Web Syllabus(講義概要)

平成23年度

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憲法B 金澤  誠
教職  2単位
【教職】 11-1-1210-1952-08A

1. 授業の内容(Course Description)
 この講義は、日本国憲法にかんする、いくつかの制度や裁判例を理解することを目的としています。テキストである、中村睦男編『はじめての憲法学(第2版)』(三省堂・2010年)を用いて、原則として、1回の講義で、ひとつの項目をとりあげて、当該テーマの議論状況を考えることにしたいと思います。
 より具体的な目標としては、やや安直かもしれませんが、公務員試験に出題されるような、憲法の問題を解くための、「最低限度の」能力を(せめて!)身につけられるようになれば、と思います。つまり、最高裁判決を中心とするいくつかの裁判例や、憲法が予定しているいくつかの制度を、「しっかりと」理解できるようになることが目的です。
 もちろん、法学部の専門科目の講義ですから、ある程度、掘り下げた議論もする予定でいます。たとえば、あるひとつの考え方(ひとつの判決)をしっかりと理解したうえで、それと対立するような考え方(裁判例や学説)も、「同時に」理解できるようになれれば、理想的です。
 現実の世界においては、残念ながら、名探偵コナンのような、「真実はいつもひとつ!!」という世界が、常に成り立つとはいえません。むしろ、昨日の正解(常識)が、今日の不正解(非常識)に変わることがよくあります。ですから、みなさんには、そうした現実の世界(の複雑さ)を、なんとなくでよいから、感じ取れるようになってほしいと思っています。
 憲法Bは、憲法Aで学んだことを前提にして、憲法の世界をさらに深く勉強することになるでしょう。領域的にいえば、統治の領域も勉強することになります。「みんなのことを決める」ためには、いかなるルールが必要でしょうか。「みんなで仲良く決める」ってことと、「強いリーダーシップを認めること」は、はたして「両立」するんでしょうか。
2.
授業の到達目標(Course Objectives)
 おもに、憲法判例を理解することで、次のようなことを目指したいと思います。
 ①社会には、いろいろな人がいて、いろいろな意見があることを認識すること。
 ②正解がひとつではないことを認識すること。
 ③昨日の自分より、ほんの少しだけ新聞記事が読めるようになった気になること。あるいは、世の中の怪しい(?)評論家に対して、軽いコメント(ツッコミ?)がいれられるようになること。
 ④憲法という言葉のイメージを、近所の何も知らない小学生に対して、少しだけ教えられるようになること。
3.
成績評価方法(Grading Policy)
 試験による評価が原則です。論述式の問題が多くなると思います。
 試験では、基本的な語句を、正確に理解しておくことが重要となります。ただ、暗記するだけではなく、関連する学説、関連する裁判例を踏まえて理解しておきましょう。
 出席状況も考慮することがあります。場合によっては、講義中の発言による加点、レポートや自由報告(口頭報告)による加点、小テストによる加点もありえます。最初の講義に参加して、この点(成績評価方法、試験日程、試験内容など)を確認してください。
4.
テキスト・参考文献(Textbooks)
 テキストとして、中村睦男編『はじめての憲法学(第2版)』(三省堂・2010年)
 参考文献として、岡田信弘編『憲法のエチュード(第2版)』(八千代出版・2009年)、芦部信喜『憲法(高橋和之補訂)(第5版)』(岩波書店・2011年)、高橋和之・長谷部恭男・石川健治編 『憲法判例百選ⅠⅡ(第5版)』(有斐閣・2007年)、棟居快行・赤坂正浩・松井茂記・笹田栄司・常本照樹・市川 正人『基本的人権の事件簿(第4版)』(有斐閣・2011年)、初宿正典・高橋正俊・ 米沢広一・ 棟居快行『いちばんやさしい憲法入門(第4版)』(有斐閣・2010年)、大沢秀介編『判例ライン憲法(第2版)』(成文堂・2011年)、山口進・宮地ゆう『最高裁の暗闘ー少数意見が時代を切り開くー』(朝日新書・2011年)、笹田 栄司・大沢 秀介・井上 典之・工藤達朗 『ケースで考える憲法入門』(有斐閣・2006年)、野坂泰司『憲法基本判例を読み直す 』(有斐閣・2011年)などを挙げておきます。
5.
授業時間外の学習《準備学習》(Assignments)
 テキストの該当箇所を、可能な限り、あらかじめ読んでくることを求めたいと思います。講義が終わった後の復習もできれば、理想的です。資料として配布した、公務員試験等の問題を、せめて(!)解けるようになってほしいと思います。もちろん、それ以上のレベルになってほしいことは、いうまでもありません。
6.
学生への要望・その他(Class Requirements)
 社会生じている法的現象に興味を持つことが求められます。
