Web Syllabus(講義概要)

平成23年度

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法律学演習 IV 金澤  誠
選択  2単位
【法律】 11-1-1210-1952-06A

1. 授業の内容(Course Description)
 この演習は、日本国憲法の「講義」などで得た知識を手かがりにして、もう少しだけ、憲法の世界、ないしは、「身のまわりの」法律や司法制度の世界を覗いてみることを、ひとつの目的としています。
 憲法の世界にも、たくさんのいろいろな判決があります。その数が多いために、憲法の「講義」などでは、どうしても「結論」と、最低限度の「理由」しか勉強できなかったと思います。
 そこで、この演習では、「どうしてこんな判決が出たのか」、「どういう場合であれば、『正反対』の結論が出ただろうか」、「原告が何を求めたのか」、「相手がどういう『反論』をしたか」、といったことを意識しながら、判決を、「はじめから」「おわりまで」「ゆっくりと」読んでみたいと思います。それだけではなく、場合によっては、その事件の下級審判決を読んでみたり、調査官解説を読んでみたり…などと、事件の背景を探ってみたいと思います。
 とりあげる裁判例については、【授業の計画】を参照してほしいと思います。最初のうちは、「身近な」「わかりやすい」「有名な」「重要な」事例からはじめます。おそらく、最初のうちは、教員主導型で解説を交えながら読む、ということになると思いますが、しだいに、少しずつ皆さんの意見を取り入れたり、感想を聞いたりして、双方向的なものにしていきたいと思います。最終的には、皆さんによる発表やプレゼンテーション(あるいは、レポート)を予定しています。
 それを繰り返すことで、最高裁判決をはじめとする裁判例の考え方を、「しっかりと」理解できるようになれれば、と思います。なお、最高裁判例を中心とする裁判例を「しっかりと」理解することは、当然のことながら、公務員試験にも役に立つと思われます。演習後にときどき配布される、公務員試験などの択一式の問題を解いてみましょう。
 また、法学部の専門科目の演習ですから、ある程度、掘り下げた議論もできれば、と思います。たとえば、あるひとつの考え方(ひとつの判決)をしっかりと理解したうえで、それと対立するような考え方(裁判例や学説)も、「同時に」理解できるようになれれば、理想的です。
 現実の世界においては、残念ながら、名探偵コナンのような、「真実はいつもひとつ!!」という世界が、常に成り立つとはいえません。むしろ、昨日の正解(常識)が、今日の不正解(非常識)に変わることがよくあります。ですから、みなさんには、そうした現実の世界(の複雑さ)を、なんとなくでよいから、感じ取れるようになってほしいと思います。
 なお、現実の世界(の複雑さ)を理解するという演習の趣旨からすると、後述するように、憲法の判例ではなく、「身のまわりの」法律や司法制度を検討することもよいと思います。このあたりも、皆さんと相談のうえ、決定したいと思います。
 以上のことをおこなうことで、①文献を探す方法(図書館の使い方、検索の仕方など)を身につけたり、②文献を正確に読む能力を身につけたり、③文献を読んだうえで、それを口頭で報告したり、文章にまとめたりする(場合によっては、レポートを書くような)能力を身につけたり、④まわりの人(教員や学生)とコミュニケーションする能力を身につけたりすることができたら、とても嬉しく思います。
 
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 到達目標としては、
 ①おもに裁判所の判決を読むことによって、実際に社会で生じている紛争の背景を理解できるようになること。
 ②世の中が多様であることを認識し、正解がひとつではないことを認識すること。
 ③昨日の自分より、ほんの少しだけ新聞記事が読めるようになった気になること。あるいは、テレビや雑誌に出ている怪しい(?)評論家に対して、自分なりの軽いコメント(ツッコミ?)をいれられるようになること。
 ④憲法という言葉のイメージを、近所の何も知らない小学生に対して、少しだけ教えられるようになること、です。
 これらのことを踏まえて、自分ひとりで、ある程度の分量の発表やレポートを書けるようになることも、到達目標です。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 成績評価の方法としては、法律学演習ですから、①教材を事前に読んでくること、②当日の出席が重視されることは、いうまでもありません。それに加えて、③発表やプレゼンテーション(場合によっては、レポート)の内容(の上達)もひとつの成績評価の方法になります。
 いうまでもありませんが、演習ですので、原則として、毎回出席することが求められます。
 
