Web Syllabus(講義概要)

平成23年度

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ライフサイエンス II 冲永 隆子
3群  2単位
【三群】 11-1-1607-0127-02

1. 授業の内容(Course Description)
 近年の生命科学(先端医療)技術の進歩発展は、人間の生と死の現象への人為的介入を可能にしたが、その結果、多くの今日的課題を残してきた。たとえば、生をめぐっては、体外受精−胚移植(IVF−ET)、男女産み分け、出生前診断と胎児治療、遺伝子診断と遺伝子治療などに対する「人間の尊厳」とは何かという新たな問いである。
 また、死をめぐっては、脳死・臓器移植、持続的植物状態、ホスピス・緩和ケア、安楽死、自然死(尊厳死)など、現代人はかつてなかった「新たな死」の意味を再考する時にきている。
 この授業では、私たちが常識としてなんとなくわかっているようでも今までつきつめてこなかった「人の死とは何か、生とは何か」という永遠なる命題を、身近な医療・臨床現場での問題とつき合わせて、生命・医療倫理(バイオエシックス)の視座から問い直していきたい。今期授業では、「生命操作」の具体的事例を取り上げ、ビデオ教材を使いながら、「いのちの問題」を掘り下げ考えていく。理解をより深めるために、通年の受講(ライフサイエンスⅠも受講)が望ましいが、半期受講でも歓迎する。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 生命科学技術の現状を理解するとともに、基礎的知識を身につけ、生命倫理的課題について考える力を養うこと。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 定期本試験を80%、平常点として数回の10行程度の簡単なレポート(VTR感想文)提出等を20%として総合評価する。なお、毎回出席はとらないが、本試験は出席を前提とした内容(VTR感想文を書かせる問題など。試験は資料等持込不可。但し講義中に試験問題・解答内容を教える)を出題する予定である。出席と授業への取り組みをもっとも重視する。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 ・購入指定テキスト『薬学生のための医療倫理』(丸善、2010)
 ※薬学生に限らず、医療者全体、また一般人(患者・家族)に共通する必要不可欠な医療倫理の概説部分を主に扱います。それほど専門性は高くありません。
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 指定したテキストおよびレジュメの次回講義部分を事前に読んでおくこと。
 講義時間内にVTR感想文(10行程度)を提出できなかった人は仕上げて次回に持ってくること。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 1.毎回授業に配布資料、購入指定テキスト、ノートなどを持参すること。
 2.ほぼ毎回ビデオ教材を用いて、レポート(感想文)提出やグループ討論を行うため、極力欠席・遅刻は控えること。とくに初回には、授業の進め方や評価方法など詳しく説明するので必ず出席すること。
 3.授業中の「マナー」を守ること(私語、授業に関係のない行為、例えば、携帯電話・ゲームで遊んだり、読書をしたり等、途中退室などは厳禁)。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 はじめに―授業の進め方や評価方法などの説明。生命倫理における生命操作の問題についての序論。※以下に予定するテーマ・内容については進行状況により変更する場合がある。
【第2回】
 生命操作1―選択的人工妊娠中絶①中絶禁止の歴史、「性と生殖に関する女性の健康と権利」日米比較。
 Case Study―「なぜ中絶を選択するのか?」
(ビデオ:「生命倫理を考える―終わりのない8編の物語―」(丸善)1995 ④「普通の子」)。
【第3回】
 生命操作2―選択的人工妊娠中絶②「出生前診断」:「胎児診断」、「受精卵診断」。
 Case Study―「生命の選択と摂取をどう考えればいいのか?」
(ビデオ:「92’NHKプライム10「あなたは“生命”を選べますか~ここまできた胎児診断」」(NHK)1992)。
【第4回】
 生命操作3―選択的人工妊娠中絶③「優生思想」の誕生。オルダス・ハクスレー『すばらしい新世界』。
 Case Study―「生命操作における優生思想がもたらす倫理的諸問題」
(ビデオ:「ETV特集シリーズ「生命誕生の現場~最新技術がもたらす重い課題」」(NHK教育)1998 ①「「人間改良」をめざした男たち」)。
【第5回】
 生命操作4―選択的人工妊娠中絶④「生殖に関する女性の健康と権利」VS.「障害者の権利」。
 Case Study―「脊椎破裂障害(二分脊椎症)の赤ちゃんを救うべきか?」
(ビデオ:「生命倫理を考える―終わりのない8編の物語―」(丸善)1995 ④「あなたの赤ちゃん」)。
【第6回】
 生命操作5―生殖補助医療技術(ART)①不妊治療~「代理母」子どもを持つ権利。
 Case Study―「日本で禁止されている『代理出産』について考える」
(ビデオ:「代理出産・向井亜紀 がん闘病・38歳の選択」(フジTV)2003)。
【第7回】
 生命操作6―生殖補助医療技術(ART)②不妊治療~「体外受精」子どもの出自を知る権利。
 Case Study―「子どもの『出自を知る権利』について考える」
(ビデオ:「i'ts EYE!「試験管ベビーたちの苦悩~自分の親が知りたい」」(BS−i)2003)。
【第8回】
 生命操作7―生殖補助医療技術(ART)③不妊治療~「多胎・減数手術」における倫理問題。
 Case Study―「排卵誘発剤使用による副作用『多胎妊娠』・『減数手術』について考える」
【第9回】
 生命操作8―遺伝子操作①「ヒトゲノム計画」。「遺伝子診断」。「遺伝子治療」。
 Case Study―「遺伝子診断をめぐる倫理問題」
(ビデオ:「ETV特集シリーズ「遺伝子技術とこれからの医療」(NHK教育)1998①「遺伝子診断は何をもたらすのか~加速する遺伝子発見競争の中で」)。
【第10回】
 生命操作9―遺伝子操作②「生命の選別」(出生前診断)と結びつく「遺伝子診断」。
 Case Study―「遺伝子診断をめぐる倫理問題」
(ビデオ:「ETV特集シリーズ『生命誕生の現場~最新技術がもたらす重い課題』」(NHK教育)1998 ②「“生命の質”~検査社会の到来」)。
【第11回】
 生命操作10―遺伝子操作③ナンシー・ウエックスラー「知らない(でいる)権利」
 Case Study―「治療法のない遺伝病保因者への告知問題」
(ビデオ:「ティーンズTV・ワールドドキュメント:遺伝子診断~新しい予知医療の光と影」(NHK教育)2001)。
【第12回】
 生命操作11―遺伝子操作④副作用をもたらす遺伝子治療。
 Case Study―「遺伝子操作がかかえる問題点」
(ビデオ:「クローズアップ現代:『遺伝子治療ががんを起こした』」(NHK)2002)。
【第13回】
 生命操作12―再生医療 クローニング、ヒト胚性幹細胞(ES細胞)利用など。
 Case Study―「クローン技術がかかえる問題点」
(ビデオ:「科学と人間=クローン時代と生命倫理=」(丸善)1997)。
【第14回】
 総まとめと復習1
 (定期本試験対策問題の演習)
【第15回】
 総まとめと復習2
 (定期本試験対策問題の演習)