Web Syllabus(講義概要)

平成23年度

ひとつ前のページへ戻る 教授名で検索

租税法研究 II ・ X 上條 克彦
選択  2単位
【法学研究科】 11-1-1210-3072-08

1. 授業の内容(Course Description)
 
 租税法は、法律学、経済学、会計学など、さまざまな分野が交錯し、難解ですが、私たちの生活に深く関わり、興味はつきません。
 
 「租税法研究Ⅱ・X」では、主として法人税法の基本的な論点について、最高裁判例等に基づき考察し、参加者に主体的に取り組んでもらい、活発な意見交換を行うことにより、租税法の深奥にせまりたいと思います。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 
 租税法の修士論文に必要な知識と考え方を身につけること。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 
 出席状況と期末レポートの内容の総合評価
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 
 テキスト: 租税法判例

 参考文献: 金子 宏  『租税法 第16版』 (弘文堂)
 

5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)

 十分に予習し、各回のテーマについて自分なりの問題意識や考え方を用意した上で参加してください。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)

 「一灯を提げて暗夜を行く。暗夜を憂えることなかれ。ただただ一灯を頼め。」
 (佐藤一斎 「言志四録」)
 
7.
授業の計画(Course Syllabus)

第1回 イントロダクション: 法人税の特質

   ・ 法人税と所得税
   ・ 法人所得と企業会計
   ・ 法人税の国際的調和


第2回 益金: 収益の計上時期


  ○ 大竹貿易株式会社事件 (最高裁平成5年11月25日判決)
  
   ・ 収益の計上時期は、船積日か、それとも荷為替手形取組日か。


第3回 益金: 無償による資産の譲渡①

  ○ 東西通商株式会社事件 (最高裁平成7年12月19日判決)
    
   ・ 代表取締役に対する株式の低額譲渡は、無償による資産の譲渡に当たる
    か。


第4回 益金: 無償による資産の譲渡②

  ○ オウブンシャホールデイング事件 (最高裁平成18年1月24日判決)
    
   ・ 子会社における有利新株発行による関係会社への子会社の支配権の移転
    は、無償による資産の譲渡に当たるか。


第5回 損金: 費用と配当

  ○ 東光商事株式会社事件 (最高裁昭和43年11月13日判決)
    
   ・ 株主相互金融を営む会社が株主に支払った優待金は、利益の分配か、
    それとも資金調達のための必要経費か。
     

第6回 損金: 減価償却

  ○ NTTドコモ事件 (最高裁平成20年9月16日判決)

   ・ PHS事業におけるエントランス回線1回線に係る権利は、一つの減価
    償却資産か。


第7回 損金: 貸倒損失

  ○ 興銀事件 (最高裁平成16年12月24日判決)
    
   ・ 回収可能な債権の放棄か、それとも回収不能な債権の償却か。


第8回 損金: 損失と損害賠償請求権

  ○ 日本総合物産事件 (最高裁昭和60年3月14日判決)
    
   ・ 詐欺による損失の損金計上と損害賠償請求権の益金計上の関係


第9回 損金: 寄付金

  ○ PL農場事件 (大阪高裁昭和59年6月29日判決)
    
   ・ 関係会社間で、価格を低額で段階的に引き上げながら、順次土地を転売
    し利益を移転した場合、低額部分は、関係会社に対する寄付金となるか。


第10回 繰越欠損金

  ○ 行田電線株式会社事件 (最高裁昭和43年5月2日判決)
    
   ・ 合併会社は、被合併会社の繰越欠損金を承継するか。


第11回 税額控除

  ○ 南九州コカコーラボトリング事件 (最高裁平成21年7月10日判決)

   ・ 申告書に記載された所得税額控除限度額に誤りがあった場合、所得税額控
    除の限度額は、その記載金額か、それとも法令に基づき計算される金額か。


第12回 納税義務者: 公益法人

  ○ ペット葬祭業事件 (最高裁平成20年9月12日判決)
    
   ・ 宗教法人が営むペット葬祭業は、収益事業か。


第13回 納税義務者: 人格のない社団

  ○ ネズミ講事件 (福岡高裁平成2年7月18日判決)
    
   ・ ネズミ講の運営主体は、個人か、それとも人格のない社団か。


第14回 租税回避行為①
 
  ○ 外国税額控除余裕枠りそな銀行事件 (最高裁平成17年12月19日)
    
   ・ 外国税額控除余裕枠を利用した取引は、正当な事業目的を有する取引か、
    それとも外国税額控除制度の濫用か.



第15回 租税回避行為②

  ○ パラツイーナ事件 (最高裁平成18年1月24日判決)
    
   ・ 組合を設立し著作権を購入して賃貸する行為は、著作権の減価償却を目的
    とする租税回避行為か。


期末レポート