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキストとなる資料は、教員が用意するつもりでいます。 
 参考文献として、司法制度については、市川正人・酒巻匡・山本和彦『現代の裁判』(有斐閣・2008年)、木佐茂男・宮澤節生・佐藤鉄男・川嶋四郎・水谷規男・上石圭一『テキストブック 現代司法(第5版)』(日本評論社・2009年)などを参照。
 憲法裁判については、棟居快行・赤坂正浩・松井茂記・笹田栄司・常本照樹・市川正人『基本的人権の事件簿(第4版)』(有斐閣・2011年)、初宿正典・高橋正俊・米沢広一・棟居快行『いちばんやさしい憲法入門(第4版)』(有斐閣・2010年)、中村睦男編『はじめての憲法学(第2版)』(三省堂・2010年)、岡田信弘編『憲法のエチュード(第2版)』(八千代出版・2009年)、芦部信喜『憲法(高橋和之補訂)(第5版)』(岩波書店・2011年)、高橋和之・長谷部恭男・石川健治編『憲法判例百選ⅠⅡ(第5版)』(有斐閣・2007年)、大沢秀介編『判例ライン憲法(第2版)』(成文堂・2011年)、山口進・宮地ゆう『最高裁の暗闘ー少数意見が時代を切り開くー』(朝日新書・2011年)、笹田 栄司・大沢 秀介・井上 典之・工藤達朗 『ケースで考える憲法入門』(有斐閣・2006年)、野坂泰司『憲法基本判例を読み直す 』(有斐閣・2011年)などを挙げておきます。
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 社会生じている法的現象に興味を持つことが求められます。憲法に関する事件は、テレビや新聞などでよく報道されています。それを、自分で「発見」することが重要になります。それを演習で報告してくれれば、理想的です。
 また、演習中にときどき配布される、公務員試験の問題を解いてみましょう。もちろん、それ以上のレベルになってほしいことは、いうまでもありません。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 この演習は、おもに判決を読むという作業をおこなう演習です。「好奇心のある」学生さんの受講を歓迎したいと思います。あるいは、社会を認識するための視座を獲得したいと「ほんの少しだけ」でも思った学生さんの受講を歓迎します。
 また、憲法に関する知識は、最低限度のものでも全然構いません。それよりも、想像力(妄想力?)をもって、実際にいろいろな紛争を見ていく(いろいろ悩みつつ、社会を探検していく!)ということが、何よりも重要な「姿勢」になります。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
 より詳しい授業計画は、初回のガイダンスで説明したいと思います。
  ①まず、必要であれば、文献の探索の仕方を勉強したいと思います。最初のうちは、教員主導型で、皆さんの意見を聞きながら、演習をおこなっていきたいと思います。(第1回-第5回)。
  ②教員が用意した文献や判決(たとえば、憲法判例を挙げるならば、エホバの証人輸血拒否事件、エホバの証人剣道実技拒否事件、非嫡出子相続差別事件、校則に関する事件、外国人入浴拒否事件、少年犯罪の実名報道事件、教科書裁判、死刑の是非に関する判決、生活保護費預貯金事件)などを読んでもらい、それをもとにして、討論をおこないたいとおもいます。その際には、ひとつの事件においては、複数のこたえ(最高裁の多数意見と反対意見、あるいは、最高裁判決と下級審判決)が成立しうることを「理解」することが重要となるでしょう。なお、希望する判決や事件などがあれば、それに差し替えることもあります(第6回-第15回)。
  ③細かいことは、皆さんの意向を踏まえたうえで決定したいと思います。なるべく「身のまわりから」少しずつ司法制度や最近の立法例、憲法裁判を考えるということを重視したいと思います。たとえば、何かと話題の(?)裁判員制度について「自分で」調べてみるというのもいいでしょうし、最近の新しい立法動向(以前の演習では、臓器移植法や尊厳死、代理懐胎【代理母】、夫婦別姓にかんする問題などを検討したことがあります。)について報告してみるのもいいでしょう。
  ④ときどきは、実力試しに、「公務員試験の問題」のいくつかを、「みんな」で解いてみるというのも、よいと思います。
  ⑤いずれにしても、レクチャーというものを一方的に聞くというような講義とは異なる、演習というものの雰囲気を、ほんの少しでもいいので感じてくれるとありがたいと思います。報告の仕方、人数等についても、相談のうえで、決めていきたいと思います。

