Web Syllabus(講義概要)

平成23年度

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日本経済論特講 I 小島 祥一
選択  2単位
【経済学専攻】 11-1-1110-0210-08

1. 授業の内容(Course Description)
 世界経済危機は、大規模な政策と新興国の成長で一段落した。だが失業、国債累増の重荷をかかえ、危機が再燃するリスクも大きい。特に日本経済は、90年代のバブル崩壊後長期低迷し、さらに世界経済危機に巻き込まれて「失われた20年」となり、脱出の方向を見失っている現状だ。
 世界経済、日本経済が新たな成長を目指すためには、なぜ危機に陥ったのか、なぜ低迷が続くのか、どうすれば脱出できるのか、危機・低迷を繰り返さないためにはどうすればよいのか、考えを深める必要がある。
 世界経済危機はアメリカの住宅バブル崩壊から起こったものであり、原因や対応策、その後の低成長、国債累増は、日本の経験とそっくりだ。世界経済危機を知るためにも、日本経済の危機を知ることが必要となる。
 このような観点から、この授業では、世界経済危機と日本の「失われた20年」の現状を把握し、20世紀後半から今日に至るまで、日本経済はマクロ的にどのように動いたのか概観し、次いで日本経済の重要問題への対応過程を、4幕劇の政治経済ゲームとして定式化し、最後に日本の政治経済の堂々巡りのメカニズムを解明する。あわせて景気、雇用、デフレ、金利、不良債権、財政・国債、人口減少・年金について基礎知識を習得する。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 世界経済危機、日本の経済危機について、日本経済の経験に基づいて、自分の見解が述べられるようになること。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 テスト100%。テストは、授業をまじめに受け、家で勉強し、最低限必要な知識(MR)を身につけたか(70%)、自分で考える力(自分流)を身につけたか(30%)をみる。出席しなければ単位はとれない。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキスト:朝日新聞編『失われた20年』(岩波書店、2009年2月) 
 参考文献:小島 祥一『なぜ日本の政治経済は混迷するのか』(岩波書店、2007年1月)
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 経済がどう動いているか、新聞、テレビ、ネットなどで毎日フォローし、自分でもコメントしてみること。
 教科書、参考書で授業に先行してテーマに親しんでおくこと。
 授業後、プリントを材料にして、考え方の流れを振り返り、不明な点を詰めること。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 世界経済危機、日本経済の危機をどう考えるか、いかに脱出するか、ユニークな発想を自ら試みてほしい。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 第1章 世界経済危機と日本の「失われた20年」
  1.危機一段落だが重荷をかかえる世界経済
  2.サブプライムローン危機から世界経済危機に至るメカニズム
【第2回】
  3.各国の金融緩和・財政拡大策と90年代日本の比較
  4.日本経済のゼロ成長、デフレ、高失業、世界シェア低下
【第3回】 
  5.日本経済のゼロ金利、国債残高累増、人口減少 
【第4回】
 第2章 20世紀後半以降の日本の経済政策早分かり
  1.敗戦、高度成長、石油危機、日米経済摩擦
【第5回】
  2.バブル発生・崩壊・後処理・長期低迷
【第6回】
  3.小泉改革
【第7回】
  4.世界経済危機、自民党支配崩壊、民主党政権迷走
【第8回】
 第3章 日本の政治経済ゲームの4幕劇
  1.世界経済危機の4幕劇
【第9回】
  2.日米経済摩擦
【第10回】
  3.バブル崩壊不況
  4.橋龍不況
【第11回】
  5.不良債権処理
【第12回】
 第4章 日本の政治経済はなぜ堂々巡りするのか
  1.民主党政権の経済政策の体系と自民党との比較
  2.民主党の財政政策
【第13回】
  3.政官財癒着の構造
  4.横並びルールと逆転の発想
【第14回】
  5.民主主義の制度的構造
  6.マニフェストとアカウンタビリティ
【第15回】
  7.争点ずらしによる一党支配
  8.総論賛成・各論反対の矛盾