Web Syllabus(講義概要)

平成23年度

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日本の産業 I 和田 正武
選択必修  2単位
【経済】 11-1-1110-0584-05

1. 授業の内容(Course Description)
 産業活動は昔から我々の生活を支える経済基盤であった。産業活動によって我々は生計をたて、消費する物資を得、種々のサービスを享受してきた。また地域の産業活動は地域経済を潤し、地域の文化を育ててきた。そして国レベルでは産業は国力の源泉であった。この授業では我々の生活と産業活動のかかわりを、いろいろの角度から光をあて検討する事により改めて産業活動の我々にとっての意味を理解するとともに、その日本における産業活動が大きな転換期を迎えている現在、これまでの日本産業の発展プロセスを見直しつつこれからの我々の生活と産業活動との新たな関係を展望することとしたい。産業論Iではまず、産業の発生と発展の歴史、産業構造の理論を理解したうえで、具体的に7つの産業について、その発展プロセス、現状と問題点を学ぶ。それぞれが特殊の問題を抱えており、産業の抱える問題の多様性を理解することを目指す。後期はこうした知識をベースに、さらに産業活動の本質を理解することとしたい。産業論で扱う課題は多く、産業論IIをつづけて履修して欲しい。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 産業活動は現代社会において基盤的活動であり、多様な業種からなり、社会人となれば何らかの形で関係をもつものである。その産業活動をより深く分析、理解するため、いくつかの重要な分析の視点があることを学ぶ。そのことによって、特定の産業業種の特徴、発展性、問題点などを、自分なりに分析し、理解できるようにする事を目標とする。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 期末テスト(記述式)60%、出席状況40%(適宜、授業中にミニテストを行う)。また出席率3分の1以下の者は成績評価しない。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 参考書
  1.『産業構造入門』(小野 五郎、日経文庫)
  2.『日本産業史1~4』(日経文庫)
  3.『中小企業』(清成 忠男、日経文庫)
  4.『現代産業組織論』(井手 秀樹、放送大学)
  5.『日本経済地理読本』(東洋経済)
  6.『イノベーションと日本経済』(後藤 晃、岩波新)
  7.『独禁法入門』(厚谷 譲児、日経文庫)
  8.『地球温暖化を考える』(宇沢 弘文、岩波新)等
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 日頃から、新聞の経済欄、経済雑誌に目を通し、関心ある事象、産業を見出し、その調査を自分で進めること。自分の関心ある産業についてその現状を書いた本を1冊、完読すること。まず、一つの産業のツウになることを勧める。アルバイトしているコンビニ、居酒屋の発達史、現状、今後などを考えてみるのもよい。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 産業活動に関心があり、自分でテーマを見つけ勉強したいと言う学生を歓迎する。日々、新聞の経済記事に目を通すことを期待する。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 「イントロダクション」:
 現在産業活動は、経済のグローバル化の中で、大変換期にある。そのことをまず、概観し、産業活動と我々の生活(今後の就職のことも含め)との関わりに関心をもち、産業活動を多様な視点で見ることの重要性を説明。全体の講義の目的、構成を紹介する。
【第2回】
 「産業活動の発生と発展の歴史(1)」:
 古代から荘園制、封建・幕藩体制を経て近代国家へ変化する中で生産、流通、消費という経済活動の基本要素の仕組みの変化を見ながら、産業活動の発生、発展プロセスをまなぶ。
【第3回】
 「産業活動の発生と発展の歴史(2)」:
 日本の産業発展のプロセス、特に明治以降の近代化のプロセスを理解する。
【第4回】
 「産業活動の発生と発展の歴史(3)」:
 第二次大戦後の産業復興から高度成長プロセスへ。戦後日本の産業発展の特徴を理解する。特に政府と市場との関係(産業政策)に着目する。
 課題:日本の産業近代化の特徴は何か?そのプロセスは中国など新興国にとってどのような意味を持つかを考えてほしい。
【第5回】
 「産業構造論(1)」:
 産業構造とは?産業構造が経済発展にともなって変化するプロセスについての議論を紹介。産業構造の各国比較。
【第6回】
 「産業構造論(2)」:
 日本の戦後の産業構造の変化。成長する産業と衰退する産業について。
【第7回】
 「産業構造論(3)」:
 工業製品のライフサイクル。プロダクトサイクル論。発展途上国の産業構造の変化と経済発展。
 課題:産業はなぜ、成熟、衰退し、新しい産業にとってかわられるのか?日本の産業で、今後衰退する産業、発展するはなにか?
【第8回】
 「産業各論(1)素材産業(鉄鋼、化学)」:
 日本の素材産業の戦後の発展プロセス。石油危機、円高の中での汎用品から特殊品へのシフト。高い技術力で世界市場での大きな存在感。
【第9回】
 「産業各論(2)加工組み立て産業(自動車)」:
 戦後の日本の自動車産業の発展プロセス。下請け構造から系列構造へ。トヨタ生産方式とすり合わせ技術。環境技術での成功。世界市場への展開。国内生産と海外生産の関係。今後の問題、電気自動車の影響。中国市場など。
【第10回】
 「産業各論(3)電子機器産業(デジタル家電、半導体など)」:
 半導体産業、家電産業の発展プロセスと現状。日本企業の競争力の低下の原因。海外市場と国内市場。産業の構造変化と日本企業の対応など。
 産業による産業組織の違い、其の違いが生じる要因の説明。
【第11回】
 「産業各論(4)(日用品産業ー繊維、アパレル)」:
 戦後の発展、衰退の経緯。現状。円高、賃金上昇による競争力の低下。ブランド戦略の不発。製造と小売りの主導権争い。製造は海外で、国内市場は輸入品で、という構造へ。
 課題:日本はモノづくり立国を目指しているが、今後日本はモノづくりで生きていけるのか?製造業の将来を考えよう。
【第12回】
 「産業各論(5)流通業」:
 特に小売り流通業についての発展プロセスと業態間の変化をみる。戦後の流通革命とは?スーパー、コンビニ、ショッピングセンター、量販店、アウトレットなど、業態間のすみわけ競合状況を見る。製造業と流通業の関係の変化。
【第13回】
 「産業各論(6)物流業」:
 大量物流から個別物流への変化。宅配便の発展史。モーダルシフトのこと。3PL(サードパーティーロジスティクス)のこと。
【第14回】
 「産業各論(7)サービス業」:
 サービス産業の分類と実態。新しい産業形態の出現。介護サービス、IT関連。産業のサービス化の流れ。
【第15回】
 まとめ。日本の産業の将来を考える。