  ⑥なお、わたしの憲法の講義に関連する項目を提示しておくので、参考にしてみてください。
【裁判所】(大学の単位を落とした場合、裁判所は助けてくれる?AKB選挙の結果に文句がある場合に裁判できる?嵐【ジャニーズ】のなかで誰が一番カッコいいかも決めてくれる?恋愛問題も解決してくれる?あ、でも、裁判官の「おじさん」にわかるかな?)
【私人間効力論】(外国人が、温泉入浴を断られたら、どうなるんだろう?憲法違反?ケンポーって、ご飯にかける、「ふりかけ」にすぎないってホント?!)
【自己決定論】(なんで中学や高校の先生は、制服や髪型、髪の色にうるさいんだろう?ゲーセンやカラオケの立ち入りを禁止する校則も、憲法違反にしちゃえ?!)(輸血は絶対に嫌だ!といっていたのに、病院で勝手に輸血されました。それから、乳がんの手術の仕方について、お医者さんともめました。わたしはあくまでも…残すようお願いしたんだけど、先生が無理やり…。これは、「白い巨塔」の世界、医療裁判だね!?そういえば、乳がん手術と生存率の話については、Dr. コトーにもありましたね…)
【プライバシー権】(愛の告白メールの第三者への転送はプライバシーの侵害なの?オービス、Nシステムって知ってる?2ちゃんねる、ブログ、あるいは、ツイッターでも、プライバシー侵害は成立する?芸能人やスポーツ選手には、プライバシーってないの?のび太が、しずかちゃんの入浴シーンを覗くことは、プライバシー侵害?それとも、のび太の「知る権利?」、東野圭吾の『手紙』って知ってる?)
【平等条項】(ヒチャク差別って何?国籍法違憲判決、住民票の記載方法など、最近のいろいろな紛争がこれに関連しています)
【信教の自由】(体育授業【剣道の実技】を拒否できますか?家庭科や理科の授業だとどうですか?)
【表現の自由】(ケンポー学者は、ポルノが好きってホント?外国旅行のときの、税関チェックって、なんか嫌だよね。かばんの中をみんなの前であけるのって…どうにかならない?マンガ・アニメを規制するってホント!ジャニーズおっかけマップが出版差止になりました!オタク・マニア【?】には生きにくい世界になるのかなぁ?それから、最近では、ネットの表現の自由とプライバシーの権利との対立がもっとも重要な問題なんです!!)
【生存権】(生活保護費を用いて、預貯金をしたら、市の担当者に怒られますか?車を買ったらどうですか?クーラーならいいかな?じゃあ、扇風機ならいいだろう。どんな生活が許されるかって、結構うるさいんだね…なんてったって、税金だかんね)
【教育を受ける権利】(教科書って、なんであんなに「お説教」ばかりなんだろう!日本中でみーんな、あーんなつまらない教科書なの?外国はどうなのかな?そうそう、小学校の低学年とか幼稚園とかで、クリスマスに、「サンタさんの正体!」を「無理やり」教えたら、相当なインパクトだろうね?!夢を壊すなって、パパやママ、それから、おもちゃ屋さんだって困る。。。「教育」や「しつけ」を、「誰が」「どのように」「どのタイミング」でおこなうかって、難しいんだね…)
【司法権】(裁判員制度って「誰」が考えたの?あなたが犯罪者になった場合、裁判官だけに裁かれたい?それとも、裁判員に裁かれたい?裁判員は、バイトみたいだね…お金が出るらしいよ。でも、被告人に「恨まれたら」どうしよう。そういえば、こーゆー話、ドラマ相棒でも、むかしやってた気がする…。じゃあ、まずは、裁判所の傍聴マニアになりましょう!裁判の「公開」ってなんですか?なぜ、「テレビ」で裁判を放映しないのですか?無料ですか?居眠りは怒られますか?メモはとってもいいですか?写真はだめですか?イラストはどうですか?)
【国民主権】(「本当の主役は、テレビの前のあなたです」。そう、最後に決めるのは、国民です!!じゃあ、日本では、なんで「ガチ」で、国民投票しないのさぁ?)