Web Syllabus(講義概要)

平成22年度

ひとつ前のページへ戻る 教授名で検索

 
比較社会論 II 小山 郁夫
選択  2単位
【外国語】 10-1-1410-0225-12

1. 授業の内容(Course Description)
 このコースの前半では、世界中の「美しい物語」の中からいくつかを選び、それを日本語訳と英文で読みます。原文がデンマーク語、オランダ語そしてギリシャ語のものがありますが、授業では、それらも日本語訳と英語訳で読みます。
 参考として―授業では直接扱いませんが―ドイツ語訳がある場合は、それもプリントでお渡しします。なぜドイツ語訳かといいますと、デンマーク語・オランダ語・ギリシャ語は英語よりはドイツ語の方に近いところがあり、原文の雰囲気をより良く伝えているからです。関心のある方は読んでください。
 まず、人類最古の物語ともいえる神話の役割について、エリアーデとキャンベルを参考にしながら解説します。ここから、物語に秘められた深い意味を理解しましょう。
 次に、各国の物語を読み、その物語が書かれた社会の特徴を説明しつつ、そこに描かれている人間の心の美しさや、道徳性について比較し、説明します。
 次に、コースの後半では、古代ギリシャで誕生し、主にヨーロッパ諸国で発見された「美しい数学」の中からいくつかトピックを選び、物語風に解説していきます。数学の歴史や、各時代・社会に顕著に現れた、人間精神の発達についても比較検討します。
 ところで、なぜ「美しい物語」と「美しい数学」を組み合わせるかといえば、21世紀の社会人にとっては、物語的な想像力と数学的な論理性の調和が必要とされているからです。ここ数年のノーベル賞受賞者の発言を聞くとよく分るのですが、こうした考えは日本を含めた最近の世界的傾向です。
 「物語」の英文に関しては、すべて翻訳を配布します。ですから、英語にあまり自信のない方も心配ないでしょう。ただし、集中して授業に臨んでください。数学に関しては、予備知識はいっさい前提しないで話しを始めます。必要なものがあるとすれば、1から10まで数えられることぐらいです。
 数学は、ゼロから解説していきます。なぜなら、みなさんが「つまづく」ところにこそ、実は数学の本質や美しさが隠されているからです。
 さらに、なぜ「外国語学部」で数学を学ぶのか、少し説明しておきましょう。
 数学は、1つの「外国語」です。それもアッカド語やヘブライ語と同じくらいとても古い「言語」の1つです。数学によく「素数」「方程式」「微分係数」「群」などの定義が出てきますが、これは各時代に数学者が自分で「単語」を作り上げているのです。そして数学の「文法」は、本質的に、2500年前から少しも変わっていません。こんな今でも使われている言語は、ヘブライ語を除けば、ほかにないのです。「数学語」に比べたら、英語は随分と「若い」言語です。数学語を学ぶと、みなさんは言語の本質を学ぶことになり、他の外国語を学ぶ大きな助けになるでしょう。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 物語と数学に共通な美しさを感じること。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 授業最終日の小テスト:これは、
 1)物語コース
 2)数学コース
 3)物語と数学コース、
 の3つのコースに基づいた問題から1つのコースを自由に選び、受験してもらいます。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 1)教材:すべてプリントで配布します。
 2)参考文献:
 ①マティアス・ハイル『永遠のアンネ・フランク』(松本みどり訳、2003年、集英社):これは2002年ドイツで出た本で、最新の研究が盛り込まれています。アンネのことが冷静にそして熱く書かれているので、みなさんにはとても参考になるはずです。
 ②岩堀長慶『2次行列の世界』(数学入門シリーズ4;初版 1983年、岩波書店):高校生用に書かれた入門シリーズの1冊です。実に丁寧にそして「情緒」を込めて語られているので、素晴らしい本に仕上がっています。理論と応用のバランスがまことによく取れている本でもあります。何度も何度も読み返すことをお勧めします。
5.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 ①秋学期の「比較社会論Ⅰ」をできる限り受講してください。
 ②授業中の私語は控えてください。
6.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 イントロダクション(その1)
【第2回】
 古代社会における神話(=太古の物語)の役割と、ブッシュマンの美しい、アフリカ神話物語より-「結婚」と「生命の神秘」について考える
【第3回】
 「強風で倒れた大木から兄を守ろうとして亡くなった弟の話し」(イギリスの有力新聞『タイムズ』より)-イギリス人の心の美しさとユーモア
【第4回】
 デンマーク生まれのアンデルセン作「マッチ売りの少女」-デンマーク人の心の美しさと清らかさ
【第5回】
 ドイツ生まれのユダヤ人、アンネ・フランク著「アンネ・フランクの日記、1944年7月15日土曜日」-思春期の少女の心の気高さと理想の追求
【第6回】
 宮沢賢治「雨ニモマケズ」(日本語とその英語訳)-「平凡な」人生の美しさ
【第7回】
 ①「ルカ伝:18章の9~14節」-「貧しいこと」と「精一杯尽くすこと」そして「謙虚さ」の美しさについて
 ②「ルカ伝:6章の27~36節」-精神の美しさについて
【第8回】
 イントロダクション(その2)-「数学が成立するためには、感情の満足がそれと別個にいるのです。」(岡潔)、および「数学が楽しくなかったり、分かりづらかったりするのは、多くの場合、それを教える教師の責任です。」(I.K)などについて
【第9回】
 幾何学の原点「ピタゴラスの定理」と、400年前のルネッサンス期「文字式の発明」へのタイム・トラベル、および「<数>には3つの種類があるということ」
【第10回】
 フリーハンドで描く「円錐曲線」と、「チェバの定理」で作る手品(計算機を用意してください)の感動体験
【第11回】
 「順列・組み合わせ」、及び「確率」について-全く初めての人でも楽しめる実験数学の体験
【第12回】
 「三角法」について-古代エジプトから現代天文学への、「公式」ロケットによる旅
【第13回】
 「数列と極限」について-コツコツ勉強するコツ
【第14回】
 「微分積分学」の初歩-ニュートン、ライプニッツ、コーシーが建設した「面積と体積のワンダー・ランド」体験ツアー
【第15回】
 全体のまとめ(「物語の美しさ」と「数学の美しさ」がなぜ社会の形成に必要なのか?)と、コース別小テスト