Web Syllabus(講義概要)

平成23年度

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思潮文化論 II 宇多 浩
1群  2単位
【一群】 11-1-1500-0738-04

1. 授業の内容(Course Description)
 思潮文化論Ⅱでは、現在の地球環境問題を手がかりにしながら、人間と自然との関わり方について、さまざまな観点から考えていきたいと思います。
 現在の地球環境問題は、私たちにさまざまな課題を投げかけています。環境問題を解決するためには、新たな技術の開発や経済・社会システムの変更、国際間の協調などが必要になり、また個人のレベルでも、未来の人々のために、より環境に配慮した生活を心がける必要があります。いずれにせよ、私たちは従来のように個人の自由や権利を享受するだけでなく、地球全体の利益や未来世代の人々の利益を配慮できるような新しい生き方が求められているといえます。
 また、私たちはこの環境問題をきっかけにして、私たちの自然や生命に対する見方や態度をも見つめなおす必要があるように思われます。現在の環境問題が生じてきた一つの原因は、私たちが自然環境を人間の利益にとっての手段として見なしてきた点にあるといえます。環境問題を考えるにあたっては、このような私たちの自然に対する見方や態度を見つめなおし、人間と自然との望ましい関係についても考えていく必要があるように思われます。
 講義では、環境に対する責任、未来世代に対する責任、自然と人間との関わりという三つのテーマについて考察していきたいと思います。(授業の内容と順序は、若干変更することがあります。)
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 ・環境問題の現状を認識し、その中でわれわれに課せられた責任や課題を理解する。
 ・自然や生命の価値について考察し、人間と自然との関わり方について自分で考えることができる。
 ・これらの問題について、さまざまな意見や立場があることを踏まえつつ、自分自身の見解を適切な文献に基づきながら論理的に表現することができる。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 ・平常点(約20%)とレポート(約40%)、学期末の定期試験(約40%)によって総合的に評価する。(定期試験は資料等の持ち込み不可)
 ・平常点は、授業への出席と数回に1回ほど課す授業内容についての感想文によって評価する。
 ・定期試験とレポートの評価は厳正に行うため、普段から授業に出席して、授業内容を理解していることが前提となる。出席していても授業の内容を理解していなければ、単位の取得は困難であるので留意されたい。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 教科書 :なし
 参考文献:加藤尚武 編 『環境と倫理』(有斐閣)
      加藤尚武 『新環境倫理学のすすめ』 (丸善ライブラリー)
      鬼頭秀一他 編 『環境倫理学』 (東京大学出版会)
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 ・授業の内容に対応する参考文献の該当箇所を事前に読んだ上で授業に臨むこと。
 ・授業の中で理解できなかった箇所は、参考資料を自分で調べて理解しておくこと。
 ・レポートを作成するまでに関連文献を必ず一冊以上読み、テーマの論点を整理しておくこと。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 「自然や生命を保護すべきである」という主張は、多かれ少なかれ誰にでも共有できるものですが、それを単なる個人の直観のレベルに留めるだけでは、学問的に考察したことになりません。そもそも我々が自然や生命を保護すべきなのはなぜなのか、人間以外の生命に対しても我々が一定の責任をもちうるのはなぜなのかということを、その根拠にまで遡って問うことが授業の課題です。このような内容に関心のある方の受講を要望します。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 環境と倫理 ― 環境と倫理との関わりについて説明する。
【第2回】
 環境に対する責任 (1) 人口問題、地球資源の有限性の問題から生じてくる「地球全体主義」という考え方について説明する。
【第3回】
 環境に対する責任 (2) 「地球全体の利益」という観点から見た場合、我々には環境に対していかなる責任があるのか、ということを考察する。
【第4回】
 未来に対する責任 ― 未来世代の人々に対してどの程度の責任があるといえるか、ということについて考える。
【第5回】
 持続可能な社会 ― 「持続可能性」とはどのような意味か、「持続可能な社会」を実現するためにはいかなる条件が必要か、ということについて考える。
【第6回】
 動物と人間 (1) 動物のもつ道徳的地位について、いくつかの立場を紹介する。
【第7回】
 動物と人間 (2) シンガーの動物解放論に基づいて、動物実験の現状と問題点を批判的に検討する。
【第8回】
 動物と人間 (3) シンガーの動物解放論に基づいて、畜産工場や食肉に関する問題を検討していく。
【第9回】
 動物と人間 (4) 動物の殺処分の問題を検討し、それを通じて、人間の動物に対する責任のあり方について考える。
【第10回】
 動物と人間 (5) 捕鯨論争の背景にあるいくつかの考え方を検討し、それを通じて動物を保護することの意味について考える。
【第11回】
 自然保護について ― 自然保護の二つの意味(保全と保存)を検討しながら、人間中心主義と生命中心主義の違いについて考える。
【第12回】
 生命中心主義 (1) シュヴァイツァーとテイラーの生命中心主義の思想について考察する。
【第13回】
 生命中心主義 (2) レオポルドの土地倫理の特徴と、その問題点について考察する。
【第14回】
 自然の権利 ― アメリカと日本における「自然の権利」訴訟を取り上げ、それがもつ倫理的な意味について考察する。
【第15回】
 自然と人間 ― 講義の全体を振り返り、自然と人間との望ましい関係について考察する。