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授業の内容(Course Description) |
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行動規範論 I では、道徳や倫理に関する哲学者たちのさまざまな思想を紹介し、それを通じて、人間にとっての〈善き生〉、〈道徳的に生きること〉の意味について考えたいと思います。 講義の前半ではおもにプラトンやアリストテレスの思想に即しながら、幸福な生とはどのような生か、善き生(正しき生)と幸福とはどのように関係しているのか、という問題を中心に考察していきます。 講義の後半では、おもに人間の行為について、行為の道徳性はどこに根拠をもつのか、行為の道徳性はいかなる基準によって判定されるのか、といった問題について考察していきたいと思います。(授業の内容と順序は、若干変更することがあります。)
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授業の到達目標(Course Objectives) |
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・道徳理論に関する基本的知識を習得する。 ・行為の道徳性の根拠について、とりわけ功利主義とカントの倫理学の違いについて理解する。 ・〈善き生〉や幸福な生、行為の道徳性の根拠について、自分自身の見解を論理的に表現することができる。
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成績評価方法(Grading Policy) |
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・平常点(約20%)とレポート(約40%)、学期末の定期試験(約40%)によって総合的に評価する。 ・平常点は、授業への出席と、数回に1回課す授業内容についての感想文によって評価する。 ・レポートは、授業の内容からテーマを選び、それについて論述する。 ・評価は厳正に行うため、普段から授業に出席して授業内容を理解していることが前提となる。
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テキスト・参考文献(Textbooks) |
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教科書:なし 参考文献:加藤尚武 『現代倫理学入門』 (講談社学術文庫) 新田孝彦 『倫理学の視座』(世界思想社) レイチェルズ 『現実をみつめる道徳哲学』(晃洋書房) その他の文献は、講義中に指示します。
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学生への要望・その他(Class Requirements) |
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道徳や倫理とは、「~するべきである・べきでない」といった判断に関わる事柄ですが、こうした判断は私たちが日常においてごく普通に行っているものです。こうした道徳的な判断をすることは、多くの場合、それほど困難ではありませんが、「善や正義とはそもそもどういう意味か」「正しい行為とはいかなる根拠によって正しいとされるのか」ということを学問的に解明することはそれほど容易ではありません。講義では、私たちがごく日常使用している道徳的な判断や道徳的概念を、その背景にある根拠にまで遡って考察することを目標にします。このような内容に関心のある方の受講を要望します。
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授業の計画(Course Syllabus) |
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【第1回】 授業の概要 【第2回】 徳の倫理 (1) プラトンの対話篇 『ゴルギアス』に即しながら、〈正しく生きること〉と幸福との関係を考える。 【第3回】 徳の倫理 (2) プラトンの対話篇 『国家』に即しながら、正義(正しく生きること)と幸福との関係についてさらに考察する。 【第4回】 徳の倫理 (3) アリストテレスの『ニコマコス倫理学』に即しながら、徳(優れた性格)と幸福との関係について考える。 【第5回】 利己主義と利他主義 ― 道徳的な利己主義と利他主義との関係について。純粋な利他主義は存在するか、ということについて考える。 【第6回】 道徳的相対主義とその問題 ― 道徳的な善悪の基準は、それぞれの時代や文化によって異なるのか? 【第7回】 社会契約説 ― ホッブズの社会契約説を紹介し、その背後にある近代的な人間観について考察する。 【第8回】 功利主義 (1) 行為の道徳性は、ある行為が人々にどれだけの幸福をもたらすかによって決まるのか? 【第9回】 功利主義 (2) 行為の道徳性は、個々の行為のもたらす結果によって決まるのか、それとも規則を適用した場合の結果によって決まるのか? 【第10回】 カントの倫理学 (1) 行為の道徳性は、内面の意志や動機のあり方によって決まるのか? 【第11回】 カントの倫理学 (2) 人格の尊厳とは何か? なぜ人格を手段として扱うことは許されないのか? 【第12回】 行為の道徳性について ― 行為の善悪を評価するに際して、〈行為の結果〉と〈内面の意志〉とはどのように関わっているのか? 【第13回】 ニーチェの道徳批判 ― 道徳とは、弱者の強者に対する憎しみに由来するものなのか? 【第14回】 ケアの倫理 ― 人間関係において大切なのは、規則や原則に従って行動することか、個々の相手に「気づかい」をもって接することか? 【第15回】 講義のまとめ
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