 回想法』 黒川由紀子著 誠信書房
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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心理臨床やカウンセリングに関心のある学生にはぜひ選択してほしい。高齢者に関する事件や今日的な課題にも触れていく予定である。自分自身の家族である高齢者にどう対応していくか、自分の親が高齢となったときにどう接するか、身近な人が認知症となった時にどう判断するかなど自分自身の問題としても考えてもらいたい。「人は老いにどう臨むか」これが講義を貫くテーマである。
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6. |
授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 授業ガイダンス 【第2回】 老いとは何か 【第3回】 高齢者の心理 I 【第4回】 高齢者の心理 II 【第5回】 社会現象としての高齢化 【第6回】 高齢者に対する社会制度 【第7回】 高齢者に特徴的な精神科疾患 I 認知症に関する理解 【第8回】 高齢者に特徴的な精神科疾患 II 認知症への対応 【第9回】 高齢者に特徴的な精神科疾患 III うつ病 【第10回】 高齢者に特徴的な精神科疾患 IV 心気症 【第11回】 高齢者に特徴的な精神科疾患 V 妄想、その他 【第12回】 高齢者虐待 【第13回】 高齢者の心理療法 Ⅰ 【第14回】 高齢者の心理療法 Ⅱ 【第15回】 まとめ・試験(予定)
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