Web Syllabus(講義概要)

平成24年度

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量子情報通信工学 (Quantum Info-Communications Technology) 近藤 直樹
1年 後期 専門科目選択 2単位
【専前・後】 12-3-1030

1.
授業のキーワード
量子情報通信技術,量子光学,単一光子,量子もつれ,量子暗号、量子ナノデバイス
2.
授業のねらい
量子情報通信技術(Quantum Info-Communications Technology)は、ここ20年ほどの間に急速に発展してきた研究分野で、量子力学に特有の原理(単一量子の不可分性,観測による状態破壊,量子もつれ等)を用いて、究極の通信性能や古典的には不可能な機能の実現を目指す学問です。中でも光の量子的な状態を利用して行う量子暗号通信は、一部方式に関してすでに実用段階にあり、盗聴不可能性が物理的に保証されることから、今後の社会の中核的情報の搬送を担うものと期待されています。
本授業では、量子論の基礎からはじめて、光の量子力学的取り扱いを学び、最終的に量子暗号通信の物理的基礎を理解してもらうことを目的とします。
 また、量子通信の実用化に必要とされる量子ナノデバイスについても数例、紹介します。
3.
授業の概要
最初にまず、演算子形式の量子論のエッセンスについて講義します。次に、電磁場の量子化を行い、光のいろいろな量子状態について学びます。続けて量子系の状態空間の性質と量子もつれについて学んだ後に、これら量子の性質を巧みに利用した量子暗号通信の基礎について説明します。最後に、実際に量子通信系を構成するためのデバイス群と、その開発の現状について紹介します。
4.
授業内容のレベルと準備学習・関連科目
量子情報通信技術についての入門コースです。
学部での線形代数の知識を前提としますので、準備学習としてはまず、線形代数をよく復習しておいてください。また、授業資料および教科書の関連箇所に、授業の前後に目を通すようにするとよいでしょう。
量子力学,電磁波工学,光情報科学などと関連しますが、これらについての予備知識がなくとも理解できるように講義を行います。
5.
授業の形式
講義形式を主として、適宜演習を行います。
6.
授業内容
(1) 量子論の基礎1: 演算子と固有ベクトル
(2) 量子論の基礎2: 量子系の時間発展
(3) 量子論の基礎3: 量子系における測定(射影仮説)
(4) 第1回演習
(5) 光の量子論1: 電磁場の量子化
(6) 光の量子論2: 光量子系の時間発展
(7) 光の量子論3: 光のいろいろな量子状態
(8) 光の量子論4: 光量子状態の性質(状態間の直交性,偏光の取り扱い等)
(9) 光の量子論5: 量子もつれ
(10) 第2回演習
(11) 量子情報通信1: 量子暗号と量子鍵配送
(12) 量子情報通信2: 量子状態の非直交性を利用した量子通信
(13) 量子情報通信3: 量子もつれを利用した量子通信
(14) 第3回演習
(15) 量子通信デバイス
7.
成績評価の方法
授業中の演習とレポートで評価します。
8.
テキスト、教材
教科書:「量子力学の考え方-物理で読み解く量子情報の基礎-」根本香絵著(サイエンス社)
参考書:「量子光学と量子情報科学」古澤明著(数理工学社)
「量子情報通信」佐々木雅英・松岡正浩監修(オプトロニクス社)
授業資料は私の授業資料配布用ウェブサイト上に掲載します。
サイト URL およびファイルの復号用パスワードは授業中に伝えます。