Web Syllabus(講義概要)

平成23年度

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経済史 II 佐藤 光宣
2群  2単位
【二群】 11-1-1210-0258-04

1. 授業の内容(Course Description)
 経済史は、経済現象が歴史的にどのように生起してきたのかを問う学問である。この経済史に関する本授業は、ソースタイン・ヴェブレン(Thorstein Veblen)――『有閑階級の理論』(The Theory of the Leisure Class, 1899)などの著者である異端のアメリカの経済学者――の制度的接近方法を力説しながら、イギリス、ドイツおよびアメリカにおける経済社会の進化とその諸問題に関する種々の論題を取り上げる。とりわけ、植民地時代から現在に至るアメリカ経済史の最も重要な諸局面に焦点を当てる。それゆえ私は、アメリカ経済の歴史に対して大不況が持つ意味合いに留意しつつ授業を行う。
 なお、この授業は「経済史Ⅰ」の主たる授業内容に立脚して開始される。そこで我々はまず、基本的にヴェブレンの見地に基づいて、文化的変化の理論への接近として経済史を概観することになろう。このような内容を含む本授業は、資本主義経済制度の発展とその変容についての論議を中心に順次展開することとなる。かくして資本主義経済制度の概念に次々に規定性が加えられ、もって本授業は、かかる制度の限界の究明に向かう。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 本授業において私は学生諸君とともに、資本主義という金銭文化段階(pecuniary stages of culture)において極めて不安定な様相を呈するに至った昨今の経済社会の性質と機能について、先入観を排除しながら歴史的思索を重ねる。このこと自体が授業の到達目標への道標となる。また、この道標に導かれつつ現今の経済社会について批判能力と建設的意見とが養われるであろう。これこそが本授業の到達目標となる。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 秋学期期末試験(定期試験期間内に実施)、学習到達度調査小テスト(1回のみ実施予定)、およびこれらの試験結果に平常点を加えて評価を決する。なお、正当な理由のない限り追試験等は実施しない。レポートによる救済措置は、これを認めない。詳細は次の通りである。
 (1)全出席であっても授業に顔を出すだけの学生諸君は、単位取得が著しく困難となる。授業終了時に毎回行う出欠調査は出席点算定のために行うのではない。出席は平常点を構成しない。
 (2)この授業の評価は、秋学期期末試験(70%)、学習到達度調査小テスト(15%)、および平常点(15%)により、総合的になされる。この基準は授業の進行状況によって、若干変更することがある。
 (3)平常点は、予習復習の達成度と授業時の質疑応答の態様によって積算する。授業時に紹介する文献に自ら向き合うよう極力努めるとともに、積極的な授業参加を要する。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキストは使用しない。参考書類は、それらすべての購入を義務づけるものではない。私自身が作成した教材を、経済史の概説書に替えて、授業開始時にほぼ毎回配布する。テキストの替わりに使用する教材は、授業を全体として見渡した結果に基づいて選ばれる。全学生諸君は帝京大学メディアライブラリーセンターに日参し、経済史についての知識を深めることを期待する。なお、参考文献は多岐にわたる。その一端は次の通りである。
 Thorstein Veblen, The Theory of the Leisure Class (The Macmillan Company: New York, 1899).〔小原敬士訳『有閑階級の理論』岩波書店、昭和年〕。Thorstein Veblen, Imperial Germany and the Industrial Revolution (Macmillan, New York, 1915); Fernand Braudel, La dynamique du capitalisme (Arthaud, Paris, 1985).〔金塚貞文訳『歴史入門』中央公論新社、平成21年刊/藤瀬浩司著『資本主義世界の成立』ミネルヴァ書房、昭和55年刊〕。Rober Heilbroner & William Milberg, The Making of Economic Society, 12th Edition(Prentice Hall: New Jersey, 2007).〔菅原 歩訳『経済社会の形成』ピアソン桐原、平成21年刊〕。
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 総合基礎教育科目の「経済史Ⅰ」「経済学Ⅰ」を履修完了し、その内容を的確に理解していることが望ましい。また、歴史について深く真摯な関心を持つことは、授業の準備として何より幸いである。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 経済生活の歴史を理解することは、先人が歩み築いてきた経験と知識および文化に対して尊敬の念を深めるに違いない。学生諸君は授業に臨んでは、歴史的および経済学的なものの考え方を押し進めるような気持ちで聴講し、読み書きすることを望む。授業の内外を通じて行われるであろう勉学は、この授業が学生諸君に対して最も欲するところである。そのことが結局、学生生活を実りあるものにする一助となる。人生で何か望むことがあるとするならば、そのために努力しなければならない。
 学生諸君は経済史に関する理論、実証および政策の自発的研究に向かって欲しい。そうすることによって、学生諸君は現代の経済問題に関して批判的に理解するようになるはずである。そこで初めて、各自がそれらについての建設的意見を自家薬籠中のものとしうるであろう。この授業が、連綿として続いてきた経済生活の性質と機能、その累積的変化および現代の世界におけるその位置づけを、学生諸君が自ら学ぶ手助けの契機となることを願う次第である。
 なお、授業に際して学生諸君は、勉学のための秩序を乱すことのないよう、したがって快適な知的環境を破壊することに貢献することのないよう要望する。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 授業の課題と予定
 ―シラバスの内容の解説―
【第2回】
 経済生活の史的概観
 ―「経済史Ⅰ」の若干の復習―
【第3回】
 貨幣の誕生と変遷①
 ―物品貨幣、秤量貨幣―
【第4回】
 貨幣の誕生と変遷②
 ―鋳造貨幣、紙幣―
【第5回】
 王朝国家と西洋民主主義諸国家
 ―その経済的性質と運命について―
【第6回】
 イギリス産業革命とアダム・スミス
 ―自由競争原理の確立―
【第7回】
 自由競争の性質
 ―『道徳情操論』と『諸国民の富』との内面的関係―
【第8回】
 帝政ドイツと産業革命①
 ―工業化の起源と帰結―
【第9回】
 帝政ドイツと産業革命②
 ―官房主義的経済政策をめぐって―
【第10回】
 アメリカの資本主義①
 ―アメリカ移民と「資本主義の精神」―
【第11回】
 アメリカの資本主義②
 ―南北戦争から第一次世界大戦まで―
【第12回】
 アメリカの資本主義③
 ―独占の運動と金融資本の出現―
【第13回】
 アメリカの資本主義④
 ―経済的破局とニューディール ―
【第14回】
 現今における資本主義的経済生活
 ―「金銭的競争」と「効率の意識的撤収」―
【第15回】
 情報革命とグローバリゼーション
 ―金融の将帥(captains of finance)と技術者―