 憲法に関する事件は、テレビや新聞などでよく報道されています。それを、自分で「発見」することが重要になります。
 みなさんは、まだ大学1年生(たぶん?)ですから、憲法に関する知識は、最低限度のもので構いません。それよりも、想像力(妄想力?)をもって、実際にいろいろな紛争を見ていく(いろいろ悩みつつ、社会を探検していく!)ということが、何よりも重要な「姿勢」になります。
7.
授業の計画(Course Syllabus)
【第1回】
 イントロダクション(講義の進め方についての確認をします!)
【第2回】
 経済的自由権①(大学の近くには、スーパー銭湯がありますね。そういえば、フツーの銭湯と銭湯の間には、必ず一定の距離があるって知ってますかぁ?むかしの話だけど、大きなデパートとかの営業時間がかなり規制されていたって、最近の学生さんは、信じられますか?酒豪の「あたし」としては、酒も最初からぜんぶ自分で作りたいんだけど…国が許してくれないんだってさぁ…ドイツやイタリアでは…)
【第3回】
 経済的自由権②(むかし、仲の悪い兄弟が、森林を半分に分けることで争いました!兄弟げんかも、ここまでくると…あ、でも、ケンポー学者は喜んでいるみたいよ)
【第4回】
 生存権(生活保護費を用いて、預貯金をしたら、市の担当者に怒られますか?車を買ったらどうですか?クーラーならいいかな?じゃあ、扇風機ならいいだろう。どんな生活が許されるかって、結構うるさいんだね…なんてったって、税金だかんね)
【第5回】
 教育を受ける権利(教科書って、なんであんなに「お説教」ばかりなんだろう!日本中でみーんな、あーんなつまらない教科書なの?外国はどうなのかな?そうそう、小学校の低学年とか幼稚園とかで、クリスマスに、「サンタさんの正体!」を「無理やり」教えたら、相当なインパクトだろうね?!夢を壊すなって、パパやママ、それから、おもちゃ屋さんだって困る。。。「教育」や「しつけ」を、「誰が」「どのように」「どのタイミング」でおこなうかって、難しいんだね…)
【第6回】
 外国人の人権(外国人には、人権がないってホント?ドラえもんにも人権がないの?選挙権はなくても、どら焼きを食べる権利くらいないと、かわいそうだよ~)
【第7回】
 財産権(マンションを建てようかと思ったら、市の条例によって、高さを制限されました!ゴミ屋敷に住むのって、誰かの権利を侵害しているんだろうか?) 
【第8回】
 選挙権の平等(ハタチになったら、選挙にいってみよう!?そうそう、「票数イコール愛」ですからね!!)
【第9回】
 立法権(①いま、ウワサの証人喚問って何?それって、そんなに怖いの?②国会議員のセンセーに、名誉を棄損されたらどうなる?たとえば、国会議員に「ラーメンがまずい」って言われて、うちの店がつぶれたら、責任とってくれますか?そういや、同じようなこと、芸能人もやっていたな…あれと何が違うんだろ?!③二院制って何なの?ねじれ国会って何?ひとつでいいじゃん。国会議員って多すぎだしー。④国会議員がサボったら、難しい言葉で、立法不作為っていうんだってさ?!サボりでもカッコいい用語になるんだね。さすがセンセー。お得な職業だね)
【第10回】
 立法過程(ソーセージと、法律の似ているトコって、どこだろう?国会を見学したら、わかるかなぁ?ついでに、国立国会図書館もお忘れなく…)
【第11回】
 行政権(衆議院の解散って、どうやってやるの?なんのため?それって、アイドルグループの解散と何が違うの?内閣総理大臣って、なんでそんなに偉いの?チーム・リーダとは何が違うの?そもそも、「みんなのことを決める」って、どういう方法がいちばんいいんだろう?「みんなで仲良く決める」ことと、強いリーダーシップ論は「両立」するんだろうかなぁ?)
【第12回】
 司法権(裁判員制度って「誰」が考えたの?あなたが犯罪者になった場合、裁判官だけに裁かれたい?それとも、裁判員に裁かれたい?裁判員は、バイトみたいだね…お金が出るらしいよ。でも、被告人に「恨まれたら」どうしよう。そういえば、こーゆー話、ドラマ相棒でも、むかしやってた気がする…。じゃあ、まずは、裁判所の傍聴マニアになりましょう!裁判の「公開」ってなんですか?なぜ、「テレビ」で裁判を放映しないのですか?無料ですか?居眠りは怒られますか?メモはとってもいいですか?写真はだめですか?イラストはどうですか?)
【第13回】
 地方自治(いま、地方が熱い!地方からの改革。国会議員のセンセーとは違って、最近、○○知事は、どうしてあんなに元気なのぉ?そういえば、知事は選挙で選べるけど、なんで、総理大臣は選挙で選べないの?)
【第14回】
 平和主義(日本国憲法という場合、結局は、9条論が一番モメます!そういえば、いつも朝まで討論しているひとがいますね…でも、いつも結論が出ない気が…?)
【第15回】
 国民主権(「本当の主役は、テレビの前のあなたです」。そう、最後に決めるのは、国民です!!じゃあ、日本では、なんで「ガチ」で、国民投票しないのさぁ?)