Web Syllabus(講義概要)

平成23年度

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思潮文化論 I 宇多 浩
1群  2単位
【一群】 11-1-1500-0738-03

1. 授業の内容(Course Description)
 現代の社会とは自由主義の社会であり、個人の自由な活動が最大限に尊重される社会であるといえます。この自由主義は、現代を生きる私たちにとっても欠くことのできない行動原理ですが、そこにはいくつかの問題点が含まれているように思われます。講義では、自由とはいかなることを意味するのか、現代において自由にはどのような問題が含まれているのかということを、さまざまな具体的問題の検討を通じて考察していきたいと思います。(講義の順番や内容は、若干変更することがあります。)
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 ・「自由」という言葉の様々な意味について理解する。
 ・「自由」に関わる諸問題について、さまざまな考え方があることを踏まえた上で、適切な文献に基づきながら、自分自身の見解を論理的に表現することができる。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 ・平常点(約20%)とレポート(約40%)、学期末の定期試験(約40%)によって総合的に評価する。(定期試験は資料等の持ち込み不可)
 ・平常点は、授業への出席と、数回に1回課す授業内容についての感想文によって評価する。
 ・定期試験とレポートの評価は厳正に行うため、普段から授業に出席し、授業内容を理解していることが前提となる。出席していても授業の内容を理解していなければ、単位の取得は困難であるので留意されたい。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 教科書 :なし
 参考文献:佐伯啓思 『自由とは何か』(講談社現代新書)
      それ以外の参考文献は、授業中に適宜紹介する。
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 ・授業の内容に該当する参考文献の該当箇所を事前に読んだ上で授業に臨むこと。
 ・授業の中で理解できなかった箇所は、参考資料を自分で調べて理解しておくこと。
 ・レポートを作成するまでに関連文献を必ず一冊以上読み、テーマの論点を整理しておくこと。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 我々は「自由」といった日常的な言葉をごく当たり前のように使用していますが、我々が普段何気なく使用している概念も歴史的に形成されたものであり、そこにはさまざまな含蓄が含まれています。講義では、自由に関わるいくつかの問題を検討しながら、「自由」という概念の意味について考察していきます。このようなテーマに関心のある方の受講を要望します。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 講義の概要
【第2回】
 自由主義の問題 ― 現代の自由主義のいくつかの特徴を示し、現代人にとっての自由の意味とその問題点について考える。
【第3回】
 自由とは何か ― バーリンの『自由論』に即しながら、消極的自由(~からの自由)と積極的自由(~への自由)との違いについて考察する。
【第4回】
 自由と孤独 ― フロムの『自由からの逃走』を読みながら、近代における自由の二面性について考察する。
【第5回】
 自由と自律 ― カントの道徳哲学に即しながら、自由と自律との関係について説明する。
【第6回】
 自由と他者危害 (1) ミルの『自由論』に即しながら、自己決定、他者危害原則としての自由について考察する。
【第7回】
 自由と他者危害 (2) 喫煙の問題に即しながら、自己決定と愚行権との関わりについて考える。
【第8回】
 自由と自己決定 (3) 中絶や性の商品化の問題に即しながら、他者とのつながりにおける自由の意味について考える。
【第9回】
 自由と所有 (1) リバタリアニズム(自由至上主義)の特徴を示し、その問題点について検討する。 
【第10回】
 自由と所有 (2) 「私のからだは私のもの」という意味での自己所有権とその問題点について考察する。
【第11回】
 自殺の問題 ― 西洋における自殺論の系譜を概観し、自殺という行為の道徳的意味について考える。
【第12回】
 安楽死の問題 ― 「自分の死は自分で決める」という意味での「死の自己決定」の是非について考える。
【第13回】
 自由と自己 (1) テイラーの議論に基づきながら、自己実現における自己の真のあり方について考える。
【第14回】
 自由と自己 (2) 自由主義と個人主義の背後にある自己像の問題点について検討する。
【第15回】
 講義のまとめ