Web Syllabus(講義概要)

平成23年度

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行動規範論 II 宇多 浩
1群  2単位
【一群】 11-1-1500-0738-02

1. 授業の内容(Course Description)
 行動規範論Ⅱでは、前期に習得した道徳理論を踏まえつつ、現代のさまざまな倫理的問題を多角的な観点から考察していきたいと思います。とりわけ、正義や公平さに関わる諸問題(富の分配、海外援助、刑罰、戦争などの問題)をさまざまな倫理的立場から考察していきます。授業の内容は、具体的な問題を一般的な原則や理論の観点から検討するというスタイルをとりますので、ある程度の抽象的・原則論的な思考が求められます。(授業の内容と順序は、若干変更することがあります。)
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 ・現代社会における倫理的な諸問題について、さまざまな立場が存在することを理解すること。
 ・現代正義論に関わる基本的な知識や基本的な理論を理解できていること。
 ・自己とは異なる立場にも一定の配慮をすることができ、一つの問題に対して、多角的なアプローチができるようになること。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 ・平常点(約20%)とレポート(約40%)、学期末の定期試験(約40%)によって総合的に評価する。(定期試験は資料等の持ち込み不可)
 ・平常点は、授業への出席と、数回に1回ほど課す授業内容についての感想文によって評価する。
 ・評価は厳正に行うため、普段から授業に出席し、授業内容を理解していることが前提となる。出席していても、授業の内容を理解していなければ単位の取得は困難であるので留意されたい。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 教科書 :なし
 参考文献:ネーゲル 『コウモリであるとはどのようなことか』(勁草書房)
      シンガー 『グローバリゼーションの倫理学』 (昭和堂)
      伊藤恭彦 『貧困の放置は罪なのか』(人文書院)
      
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 ・授業の内容に対応する参考文献の該当箇所を事前に読んでから、授業に臨むこと。
 ・授業の中で理解できなかった箇所は、参考資料を自分で調べて、理解しておくこと。
 ・レポートを作成するまでに、関連文献を必ず一冊以上読み、テーマの基本的論点を整理しておくこと。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 ある一つの問題に対して倫理的に考察するというとき、ただ自分の考えを述べればよいと勘違いされている学生が見受けられます。一つの問題に対して倫理学的に考えるとは、自己の道徳的判断(~は正しい・正しくない)に対して、その根拠を反省的・自覚的に問いかけ、さらに自分とは異なる主張に対しても、その根拠を誠実に問いかけて、判断の妥当性を客観的に吟味する能力が必要とされます。このような思考を経なければ、一つの問題に対して、広い視野でもって考察することは決してできません。このような倫理学的な思考の営みに関心のある方の受講を希望します。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 講義の概要
【第2回】
 正義について ― 正義・公平さという概念の意味について考察する。
【第3回】
 自由と平等 (1) 富の公正な分配の問題について、リバタリアニズム(自由至上主義)の立場から考察する。
【第4回】
 自由と平等 (2) 富の公正な分配の問題について、ロールズの「正義の二原理」の立場から考察する。
【第5回】
 自由と平等 (3) 富の公正な分配の問題について、平等主義の立場から考察する。
【第6回】
 アファーマティブ・アクションの問題 ― アファーマティブ・アクション(優先政策)の道徳的是非について考察する。
【第7回】
 貧困と海外援助 (1) 世界的な貧困の現状について確認し、海外の貧しい人々に対する責任がどの程度存在するのかを考察する。
【第8回】
 貧困と海外援助 (2) 世界的な貧困の問題について、リバタリアニズムや「救命ボートの倫理」の立場から考える。
【第9回】
 貧困と海外援助 (3) 世界的な貧困の問題について、カント倫理学や功利主義、グローバルな正義論の立場から考える。
【第10回】
 死刑制度の問題 (1) 死刑制度の是非について。死刑廃止論を支えるいくつかの根拠について考える。
【第11回】
 死刑制度の問題 (2) 死刑制度の是非について。死刑存置論を支えるいくつかの根拠について考える。
【第12回】
 戦争と正義 (1) 「正しい戦争」は存在するのかという問題について、いくつかの立場に即しながら考察する。
【第13回】
 戦争と正義 (2) 戦争において、許される行為と許されない行為の区別は存在するか、ということについて考える。
【第14回】
 戦争と正義 (3) 他国による人道的介入はどの程度まで許容されるか、ということについて考える。
【第15回】
 講義のまとめ